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第8話
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アルマシア様が排除され平穏な日々を取り戻したはずの私は、どうしてかリフィン殿下たちと一緒に行動するようになっていた。
正しくは雑用係としてグラハント様に良いように扱われているだけなのに。
それでもリフィン殿下との繋がりが深まればリニス男爵家にとっても利益がある。
なによりもグラハント様に反抗的な態度を見せれば何を言い触らされるかわからない。
私は従順な雑用係。
グラハント様の指示に従って動く使用人みたいなもの。
そのような私の扱いを知ってのことか、リフィン殿下に接近しているはずの私は他の令嬢たちから嫉妬されることもなかった。
そもそも使用人みたいに扱われることを屈辱だと思いそうな令嬢たちが多そうだし。
そんなある日のこと、ふとアルマシア様がどうなったのか気になってしまった。
グラハント様なら何か知っているだろうし、ダメ元で訊いてみることにした。
「あの、グラハント様。アルマシア様があれからどうなったかご存じですか?」
「気になる?」
「はい」
「聞いたら後悔するかもしれないよ?本当に知りたいの?」
そこまで言われても今更退く訳にもいかない。
私に聞かせたくないなら酷い目に遭っているのだろう。
でもそれは私の想像であって事実は違うのかもしれない。
せっかく知ってそうなグラハント様が教えてくれそうなのだから、このチャンスを逃す訳にはいかない。
「知りたいです。教えてください」
「そうか…」
グラハント様は仕方ないなという表情になり、口を開いた。
「ロンカスター公爵が自分の派閥の結束を強めるために秘密の集いを行っているんだ」
「何やら怪しげな響きですね」
「実際に怪しいことをしているよ。年頃の女性を生贄のようにし、参加者たちが好きにするんだ」
「そうでしたか……」
曖昧な表現にしているけど、実際には相当に酷い扱いなのだろう。
口にしたくないというよりも私にストレートに聞かせたくないというグラハント様の配慮なのかもしれない。
聞いていて気分が良くないのだから、グラハント様が聞きたいのかと念押ししたのも納得できた。
「アルマシアはその場で都合良く扱われているよ。ロンカスター公爵家の役に立っているみたいだね」
「…………」
別に同情したりはしない。
同時にどうしてリフィン殿下とアルマシア様を婚約させたくないのか理解できた。
「ロンカスター公爵の力は侮れない。でも少しずつでも削いでいかないとね」
「……いろいろと納得できました」
「だからクロエ嬢は十分貢献してくれた。もうリフィン殿下のために働くしかないよね?アルマシアに、そしてロンカスター公爵家に敵対したようなものだし」
ある意味私も嵌められたのかもしれない。
「でも安心して。言葉は悪いけどリニス男爵家ごときの相手をするほどロンカスター公爵家は暇ではないし。それにクロエ嬢がリフィン殿下に近しいことはもうみんな知っているだろう?これはクロエ嬢もリニス男爵家も守ることになるんだ」
「納得しました。お気遣いありがとうございます」
まさかそこまで考えていたなんて。
グラハント様はただの性格の悪い人ではなかった。
私やリニス男爵家のことを考えての振る舞いならグラハント様を見直さないといけない。
「だからさ、また頼みたい仕事があるんだけど」
「はい、喜んで」
前言撤回。
それなりに役立って守るべき価値があると認めさせないといけない。
そこまで計算してのことなら腹黒だ!
正しくは雑用係としてグラハント様に良いように扱われているだけなのに。
それでもリフィン殿下との繋がりが深まればリニス男爵家にとっても利益がある。
なによりもグラハント様に反抗的な態度を見せれば何を言い触らされるかわからない。
私は従順な雑用係。
グラハント様の指示に従って動く使用人みたいなもの。
そのような私の扱いを知ってのことか、リフィン殿下に接近しているはずの私は他の令嬢たちから嫉妬されることもなかった。
そもそも使用人みたいに扱われることを屈辱だと思いそうな令嬢たちが多そうだし。
そんなある日のこと、ふとアルマシア様がどうなったのか気になってしまった。
グラハント様なら何か知っているだろうし、ダメ元で訊いてみることにした。
「あの、グラハント様。アルマシア様があれからどうなったかご存じですか?」
「気になる?」
「はい」
「聞いたら後悔するかもしれないよ?本当に知りたいの?」
そこまで言われても今更退く訳にもいかない。
私に聞かせたくないなら酷い目に遭っているのだろう。
でもそれは私の想像であって事実は違うのかもしれない。
せっかく知ってそうなグラハント様が教えてくれそうなのだから、このチャンスを逃す訳にはいかない。
「知りたいです。教えてください」
「そうか…」
グラハント様は仕方ないなという表情になり、口を開いた。
「ロンカスター公爵が自分の派閥の結束を強めるために秘密の集いを行っているんだ」
「何やら怪しげな響きですね」
「実際に怪しいことをしているよ。年頃の女性を生贄のようにし、参加者たちが好きにするんだ」
「そうでしたか……」
曖昧な表現にしているけど、実際には相当に酷い扱いなのだろう。
口にしたくないというよりも私にストレートに聞かせたくないというグラハント様の配慮なのかもしれない。
聞いていて気分が良くないのだから、グラハント様が聞きたいのかと念押ししたのも納得できた。
「アルマシアはその場で都合良く扱われているよ。ロンカスター公爵家の役に立っているみたいだね」
「…………」
別に同情したりはしない。
同時にどうしてリフィン殿下とアルマシア様を婚約させたくないのか理解できた。
「ロンカスター公爵の力は侮れない。でも少しずつでも削いでいかないとね」
「……いろいろと納得できました」
「だからクロエ嬢は十分貢献してくれた。もうリフィン殿下のために働くしかないよね?アルマシアに、そしてロンカスター公爵家に敵対したようなものだし」
ある意味私も嵌められたのかもしれない。
「でも安心して。言葉は悪いけどリニス男爵家ごときの相手をするほどロンカスター公爵家は暇ではないし。それにクロエ嬢がリフィン殿下に近しいことはもうみんな知っているだろう?これはクロエ嬢もリニス男爵家も守ることになるんだ」
「納得しました。お気遣いありがとうございます」
まさかそこまで考えていたなんて。
グラハント様はただの性格の悪い人ではなかった。
私やリニス男爵家のことを考えての振る舞いならグラハント様を見直さないといけない。
「だからさ、また頼みたい仕事があるんだけど」
「はい、喜んで」
前言撤回。
それなりに役立って守るべき価値があると認めさせないといけない。
そこまで計算してのことなら腹黒だ!
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