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第8話
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お金の工面ができても肝心のお酒が問題だった。
ドーリッツ商会から仕入れたお酒はもう飲み干され、仕方なく以前飲んでいた銘柄を仕入れることになった。
お酒を一口飲み、ギャレー様が不機嫌になり怒りを爆発させた。
「なんだこの安酒は!もっと上等なものを用意しろ!明らかに質が劣ってるぞ!!」
「良いものを調達するのは手間も時間もかかります。ウェーバー子爵領ではそのお酒でも上等なものです」
「これで上等なのか?信じられん………」
ドーリッツ商会のお酒に慣れてしまったのか、ギャレー様は以前は喜んで飲んでいた銘柄では満足できないようだった。
それに体調も悪そうだし、もしかしたら体調が悪いから美味しく感じられないのかもしれない。
両方かもしれないけど。
でも私は何も言わない。
言ったところで機嫌を損ねるだけだもの。
「良い酒はまだ手に入らないのか?」
「仕入れに他領まで行っているはずですから、もうしばらく時間がかかると思います」
「……仕方ないか。まあこの不味い酒で我慢してやろう」
珍しく聞き分けがいい。
「と思ったが、やはりこの酒は不味いな。そういえば商人たちを呼んだだろう?金の工面はできたのか?」
「できましたけど、思ったほどではありませんでした」
「所詮商人どもは信用できない奴らだからな。買い叩いて暴利を貪るような奴ばかりだ。だが酒を仕入れるのも商人の仕事か…。まあ、役立つ商人もいるということだな」
一人で納得してしまったギャレー様。
そもそも私との会話なんてどうでもいいのだろう。
言いたいことを言って、私はギャレー様の機嫌を損ねないよう適当に話を合わせればいい。
もうずっとこういった会話と呼べないようなものを繰り返してきた。
「しかし、だ。どうも最近の安酒のせいか体調がいまいちだな。俺に相応しい希少で美味い酒を早く飲みたいものだな。良い酒なくしては健康はあり得ないからな。はっはっは」
ギャレー様にとってはそうなのかもしれない。
このまま体調が悪ければ、最悪死に至るかもしれない。
好きなお酒を飲んで死ねるのであれば幸せだろう。
そのまま死んでくれれば私だって嬉しい。
「そうだ、忘れていた。ミリエ、父上たちからの呼び出しがあったぞ。忘れずに行ってこい」
「……わかりました。いつ伺えばよろしいのでしょうか?」
「今日だ」
「…………わかりました。すぐに出かけます」
信じられない。
いくら領内とはいえ急に行けと言われてもすぐに行くことなんてできない。
今からなら昼過ぎに着くかもしれないけど、馬車の手配なんてしている暇はないし、こうなったら歩いていくしかない。
ギャレー様のために馬車は存在しているけど御者がいないし馬もいない。
私では世話なんてできないし、世話できる人を雇うような余裕なんてないもの。
馬車も売ってもいいかもね。
どうせ馬車ででかけるようなことなんて滅多にないのだから。
………現実逃避している場合ではなくて、とにかく歩いてでも行かないと。
一応代官夫人として最低限の服装はさせられているけど、歩いていくならこんな服なんて邪魔でしかない。
平民の、町娘みたいな格好をしないと歩きにくいし、そんな格好なら義理の両親に責められるに決まっている。
でも約束の日に行けないほうが大問題。
私は急いで準備し、領都であり義理の両親、ウェーバー子爵夫妻の住む街を目指した。
ドーリッツ商会から仕入れたお酒はもう飲み干され、仕方なく以前飲んでいた銘柄を仕入れることになった。
お酒を一口飲み、ギャレー様が不機嫌になり怒りを爆発させた。
「なんだこの安酒は!もっと上等なものを用意しろ!明らかに質が劣ってるぞ!!」
「良いものを調達するのは手間も時間もかかります。ウェーバー子爵領ではそのお酒でも上等なものです」
「これで上等なのか?信じられん………」
ドーリッツ商会のお酒に慣れてしまったのか、ギャレー様は以前は喜んで飲んでいた銘柄では満足できないようだった。
それに体調も悪そうだし、もしかしたら体調が悪いから美味しく感じられないのかもしれない。
両方かもしれないけど。
でも私は何も言わない。
言ったところで機嫌を損ねるだけだもの。
「良い酒はまだ手に入らないのか?」
「仕入れに他領まで行っているはずですから、もうしばらく時間がかかると思います」
「……仕方ないか。まあこの不味い酒で我慢してやろう」
珍しく聞き分けがいい。
「と思ったが、やはりこの酒は不味いな。そういえば商人たちを呼んだだろう?金の工面はできたのか?」
「できましたけど、思ったほどではありませんでした」
「所詮商人どもは信用できない奴らだからな。買い叩いて暴利を貪るような奴ばかりだ。だが酒を仕入れるのも商人の仕事か…。まあ、役立つ商人もいるということだな」
一人で納得してしまったギャレー様。
そもそも私との会話なんてどうでもいいのだろう。
言いたいことを言って、私はギャレー様の機嫌を損ねないよう適当に話を合わせればいい。
もうずっとこういった会話と呼べないようなものを繰り返してきた。
「しかし、だ。どうも最近の安酒のせいか体調がいまいちだな。俺に相応しい希少で美味い酒を早く飲みたいものだな。良い酒なくしては健康はあり得ないからな。はっはっは」
ギャレー様にとってはそうなのかもしれない。
このまま体調が悪ければ、最悪死に至るかもしれない。
好きなお酒を飲んで死ねるのであれば幸せだろう。
そのまま死んでくれれば私だって嬉しい。
「そうだ、忘れていた。ミリエ、父上たちからの呼び出しがあったぞ。忘れずに行ってこい」
「……わかりました。いつ伺えばよろしいのでしょうか?」
「今日だ」
「…………わかりました。すぐに出かけます」
信じられない。
いくら領内とはいえ急に行けと言われてもすぐに行くことなんてできない。
今からなら昼過ぎに着くかもしれないけど、馬車の手配なんてしている暇はないし、こうなったら歩いていくしかない。
ギャレー様のために馬車は存在しているけど御者がいないし馬もいない。
私では世話なんてできないし、世話できる人を雇うような余裕なんてないもの。
馬車も売ってもいいかもね。
どうせ馬車ででかけるようなことなんて滅多にないのだから。
………現実逃避している場合ではなくて、とにかく歩いてでも行かないと。
一応代官夫人として最低限の服装はさせられているけど、歩いていくならこんな服なんて邪魔でしかない。
平民の、町娘みたいな格好をしないと歩きにくいし、そんな格好なら義理の両親に責められるに決まっている。
でも約束の日に行けないほうが大問題。
私は急いで準備し、領都であり義理の両親、ウェーバー子爵夫妻の住む街を目指した。
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