男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。

田太 優

文字の大きさ
上 下
8 / 9

第8話

しおりを挟む
アルマシア様が排除され平穏な日々を取り戻したはずの私は、どうしてかリフィン殿下たちと一緒に行動するようになっていた。
正しくは雑用係としてグラハント様に良いように扱われているだけなのに。

それでもリフィン殿下との繋がりが深まればリニス男爵家にとっても利益がある。
なによりもグラハント様に反抗的な態度を見せれば何を言い触らされるかわからない。
私は従順な雑用係。
グラハント様の指示に従って動く使用人みたいなもの。

そのような私の扱いを知ってのことか、リフィン殿下に接近しているはずの私は他の令嬢たちから嫉妬されることもなかった。
そもそも使用人みたいに扱われることを屈辱だと思いそうな令嬢たちが多そうだし。

そんなある日のこと、ふとアルマシア様がどうなったのか気になってしまった。
グラハント様なら何か知っているだろうし、ダメ元で訊いてみることにした。

「あの、グラハント様。アルマシア様があれからどうなったかご存じですか?」
「気になる?」
「はい」
「聞いたら後悔するかもしれないよ?本当に知りたいの?」

そこまで言われても今更退く訳にもいかない。
私に聞かせたくないなら酷い目に遭っているのだろう。
でもそれは私の想像であって事実は違うのかもしれない。
せっかく知ってそうなグラハント様が教えてくれそうなのだから、このチャンスを逃す訳にはいかない。

「知りたいです。教えてください」
「そうか…」

グラハント様は仕方ないなという表情になり、口を開いた。

「ロンカスター公爵が自分の派閥の結束を強めるために秘密の集いを行っているんだ」
「何やら怪しげな響きですね」
「実際に怪しいことをしているよ。年頃の女性を生贄のようにし、参加者たちが好きにするんだ」
「そうでしたか……」

曖昧な表現にしているけど、実際には相当に酷い扱いなのだろう。
口にしたくないというよりも私にストレートに聞かせたくないというグラハント様の配慮なのかもしれない。
聞いていて気分が良くないのだから、グラハント様が聞きたいのかと念押ししたのも納得できた。

「アルマシアはその場で都合良く扱われているよ。ロンカスター公爵家の役に立っているみたいだね」
「…………」

別に同情したりはしない。
同時にどうしてリフィン殿下とアルマシア様を婚約させたくないのか理解できた。

「ロンカスター公爵の力は侮れない。でも少しずつでも削いでいかないとね」
「……いろいろと納得できました」
「だからクロエ嬢は十分貢献してくれた。もうリフィン殿下のために働くしかないよね?アルマシアに、そしてロンカスター公爵家に敵対したようなものだし」

ある意味私も嵌められたのかもしれない。

「でも安心して。言葉は悪いけどリニス男爵家ごときの相手をするほどロンカスター公爵家は暇ではないし。それにクロエ嬢がリフィン殿下に近しいことはもうみんな知っているだろう?これはクロエ嬢もリニス男爵家も守ることになるんだ」
「納得しました。お気遣いありがとうございます」

まさかそこまで考えていたなんて。
グラハント様はただの性格の悪い人ではなかった。
私やリニス男爵家のことを考えての振る舞いならグラハント様を見直さないといけない。

「だからさ、また頼みたい仕事があるんだけど」
「はい、喜んで」

前言撤回。
それなりに役立って守るべき価値があると認めさせないといけない。
そこまで計算してのことなら腹黒だ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」 「はあ……なるほどね」 伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。 彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。 アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。 ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。 ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね

新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

処理中です...