『世界統合に伴う大型アップデートのお知らせ』

EP01「〔魔女獄門〕事変」

SCENE-018 >> ムーンチャイルド

「うわ……」
　起きてから二回目の食事（それが私にとっての昼食おひるごはんになるか、夕食ばんごはんになるかは諸説あるひにもよる）をとっていたはずなのに、いつの間にかベッドで寝ていて。
　目が覚めると、何故か、私は裸で。
　そんな私の胸の膨らみにおもくそ顔を埋めてすやすや寝ていたカガリも、辛うじて下ははいているものの……といった具合で。
「朝チュンだ……」
　……酔っ払って記憶が飛ぶなんて、ほんとにあるんだ……。

　都市伝説の類かと思っていた状況にこうして出会したことへの、ある種の感動と、自分がその当事者になってしまったことに対する複雑な感情で、ベッドの上に起き上がった私が呆然としていると。最初から眠っていたのか、それすらあやしいカガリが「まだ夜だよ」と、冷静な突っ込みを入れてくる。

「そういうことじゃないんだわ……」
　つけっぱなしになっていた電脳接続端末リンカーデバイスから確認した現在時刻は23:08と、確かに、朝というより深夜寄りの時間帯だった。

「じゃあ、どういうこと？」
「それは……」
　そもそも『朝チュン』の意味がわかっていなさそうなカガリに一から説明するのは、さすがに躊躇われた。
　というか、この状況でその点に言及する勇気がそもそも湧かない。

　……股関節とお腹の中が、なんか変な感じがするのは、これ……最後までヤった……？
　何分、リアルだと経験がなさすぎて。カガリと行くところまで行ってしまったのか、それとも最後の一線だけは越えないまま、がっつりと味見をされただけなのか。私自身、今一つわかっていないという、どうしようもない事情もあって。

「……喉かわいた」
　私のあからさまな話題逸らしを、カガリは気にしたふうもなく、「温いのでよければ水があるよ」と、私から外した視線でベッドの下を覗き込んだ。
「冷たいのがよければ、取ってきてあげるけど」
　どうする？　と、床から拾い上げたミネラルウォーターのボトルを差し出されて。それをそのまま受け取ると。引き上げた布団ごと私のことを抱え込むよう腕を回してきたカガリが、私の手ごと掴んだボトルのキャップを開けてくれる。

　……あ。
　ぎゅっ、と押しつけられる布団にぬくぬくと包まれながら、中身が半分ほど残っているミネラルウォーターのボトルに口を付けると。ほのかな甘さを舌で感じて。
　これは十中八九、カガリも口を付けているし、そのうえで飲まされたのは私だな……と、なんとなく察してしまうものがあった。