9 / 21
第9話
しおりを挟む
ウェーバー子爵夫妻に会ったところで歓迎されるはずがない。
そもそも孤児出身だということで私とギャレー様の結婚に反対され、ギャレー様が反対を押し切って結婚したという経緯がある。
特にウェーバー子爵夫人は私のことが気に入らないようで、顔を合わせればお小言を貰える関係。
そういった実績が何度もあるのだから、今回だって同じに決まっている。
とはいえ、今回呼び出された理由があるはず。
思い当たるのは財産の処分で商人を集めたこと。
派手に商人が出入りすれば噂にならないはずがない。
財産を処分するほどお金に困っているとか、お酒のためならいくらでも散財するとか、どれもギャレー様にとっては好ましくないものばかり。
ウェーバー子爵夫妻に会い、予想通り私は文句で歓迎された。
「随分と遅かったな。約束の時間すら守れないのか?それにその格好はなんだ?」
「いくら孤児だったからって代官夫人に相応しい格好というものがあるでしょ?これだから非常識な孤児なんてギャレーの妻にさせたくなかったのよ」
「……申し訳ありません」
とりあえず不本意でも謝罪しておけば義理の両親たちは気が済む。
それからも一通り文句を言われ、やっと本題に入った。
「最近ギャレーの悪評が広まっているようではないか。ミリエ、お前は妻としてギャレーを支えていないからそう噂されたのではないか?」
「そうよ、かわいいギャレーを誘惑したような女だもの。お金目当てなのよ。かなりお金に困っているなんて不名誉な噂まで聞いたわよ?恥ずかしいわ。どうしてくれるの?」
最初から私が悪いと決めつけている相手に何を言っても悪く捉えられるだろうけど、せめて事実を伝えたい。
事実を伝えようが私が悪いと決めつけられるに決まっているし、義理の両親を不機嫌にさせるだけだと理解している。
これは私の気持ちの問題。
「お金に困っているのは事実です。それもギャレー様が散財し、お酒に溺れているからです」
「いや、ギャレーは少々頼りないところはあるが、そんなことをするはずがないだろう。そもそもミリエに不満があるから酒に逃げているのではないか?」
「ギャレーのこと、悪く言ったわね?気に入らないなら離婚すればいいわ。結婚なんて最初から反対だったのよ」
やはり私が悪いと決めつけられた。
事実を伝えたところで無意味だと改めて理解できた。
それに私は伝えたのだ。
何かあってから責められようとも私にできることはしたのだ。
「…あまり妻として相応しくない態度を取り続けるようなら無理矢理にでも離婚させるしかないかもしれないな」
「そうよ、孤児のくせにギャレーと結婚するなんて生意気だったのよ。夫を立てて当然じゃない。それができないなら離婚しなさい」
「とはいえ離婚するとギャレーの評判も悪くなってしまう。…仕方ない、まずは黙ってギャレーに従ってギャレーの機嫌を取ることだな」
「……私は反対だけど、一応チャンスはあげるわ。だから失敗したら離婚しなさい」
「はい、わかりました」
黙ってギャレー様に従うよう、領主様に言われた。
領主様のご命令という正当性を得られたのだ。
領主様は領地の最高権力者であり、その言葉は法である。
だから私は命令にしたがってギャレー様の望むようにする。
それがギャレー様の死に向かおうとも。
そもそも孤児出身だということで私とギャレー様の結婚に反対され、ギャレー様が反対を押し切って結婚したという経緯がある。
特にウェーバー子爵夫人は私のことが気に入らないようで、顔を合わせればお小言を貰える関係。
そういった実績が何度もあるのだから、今回だって同じに決まっている。
とはいえ、今回呼び出された理由があるはず。
思い当たるのは財産の処分で商人を集めたこと。
派手に商人が出入りすれば噂にならないはずがない。
財産を処分するほどお金に困っているとか、お酒のためならいくらでも散財するとか、どれもギャレー様にとっては好ましくないものばかり。
ウェーバー子爵夫妻に会い、予想通り私は文句で歓迎された。
「随分と遅かったな。約束の時間すら守れないのか?それにその格好はなんだ?」
「いくら孤児だったからって代官夫人に相応しい格好というものがあるでしょ?これだから非常識な孤児なんてギャレーの妻にさせたくなかったのよ」
「……申し訳ありません」
とりあえず不本意でも謝罪しておけば義理の両親たちは気が済む。
それからも一通り文句を言われ、やっと本題に入った。
「最近ギャレーの悪評が広まっているようではないか。ミリエ、お前は妻としてギャレーを支えていないからそう噂されたのではないか?」
「そうよ、かわいいギャレーを誘惑したような女だもの。お金目当てなのよ。かなりお金に困っているなんて不名誉な噂まで聞いたわよ?恥ずかしいわ。どうしてくれるの?」
最初から私が悪いと決めつけている相手に何を言っても悪く捉えられるだろうけど、せめて事実を伝えたい。
事実を伝えようが私が悪いと決めつけられるに決まっているし、義理の両親を不機嫌にさせるだけだと理解している。
これは私の気持ちの問題。
「お金に困っているのは事実です。それもギャレー様が散財し、お酒に溺れているからです」
「いや、ギャレーは少々頼りないところはあるが、そんなことをするはずがないだろう。そもそもミリエに不満があるから酒に逃げているのではないか?」
「ギャレーのこと、悪く言ったわね?気に入らないなら離婚すればいいわ。結婚なんて最初から反対だったのよ」
やはり私が悪いと決めつけられた。
事実を伝えたところで無意味だと改めて理解できた。
それに私は伝えたのだ。
何かあってから責められようとも私にできることはしたのだ。
「…あまり妻として相応しくない態度を取り続けるようなら無理矢理にでも離婚させるしかないかもしれないな」
「そうよ、孤児のくせにギャレーと結婚するなんて生意気だったのよ。夫を立てて当然じゃない。それができないなら離婚しなさい」
「とはいえ離婚するとギャレーの評判も悪くなってしまう。…仕方ない、まずは黙ってギャレーに従ってギャレーの機嫌を取ることだな」
「……私は反対だけど、一応チャンスはあげるわ。だから失敗したら離婚しなさい」
「はい、わかりました」
黙ってギャレー様に従うよう、領主様に言われた。
領主様のご命令という正当性を得られたのだ。
領主様は領地の最高権力者であり、その言葉は法である。
だから私は命令にしたがってギャレー様の望むようにする。
それがギャレー様の死に向かおうとも。
66
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説

【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします
リオール
恋愛
私には妹が一人いる。
みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。
それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。
妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。
いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。
──ついでにアレもあげるわね。
=====
※ギャグはありません
※全6話

【全4話】私の婚約者を欲しいと妹が言ってきた。私は醜いから相応しくないんだそうです
リオール
恋愛
私の婚約者を欲しいと妹が言ってきた。
私は醜いから相応しくないんだそうです。
お姉様は醜いから全て私が貰うわね。
そう言って妹は──
※全4話
あっさりスッキリ短いです

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?
リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。
だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。
世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何?
せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。
貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます!
=====
いつもの勢いで書いた小説です。
前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。
妹、頑張ります!
※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……

姉にざまぁされた愚妹ですが何か?
リオール
恋愛
公爵令嬢エルシーには姉のイリアが居る。
地味な姉に対して美しい美貌をもつエルシーは考えた。
(お姉様は王太子と婚約してるけど……王太子に相応しいのは私じゃないかしら?)
そう考えたエルシーは、自らの勝利を確信しながら動き出す。それが破滅への道とも知らずに……
=====
性懲りもなくありがちな話。だって好きだから(•‿•)
10話完結。※書き終わってます
最初の方は結構ギャグテイストですがラストはシリアスに終わってます。
設定は緩いので何でも許せる方向けです。


【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

物語は続かない
mios
恋愛
「ローズ・マリーゴールド公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!」
懐かしい名前を聞きました。彼が叫ぶその名を持つ人物は既に別の名前を持っています。
役者が欠けているのに、物語が続くなんてことがあるのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる