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EP01「女魔術師、奴隷を買う」
SCENE-022 >> ものを捨てられないタイプの女
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ハイメがいなくなると、ラルは私のことをくっつけたまま体を起こして。
「……捨てないでほしい」
ついさっきまで、これでもかと締め上げていた私の体に障るとでも思っていそうな、触れるか触れないかの力加減で私の背中にその手を添えた。
「勝手に勘違いしたのはそっちでしょ。新しい首環の話はしてあったんだから」
この短時間で見るからに憔悴した様子のラルを、その膝からご機嫌で眺めている。
底意地の悪さを隠そうともしない私の振る舞いに、まんまと弄ばれたラルは、溜め息と呼ぶには弱々しい吐息をか細くもらした。
「すまない」
ラルが嫌がりそうなことを狙ってやっているのだから、もちろん、私はこれっぽっちも怒ってなんかいない。
「私に痛くて苦しいことをしたの、許してほしい?」
どちらかというと、私の方が愛想を尽かされそうなものだけど。どういうわけか、ラルは私の奴隷のままでいたいらしいので。
「許さなくてもいい……」
今更、弱々しく縋ってくる男の体を、私はにやにやしながら抱き返した。
「捨てたりしないわよ。ラルのこと、好きだもの」
容姿の好ましさや魔力の相性も、もちろん重要なファクターではあるけれど。一番の決め手は、私から意地の悪いちょっかいのかけられ方をしても、それを許してくれるところ。
私に捨てられることが何より恐ろしくて。それ以外は、どんな無体も気にしないラルの一途さは、無邪気に人を愛する精霊たちのそれとよく似ていた。
滅茶苦茶に踏み躙ってしまいたくなる類の純情だ。
「量産品の、玩具みたいな首環なんかよりもっと頑丈で、特別で、おしゃれな首環を作ってあげる。無理矢理外そうとしたらラルの神経が焼き切れて、自分の意思では瞬き一つできなくなっちゃうような、すっごいの」
「……捨てないでほしい」
ついさっきまで、これでもかと締め上げていた私の体に障るとでも思っていそうな、触れるか触れないかの力加減で私の背中にその手を添えた。
「勝手に勘違いしたのはそっちでしょ。新しい首環の話はしてあったんだから」
この短時間で見るからに憔悴した様子のラルを、その膝からご機嫌で眺めている。
底意地の悪さを隠そうともしない私の振る舞いに、まんまと弄ばれたラルは、溜め息と呼ぶには弱々しい吐息をか細くもらした。
「すまない」
ラルが嫌がりそうなことを狙ってやっているのだから、もちろん、私はこれっぽっちも怒ってなんかいない。
「私に痛くて苦しいことをしたの、許してほしい?」
どちらかというと、私の方が愛想を尽かされそうなものだけど。どういうわけか、ラルは私の奴隷のままでいたいらしいので。
「許さなくてもいい……」
今更、弱々しく縋ってくる男の体を、私はにやにやしながら抱き返した。
「捨てたりしないわよ。ラルのこと、好きだもの」
容姿の好ましさや魔力の相性も、もちろん重要なファクターではあるけれど。一番の決め手は、私から意地の悪いちょっかいのかけられ方をしても、それを許してくれるところ。
私に捨てられることが何より恐ろしくて。それ以外は、どんな無体も気にしないラルの一途さは、無邪気に人を愛する精霊たちのそれとよく似ていた。
滅茶苦茶に踏み躙ってしまいたくなる類の純情だ。
「量産品の、玩具みたいな首環なんかよりもっと頑丈で、特別で、おしゃれな首環を作ってあげる。無理矢理外そうとしたらラルの神経が焼き切れて、自分の意思では瞬き一つできなくなっちゃうような、すっごいの」
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