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EP01「〔魔女獄門〕事変」
SCENE-012
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「ねぇ、お風呂」
「うん。ミリーは何もしなくていいよ。僕がぜーんぶやってあげる」
疲れたから動きたくない、と私が怠惰な性根を曝け出しても、カガリは嫌な顔をするどころか、むしろ嬉々として私の世話を焼きはじめた。
ひょいっ、と抱き上げた私の足からブーツを引っこ抜き、廊下をすたすたと歩き出したかと思えば、私に場所を尋ねるまでもなく、あっさり探し当てた脱衣所に私のことを連れ込んで。
洗面台のカウンターに下ろした私から、認識阻害が付与されたローブにはじまり、元々着ていた上着、その下に着ていたシャツ、インナーと続いて、最後には機能性重視で素っ気ない下着まで、次々と手際よく脱がせては、目敏く見つけた洗濯籠へばさばさと放り込んでいく。
元が愛玩魔物で、私に世話をされる側だった反動なのか。それとも単純にそういう癖なのか。
なんにせよ、カガリは私の世話を焼くのが大好きだ。
私が一人で脱いだらだいぶ無様なことになっていただろう、タイトなスキニーも手品みたいにするりと脱がせて。さすがにそれはと、思い出したようになけなしの羞恥心を発揮した私の抵抗さえ、あっさり封じてしまいながら。ブーツの中ですっかり蒸れた靴下まで引き抜いていったカガリの手が、おもむろに私の足の裏へと触れてくる。
「ミリー。ここ、水膨れになってるよ」
カガリの気遣わしげな指摘に、そうでしょうねと、私はだいぶ投げやり気味に答えた。
「足の裏も赤くなってるし……言ってくれれば、僕が運んであげたのに」
「足が痛くなるのはいつものことだから、あんまり気にしてなかったの」
私くらいのひきこもりになると、外出と足の痛みは基本、抱き合わせだ。
もういいでしょ、とカガリの手から取り戻した自前の足で立ち上がろうとすると。裸足の爪先が床へと着く前にさっ、と抱き上げられて。伸びきった足がぷらん、と所在なく揺れる。
「ミリー。僕が全部やってあげるから、自分で立とうとしないで」
言っていることは同じなのに。カガリの声は、さっきまでと明らかにトーンが変わっていた。
最終的に自分が美味しく頂くことを前提に、疲れている恋人を労りがてら、ピカピカに磨き上げて下拵えをしてやろうという、私に対する気遣いと下心が四対六くらいの、比較的緩くて甘い雰囲気はすっかりどこかへ行ってしまって。今のカガリは完全に、使命感を持った介助者の顔をしている。
……ちょっと水膨れができたくらいで、大袈裟な。
これくらい大丈夫なのに……と、私があからさまに不満そうな顔をしていたせいか。浴室へと連れ込んだ私のことをバスタブの縁に下ろしたカガリは、私の前に跪いて。水膨れのできた足裏が床に着かないよう手の平で包みながら、懇願めいた口づけを私の膝頭へと押しつけた。
「ミリー?」
私に何かをさせたいとき、カガリはただ私を見つめるだけでいい。
カガリからじっと見つめられると、それだけで、私はカガリの望むことをなんでも叶えてあげたくなってしまうから。
「……わかったから、そんな目で見ないでよ。足のことは、これ以上悪くならないように私もちゃんと気をつけるから……」
「うん。ありがとう、ミリー」
これが惚れた弱みでなければ、いったいなんだというのだろう。
「うん。ミリーは何もしなくていいよ。僕がぜーんぶやってあげる」
疲れたから動きたくない、と私が怠惰な性根を曝け出しても、カガリは嫌な顔をするどころか、むしろ嬉々として私の世話を焼きはじめた。
ひょいっ、と抱き上げた私の足からブーツを引っこ抜き、廊下をすたすたと歩き出したかと思えば、私に場所を尋ねるまでもなく、あっさり探し当てた脱衣所に私のことを連れ込んで。
洗面台のカウンターに下ろした私から、認識阻害が付与されたローブにはじまり、元々着ていた上着、その下に着ていたシャツ、インナーと続いて、最後には機能性重視で素っ気ない下着まで、次々と手際よく脱がせては、目敏く見つけた洗濯籠へばさばさと放り込んでいく。
元が愛玩魔物で、私に世話をされる側だった反動なのか。それとも単純にそういう癖なのか。
なんにせよ、カガリは私の世話を焼くのが大好きだ。
私が一人で脱いだらだいぶ無様なことになっていただろう、タイトなスキニーも手品みたいにするりと脱がせて。さすがにそれはと、思い出したようになけなしの羞恥心を発揮した私の抵抗さえ、あっさり封じてしまいながら。ブーツの中ですっかり蒸れた靴下まで引き抜いていったカガリの手が、おもむろに私の足の裏へと触れてくる。
「ミリー。ここ、水膨れになってるよ」
カガリの気遣わしげな指摘に、そうでしょうねと、私はだいぶ投げやり気味に答えた。
「足の裏も赤くなってるし……言ってくれれば、僕が運んであげたのに」
「足が痛くなるのはいつものことだから、あんまり気にしてなかったの」
私くらいのひきこもりになると、外出と足の痛みは基本、抱き合わせだ。
もういいでしょ、とカガリの手から取り戻した自前の足で立ち上がろうとすると。裸足の爪先が床へと着く前にさっ、と抱き上げられて。伸びきった足がぷらん、と所在なく揺れる。
「ミリー。僕が全部やってあげるから、自分で立とうとしないで」
言っていることは同じなのに。カガリの声は、さっきまでと明らかにトーンが変わっていた。
最終的に自分が美味しく頂くことを前提に、疲れている恋人を労りがてら、ピカピカに磨き上げて下拵えをしてやろうという、私に対する気遣いと下心が四対六くらいの、比較的緩くて甘い雰囲気はすっかりどこかへ行ってしまって。今のカガリは完全に、使命感を持った介助者の顔をしている。
……ちょっと水膨れができたくらいで、大袈裟な。
これくらい大丈夫なのに……と、私があからさまに不満そうな顔をしていたせいか。浴室へと連れ込んだ私のことをバスタブの縁に下ろしたカガリは、私の前に跪いて。水膨れのできた足裏が床に着かないよう手の平で包みながら、懇願めいた口づけを私の膝頭へと押しつけた。
「ミリー?」
私に何かをさせたいとき、カガリはただ私を見つめるだけでいい。
カガリからじっと見つめられると、それだけで、私はカガリの望むことをなんでも叶えてあげたくなってしまうから。
「……わかったから、そんな目で見ないでよ。足のことは、これ以上悪くならないように私もちゃんと気をつけるから……」
「うん。ありがとう、ミリー」
これが惚れた弱みでなければ、いったいなんだというのだろう。
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