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第二節「血を吸う鬼の最愛」
SCENE-033 満たされるには程遠い
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ふくふくと育った蕾をほころばせ、伊月の血と魔力を大輪の花と咲かせた吸血鬼の血薔薇。
今にも滴り落ちそうなほど瑞々しく肉厚の花片からは、思わずクラリとするような血と魔力の芳香が漂ってくる。
「欲しい?」
伊月の手で摘み取られた花片の一枚を、顔の前でひらひらと揺らされて。
砂糖のように甘く、それでいて刺激的な、たまらなく喉が渇いてくるその香りに、キリエはごくりと生唾を飲んだ。
「欲しい……ちょうだい?」
真性の竜種へと転じたキリエはもはや、吸血鬼として生きていた頃のような血への渇望を持たないはずなのに。
今、キリエの中には確かに、伊月の血と、そこに溶け込んだ魔力を求める衝動が存在している。
「キリエって、かわいさ余ってパートナーを食べちゃうタイプの竜種よね」
「笑い事じゃないよ……」
にやにやと笑う伊月が手ずからキリエの口腔へと押し込めた花片は、舌の上でとろりと溶けて。とうに吸血鬼ではなくなっているキリエの、あるはずもない飢えを癒やした。
今にも滴り落ちそうなほど瑞々しく肉厚の花片からは、思わずクラリとするような血と魔力の芳香が漂ってくる。
「欲しい?」
伊月の手で摘み取られた花片の一枚を、顔の前でひらひらと揺らされて。
砂糖のように甘く、それでいて刺激的な、たまらなく喉が渇いてくるその香りに、キリエはごくりと生唾を飲んだ。
「欲しい……ちょうだい?」
真性の竜種へと転じたキリエはもはや、吸血鬼として生きていた頃のような血への渇望を持たないはずなのに。
今、キリエの中には確かに、伊月の血と、そこに溶け込んだ魔力を求める衝動が存在している。
「キリエって、かわいさ余ってパートナーを食べちゃうタイプの竜種よね」
「笑い事じゃないよ……」
にやにやと笑う伊月が手ずからキリエの口腔へと押し込めた花片は、舌の上でとろりと溶けて。とうに吸血鬼ではなくなっているキリエの、あるはずもない飢えを癒やした。
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