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RE019
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「一応、下見くらいしておく? 扶桑がいるならぶっつけ本番で大丈夫な気もするけど」
「手が滑りそう」
「死にそうになるまで我慢して」
世にも珍しい天使の生体標本よりも優先されている事実を、素直に喜んでおくべきか。
あまりに卑屈な考えが脳裏をよぎり、キリエはくしゃりと顔を顰めた。
「私の異能が通用しなかったら、好きなように嬲り殺していいから」
そんなことをいとにこやかに告げられたところで、キリエの気分が晴れるはずもない。
もしも伊月の、災厄級と怖れられる人外にさえその力を届かせるほどの異能が、まかり間違って神王の眷属にまで通用してしまったら?
その可能性が僅かにでもある限り、キリエはそもそも試させることさえしたくない。
かといって。伊月が「やりたい」、「欲しい」というものを強硬に阻み、取り上げられるほど、キリエの心臓は強くなかった。黒姫奈に対してであればまだ強く出られた可能性もあるが、伊月に対してはもう、駄目だった。
一度は許された抱擁を。大人しくしていれば拒まれもしない接触を。ようやく得られた安寧を取り上げられないためなら天使の捕獲さえ手伝ってしまうだろう己の浅ましさを、キリエははっきり自覚している。
伊月の意に沿わないことをすればどれほど酷い目に遭わされるか、骨身にしみてよくよく理解させられてしまっていた。
そのうえ伊月は、浅ましく愚かな吸血鬼の転がし方というものを、きちんと心得てもいる。
「(全部終わったら、また血を吸わせてあげる)」
それが鼻先にぶらさげられるニンジンの類、隠すつもりもない、あからさまな手練手管だとわかっていても。なし崩しに奪うのではなく、進んで差し出される血の味を未だ知ることのないキリエが、その甘美な誘惑に抗える道理もなかった。
どんなに言い繕ったところで、〔花嫁〕からその血を対価に請われ、「否」と返せる吸血鬼はそういない。
キリエほど血が濃く、上等な吸血鬼であればなおのこと。その理性は本能の前に容易く屈し、〔花嫁〕への盲従をよしとする。
そう在るよう、吸血鬼という種は作られた。
自らが吸血鬼の〔花嫁〕であることを認め、開き直ってしまえばわりとお手軽に使える「説得」でキリエをまんまと黙らせた伊月は、扶桑へ問いかける。
「捕獲の成功率、日を改めた方が高かったりするの?」
神王を唯一無二の神と崇めるアスガルタ正教に「神敵」認定されるほど、世に名を知られた眷属殺し。天使を殺すことにかけてはこの世界中で最も手慣れているに違いない串刺し公がついている以上、伊月の目論見が失敗に終わったとして、後始末に関する心配はなかった。
万が一、土壇場でキリエが使い物にならなくなったとしても。その時は〔扶桑〕が責任を持って主人の尻拭いをしてくれるだろうと、用心深い打算ありきの伊月へ、扶桑式の自動人形は慎ましく目を伏せ奏上する。
「四十八時間以上の待機時間を設けた場合、お嬢さまの体調面に作戦行動上、誤差範囲の好転が見込まれます」
「キリエと〔扶桑〕頼みな自覚はあるけど、はっきり誤差範囲とか言われると腹立つわー」
「申し訳ございません」
仕えるべき相手からの八つ当たりは、それを受けるのも仕事の内と考えていそうな人造王樹の端末が息をするよう行う薄っぺらな謝罪を、ひらひらと手を振る仕草で止めさせながら。〔扶桑〕が何について言っているのか、薄々見当が付いている伊月はどこか胡乱な面持ちで、自らの座椅子と化したキリエを仰ぐ。
「うん?」
伊月が振り返ったことに気付いたキリエは、お互いの視線が絡んだ途端、先程までのやりとりなどすっかり頭から抜け落ちてしまったかのよう、とろりと甘さばかりの笑みを浮かべた。
「その待機時間って、どこかの誰かさんに『待て』ができないと際限なく伸びるんじゃない?」
「御明察です」
今現在、伊月の体内には、キリエに吸われ、失った血液の代わりにキリエの魔力が巡っている。
〔花嫁〕にとって、吸血鬼の魔力は輸血の上位互換。生理食塩水より余程上等な代替品だが、身に宿す魔力の質がこの世界に生まれるありとあらゆる存在とは異なっている「神王の眷属」を相手取るにあたって、身の内を巡るキリエの魔力が失われてしまえばそのまま失血死してしまいかねない伊月の現状は、神性魔力の持ち主と直接相対したことのない素人考えでも「それは拙いだろう」と理解できるほどによろしくないものだった。
神性と魔性の魔力がぶつかり合えば、両者は等しく消滅する。
ただし……キリエの保有魔力は、人造王樹からの支援も含めてしまえば実質無尽蔵。そんなキリエから魔力の供給を受けられる伊月も、キリエから離れさえしなければ魔力が尽きる心配はなく。キリエが天使の傍で大事な大事な〔花嫁〕を手放すはずもないのだから、扶桑の言うとおり、伊月の生命維持にキリエの魔力が使われていることによる影響は結局、「誤差の範囲」に留まらざるをえない。
そして伊月には、十年もの間、不意の断食を強いられたキリエに対して――少なくとも当面の間は――供血を渋れない理由があった。
要するに。少しでも安全マージンをとろうと何十時間待機時間を設けたところで、伊月の状態は変わらない。その生き血はどうせ、作られた傍から吸われてしまうに決まっていた。
「私はどうせ安全圏から異能使うだけの簡単なお仕事だし。〔扶桑〕と襲の心の準備ができたら始めたいんだけど、どう?」
いつまで経っても、元いた場所へ座り直そうとする素振りを見せない襲に対して、伊月が問うと。襲はこれでもかとわざとらしい作り笑いで――「いいんじゃない?」と――どれほど心配したところで、なんだかんだと上手くやるに違いない、誰かさん似の娘へと答える。
「僕、居ても邪魔だろうし。うっかり巻き込まれないように神域の方から覗き見だけしてようかな……封印を解く必要があるなら、タイミングで合図だけくれる?」
「必要があるなら、って……その封印、勝手に破って大丈夫なの? 魔力の逆流で地脈が使い物にならなくなっても責任取れないわよ」
「どうせ、うちの地脈は天使の襲撃に遭った時点でナカオ池より向こうはずったずただよ。今更あの辺りが追加で管理外の土地になったって大差ないから。それくらいであの封印が片付くなら、安いものだよ」
そう言って、襲が伊月の前から姿を消すと。さほど間を置かず、今度は扶桑が先程の確認に対する答えを発した。
「交戦が予想される地域を隔離封鎖するため、障壁展開の基点として自動人形の動員をお許し頂けますか」
「〔扶桑〕が必要だと判断したなら、幾らでも」
「ご高配に感謝申し上げます」
追加の要求が出ないことを「以上終了」と解釈して、伊月は体の前面へ回された腕の片方を拾いながら、畳廊下の端からするりと下りた先、大きな靴脱石の上へと立ち上がり、キリエを振り返る。
「それじゃあ、ぼちぼち始めましょうか」
促すよう引いた手に、黒衣を纏う白皙の吸血鬼はいかにも渋々といった風情で従い、立ち上がると、すくい上げるよう抱えた伊月を伴い、音も立てずに足下の影へと飛び込んだ。
「手が滑りそう」
「死にそうになるまで我慢して」
世にも珍しい天使の生体標本よりも優先されている事実を、素直に喜んでおくべきか。
あまりに卑屈な考えが脳裏をよぎり、キリエはくしゃりと顔を顰めた。
「私の異能が通用しなかったら、好きなように嬲り殺していいから」
そんなことをいとにこやかに告げられたところで、キリエの気分が晴れるはずもない。
もしも伊月の、災厄級と怖れられる人外にさえその力を届かせるほどの異能が、まかり間違って神王の眷属にまで通用してしまったら?
その可能性が僅かにでもある限り、キリエはそもそも試させることさえしたくない。
かといって。伊月が「やりたい」、「欲しい」というものを強硬に阻み、取り上げられるほど、キリエの心臓は強くなかった。黒姫奈に対してであればまだ強く出られた可能性もあるが、伊月に対してはもう、駄目だった。
一度は許された抱擁を。大人しくしていれば拒まれもしない接触を。ようやく得られた安寧を取り上げられないためなら天使の捕獲さえ手伝ってしまうだろう己の浅ましさを、キリエははっきり自覚している。
伊月の意に沿わないことをすればどれほど酷い目に遭わされるか、骨身にしみてよくよく理解させられてしまっていた。
そのうえ伊月は、浅ましく愚かな吸血鬼の転がし方というものを、きちんと心得てもいる。
「(全部終わったら、また血を吸わせてあげる)」
それが鼻先にぶらさげられるニンジンの類、隠すつもりもない、あからさまな手練手管だとわかっていても。なし崩しに奪うのではなく、進んで差し出される血の味を未だ知ることのないキリエが、その甘美な誘惑に抗える道理もなかった。
どんなに言い繕ったところで、〔花嫁〕からその血を対価に請われ、「否」と返せる吸血鬼はそういない。
キリエほど血が濃く、上等な吸血鬼であればなおのこと。その理性は本能の前に容易く屈し、〔花嫁〕への盲従をよしとする。
そう在るよう、吸血鬼という種は作られた。
自らが吸血鬼の〔花嫁〕であることを認め、開き直ってしまえばわりとお手軽に使える「説得」でキリエをまんまと黙らせた伊月は、扶桑へ問いかける。
「捕獲の成功率、日を改めた方が高かったりするの?」
神王を唯一無二の神と崇めるアスガルタ正教に「神敵」認定されるほど、世に名を知られた眷属殺し。天使を殺すことにかけてはこの世界中で最も手慣れているに違いない串刺し公がついている以上、伊月の目論見が失敗に終わったとして、後始末に関する心配はなかった。
万が一、土壇場でキリエが使い物にならなくなったとしても。その時は〔扶桑〕が責任を持って主人の尻拭いをしてくれるだろうと、用心深い打算ありきの伊月へ、扶桑式の自動人形は慎ましく目を伏せ奏上する。
「四十八時間以上の待機時間を設けた場合、お嬢さまの体調面に作戦行動上、誤差範囲の好転が見込まれます」
「キリエと〔扶桑〕頼みな自覚はあるけど、はっきり誤差範囲とか言われると腹立つわー」
「申し訳ございません」
仕えるべき相手からの八つ当たりは、それを受けるのも仕事の内と考えていそうな人造王樹の端末が息をするよう行う薄っぺらな謝罪を、ひらひらと手を振る仕草で止めさせながら。〔扶桑〕が何について言っているのか、薄々見当が付いている伊月はどこか胡乱な面持ちで、自らの座椅子と化したキリエを仰ぐ。
「うん?」
伊月が振り返ったことに気付いたキリエは、お互いの視線が絡んだ途端、先程までのやりとりなどすっかり頭から抜け落ちてしまったかのよう、とろりと甘さばかりの笑みを浮かべた。
「その待機時間って、どこかの誰かさんに『待て』ができないと際限なく伸びるんじゃない?」
「御明察です」
今現在、伊月の体内には、キリエに吸われ、失った血液の代わりにキリエの魔力が巡っている。
〔花嫁〕にとって、吸血鬼の魔力は輸血の上位互換。生理食塩水より余程上等な代替品だが、身に宿す魔力の質がこの世界に生まれるありとあらゆる存在とは異なっている「神王の眷属」を相手取るにあたって、身の内を巡るキリエの魔力が失われてしまえばそのまま失血死してしまいかねない伊月の現状は、神性魔力の持ち主と直接相対したことのない素人考えでも「それは拙いだろう」と理解できるほどによろしくないものだった。
神性と魔性の魔力がぶつかり合えば、両者は等しく消滅する。
ただし……キリエの保有魔力は、人造王樹からの支援も含めてしまえば実質無尽蔵。そんなキリエから魔力の供給を受けられる伊月も、キリエから離れさえしなければ魔力が尽きる心配はなく。キリエが天使の傍で大事な大事な〔花嫁〕を手放すはずもないのだから、扶桑の言うとおり、伊月の生命維持にキリエの魔力が使われていることによる影響は結局、「誤差の範囲」に留まらざるをえない。
そして伊月には、十年もの間、不意の断食を強いられたキリエに対して――少なくとも当面の間は――供血を渋れない理由があった。
要するに。少しでも安全マージンをとろうと何十時間待機時間を設けたところで、伊月の状態は変わらない。その生き血はどうせ、作られた傍から吸われてしまうに決まっていた。
「私はどうせ安全圏から異能使うだけの簡単なお仕事だし。〔扶桑〕と襲の心の準備ができたら始めたいんだけど、どう?」
いつまで経っても、元いた場所へ座り直そうとする素振りを見せない襲に対して、伊月が問うと。襲はこれでもかとわざとらしい作り笑いで――「いいんじゃない?」と――どれほど心配したところで、なんだかんだと上手くやるに違いない、誰かさん似の娘へと答える。
「僕、居ても邪魔だろうし。うっかり巻き込まれないように神域の方から覗き見だけしてようかな……封印を解く必要があるなら、タイミングで合図だけくれる?」
「必要があるなら、って……その封印、勝手に破って大丈夫なの? 魔力の逆流で地脈が使い物にならなくなっても責任取れないわよ」
「どうせ、うちの地脈は天使の襲撃に遭った時点でナカオ池より向こうはずったずただよ。今更あの辺りが追加で管理外の土地になったって大差ないから。それくらいであの封印が片付くなら、安いものだよ」
そう言って、襲が伊月の前から姿を消すと。さほど間を置かず、今度は扶桑が先程の確認に対する答えを発した。
「交戦が予想される地域を隔離封鎖するため、障壁展開の基点として自動人形の動員をお許し頂けますか」
「〔扶桑〕が必要だと判断したなら、幾らでも」
「ご高配に感謝申し上げます」
追加の要求が出ないことを「以上終了」と解釈して、伊月は体の前面へ回された腕の片方を拾いながら、畳廊下の端からするりと下りた先、大きな靴脱石の上へと立ち上がり、キリエを振り返る。
「それじゃあ、ぼちぼち始めましょうか」
促すよう引いた手に、黒衣を纏う白皙の吸血鬼はいかにも渋々といった風情で従い、立ち上がると、すくい上げるよう抱えた伊月を伴い、音も立てずに足下の影へと飛び込んだ。
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