天職、使役士

葉月+(まいかぜ)

文字の大きさ
上 下
10 / 11
探索者Lv10

SCENE-007 ハジメテをもらう方と将来的にナマでさせてもらう方

しおりを挟む

 お腹が満たされると、途端に眠たくなって。
 ソファにもたれながらうとうとしはじめた私に、二人はこれまでと変わらず優しかった。

 眠いなら寝ていいよ、と連れて行かれた先は、私の部屋ではなく、二人が使っている和室の方だったけど。



 力尽きて、倒れ込むよう布団に転がった後のことは、プッツリと記憶が途切れて覚えていない。

 泥のように眠って、ふと目が覚めると。部屋の中はとっぷりと暗くなっていて。
 私の体には、いつもどおり、狼と仁の腕や足がこれでもかと絡みついていた。



 いつもと違うところなんて、どこにもない。

 それなのに、私たちの関係は、昨日までとは決定的に変わってしまっている。

 ……本当に?

 私たちの関係は変わってしまった。
 そのはずだけど。

 この状況があまりにも、いつもと変わらなすぎて。やっぱり全部、夢だったんじゃないかと、少しだけ怖くなる。

「じん……」

 夢なら覚めないでいてほしかったけど。
 覚めてしまったのなら、仕方がない。

 そんなふうに、心の中で予防線を張りながら。私が名前を呼ぶと。私の背中に回されていた仁の腕にむずがるような力が込められる。

「ん……ぅ……? ひめ、おきたの……?」
「うん……」

 ぐっ……と抱き寄せられて。頬をすり寄せられるのも、いつもどおりだったから。なんの判断材料にもならなかった。

「ねぇ、いま何時?」
「んー……」

 私の背中から離れていった仁の手が、ごそごそと布団の外を探って。戻ってくると、点灯したスマホのバックライトで周囲の様子が照らし出される。

「八時過ぎ……」

 寝起きの顔で、眩しそうに目を細めながらスマホのディスプレイを見ていた仁は、まだ寝たりなさそうな欠伸混じりに、用の済んだスマホを布団の外へと投げ出した。

「姫、起きる……?」
「うん……」

 戻ってきた手が、私の髪を丁寧に梳き流していく。

「起きるなら、姫が寝ちゃってできなかったことの続きをするけど」

 それでもいい? と、仁の声が、強請るように甘くとろけて。

 もう一度、仁の方へと抱き寄せられた私の体に、ゴリッと硬いものが押し付けられる。

 その張り詰めた感触の正体へ理解が及ぶ頃には。いつの間にか起きていた狼の手が、私の体の輪郭を、いやらしい手つきでなぞりはじめていた。



 夢なんかじゃない。



「ゆっ……ゆっくりして!」
「もちろん。姫のハジメテはこれっきりなんだから、俺も狼もがっついたりしない。本物のお姫さまより大事にするよ」

 思わず大きな声を出した私のことを、狼の方に押しやって。唯一の光源だったスマホのバックライトが消灯したことで、戻ってきた暗闇の中。体を起こした仁が、つられてこっちまで体が熱くなってくるような熱を帯びた体で、本格的に覆い被さってくる。

「痛い思いはさせないように気をつけるし、姫が愉しめるように努力もする」

 だからいいよね? と、仁は私にキスをした。



 真っ暗な中で二つの口と四つの手から施される執拗な愛撫に、時間をかけてやりすぎなくらい蕩かされるのは、信じられないくらい気持ちが良くて。

 これが夢でないのなら。それだけで、私にとって怖いことなんて一つもありはしなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。

処理中です...