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第17話
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ミリエとの会話で気になったが、俺が店を手放したことを気にしているようだった。
移転とはいえ全てを捨ててしまったように感じるかもしれない。
普通に考えれば気になってしまうだろう。
だが、もうウェーバー子爵領にいたくなかったことは事実。
素直に伝えても納得はしてくれないだろう。
それに…個人的にルベントに現実をわからせてやりたいという気持ちがあったことを伝えてしまったら幻滅されてしまうかもしれない。
大切なことは全てを正直に伝えることではない。
ミリエが納得でき、負担に感じないような理由を伝えることだ。
「なあ、ミリエ。店を手放させてしまったと思ってる?」
「…思っているわ。マーティンにも理由があったと思うけど、少なからず私のために無理をさせてしまったのではないかと後悔しているの」
「それは考えすぎだから後悔しないでほしい。ウェーバー子爵領で商売を続けたとして、将来性があると思える?」
「……無いわね」
「時間をかければかけるほど状況は悪くなるだろう。それに………ギャレー様から財産を不当に安く買い叩いたと難癖付けられて賠償金をせしめられるかもしれなかった。ウェーバー子爵ならやり兼ねないだろう?」
「確かに。それで早く撤退したかったのね」
「その通り。だからミリエが気にするようなことはないんだ。それに移転だから別の領地でも商売は続けるよ」
「………ありがとう、マーティン」
どうやら納得させられたようだ。
ルベントが継いで商会の名前を変えたところでウェーバー子爵が追及すれば釈明しようが無駄だろう。
横暴な権力者の領地で商売を続けるリスクが高すぎる。
ギャレー様の件で目を付けられやすくなっているから尚更だ。
それに…ギャレー様がサインした後払いの契約書。
あれはドーリッツ商会と交わした契約だ。
ルベントが名前を変えた商会で支払うよう求めたところでウェーバー子爵が認めるだろうか?
認めたら不当な契約だとか難癖をつけられ財産の没収なんて事態に発展するかもしれない。
支払うよう求めただけで不興を買うかもしれない。
確定していないが無視できないリスクだ。
ルベントも自分が考えなしだと理解できるだろうか。
………もしウェーバー子爵が何かするにしても、ルベントが犠牲になってくれれば俺たちへの追及の手も緩むだろう。
他領に行ってしまえばウェーバー子爵の力だって及ばない。
そんなことまで考えていたなんてミリエに伝える必要はない。
余計な心配や負担や罪悪感を感じさせたくはないから。
「これから向かう先での生活はどうするの?」
「実はもう店の準備はできている。さすがに商品の仕入れはまだだけどね」
「そうだったの!?さすがマーティンね」
「考えなしのはずがないだろう?ミリエの生活のことだって考えているさ。それに店の準備のための資金はギャレー様から安く買い叩いたものが活躍してくれたんだ。ミリエが手伝ってくれたようなものだよ」
「そうだったのね。マーティンに損をさせてなかったなら良かったわ」
ミリエに酒を取り寄せるよう頼まれ、俺は他では目にかかれないようなものを提供すると約束した。
高価な酒とは言っていない。
さすがに店舗を用意するのは高くついたが…そこはドーリッツ商会としての貯えもあったからどうにかなった。
そんなことを考えていたなんて、あえて伝えたら自慢のように思えてしまうだろう。
ミリエに褒めてもらいたい気持ちを抑える。
小さな男だと思われたくはない。
移転とはいえ全てを捨ててしまったように感じるかもしれない。
普通に考えれば気になってしまうだろう。
だが、もうウェーバー子爵領にいたくなかったことは事実。
素直に伝えても納得はしてくれないだろう。
それに…個人的にルベントに現実をわからせてやりたいという気持ちがあったことを伝えてしまったら幻滅されてしまうかもしれない。
大切なことは全てを正直に伝えることではない。
ミリエが納得でき、負担に感じないような理由を伝えることだ。
「なあ、ミリエ。店を手放させてしまったと思ってる?」
「…思っているわ。マーティンにも理由があったと思うけど、少なからず私のために無理をさせてしまったのではないかと後悔しているの」
「それは考えすぎだから後悔しないでほしい。ウェーバー子爵領で商売を続けたとして、将来性があると思える?」
「……無いわね」
「時間をかければかけるほど状況は悪くなるだろう。それに………ギャレー様から財産を不当に安く買い叩いたと難癖付けられて賠償金をせしめられるかもしれなかった。ウェーバー子爵ならやり兼ねないだろう?」
「確かに。それで早く撤退したかったのね」
「その通り。だからミリエが気にするようなことはないんだ。それに移転だから別の領地でも商売は続けるよ」
「………ありがとう、マーティン」
どうやら納得させられたようだ。
ルベントが継いで商会の名前を変えたところでウェーバー子爵が追及すれば釈明しようが無駄だろう。
横暴な権力者の領地で商売を続けるリスクが高すぎる。
ギャレー様の件で目を付けられやすくなっているから尚更だ。
それに…ギャレー様がサインした後払いの契約書。
あれはドーリッツ商会と交わした契約だ。
ルベントが名前を変えた商会で支払うよう求めたところでウェーバー子爵が認めるだろうか?
認めたら不当な契約だとか難癖をつけられ財産の没収なんて事態に発展するかもしれない。
支払うよう求めただけで不興を買うかもしれない。
確定していないが無視できないリスクだ。
ルベントも自分が考えなしだと理解できるだろうか。
………もしウェーバー子爵が何かするにしても、ルベントが犠牲になってくれれば俺たちへの追及の手も緩むだろう。
他領に行ってしまえばウェーバー子爵の力だって及ばない。
そんなことまで考えていたなんてミリエに伝える必要はない。
余計な心配や負担や罪悪感を感じさせたくはないから。
「これから向かう先での生活はどうするの?」
「実はもう店の準備はできている。さすがに商品の仕入れはまだだけどね」
「そうだったの!?さすがマーティンね」
「考えなしのはずがないだろう?ミリエの生活のことだって考えているさ。それに店の準備のための資金はギャレー様から安く買い叩いたものが活躍してくれたんだ。ミリエが手伝ってくれたようなものだよ」
「そうだったのね。マーティンに損をさせてなかったなら良かったわ」
ミリエに酒を取り寄せるよう頼まれ、俺は他では目にかかれないようなものを提供すると約束した。
高価な酒とは言っていない。
さすがに店舗を用意するのは高くついたが…そこはドーリッツ商会としての貯えもあったからどうにかなった。
そんなことを考えていたなんて、あえて伝えたら自慢のように思えてしまうだろう。
ミリエに褒めてもらいたい気持ちを抑える。
小さな男だと思われたくはない。
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