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魔法少女にはなれなかった
「喜びを運ぶ」「とても幸せです」
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「私はね、犬が飼いたかったの。でも妹がウサギがいいって言うから、家ではウサギを飼ってるの。知ってる? ウサギってキュッ! って鳴くのよ。お腹が空いたら『ごはんをちょうだい!』ってお皿をガタガタ鳴らしたりするし、ケージを窓の傍に置いておいたらカーテンを引っ張り込んで食べちゃうの。あのカーテン、妹が『お姉ちゃんはどっちがいい?』って聞いてくれて、珍しく私が選んだ柄だったのに。ボロボロになったから捨てられちゃった」
死にかけていた化け物は命が助かっても弱っているから、他にすることもなくて、私の話をいくらでも聞いてくれる。
そう思っていたから。それがそもそも口のきけない化け物だと気付いたのは、しばらく経ってからのことだった。
「あなた、全然喋らないのね。人に近い形をしていたから、話し相手になるかと思ったのに」
崩れかけていた体がだいぶしっかりとしてきた頃。もうそろそろ話せてもおかしくはないのではないだろうかと尋ねた私に、それはひどく申し訳なさそうな顔をして。
自分の喉を指差してから、両手の人差し指でバッテンを作って見せてくる。
「そもそも話せないの?」
こくん、と頷き返した化け物を、私はその日から〝クチナシ〟と呼ぶようになった。
死にかけていた化け物は命が助かっても弱っているから、他にすることもなくて、私の話をいくらでも聞いてくれる。
そう思っていたから。それがそもそも口のきけない化け物だと気付いたのは、しばらく経ってからのことだった。
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崩れかけていた体がだいぶしっかりとしてきた頃。もうそろそろ話せてもおかしくはないのではないだろうかと尋ねた私に、それはひどく申し訳なさそうな顔をして。
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