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第4話
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夫となったスターグのことを愛したことはなかった。
だって最初から私のことを愛そうとしなかったし、あくまでも私の実家の資金力を求めての結婚だったのは明らかだった。
商会を経営していた親は貴族家との縁を結ぶことで商売上のメリットが得られると考えたようだけど、それは甘い考えだと思った。
でも私は親の説得によりスターグとの結婚を受け入れたのだ。
親に逆らったところで余計なしこりが残るだけ。
それなら最初から親に従ったほうがいい。
そのようにして始まった結婚生活は当然のように虚しいものだった。
表面的には良好のようで、その中身は冷めた関係。
スターグからは改善する意思も感じられなかったし、私は無駄になることが明らかな努力はしなかった。
スターグを変えようとすることもなく、変わってほしいと願うこともなく、スターグが歩み寄る気がないのだから合わせてあげた。
幸か不幸かスターグは問題を起こさなかったから私も表面的には問題の無い妻を演じていた。
問題でも起こしてくれれば離婚の切っ掛けにもなったというのに…。
でも降って湧いたようなチャンスがやってきた。
スターグが私に内緒でマデリーナという女性、しかも既婚者と会っていた。
浮気と断定するには弱すぎる出来事だけど、私に黙って他の女性と密かに会うことは信頼関係を壊す行為でしかない。
しかも私を裏切った罪悪感を抱いていないようだったし、何か隠しているようだったし、無理に平静を装っていたから怪しいと自白しているようなものだった。
女性と会ってから様子が変になったということは、後ろめたいと感じているか私と別れたいと思っているかと考えたけど、後ろめたいと感じるようなスターグでないことはよく理解している。
だから私と別れたがっているに違いなかった。
そこで離婚を切り出してみて確認してみた。
慰謝料で今まで援助した分の返金を求めれば応じるはずがないと考えてのことだったけど、その考えは正しかった。
スターグに離婚したと告げたとき、無理に喜びを隠そうとしていたのはバレバレだった。
その本心が偽りのないスターグの本当の気持ち。
元から冷めた関係だったけど、やはりスターグは私と別れたがっていたのだと確認できたし、私を裏切ったことを隠そうとする人間だったことも確認できた。
これだけ信頼関係を損なえば婚姻関係を続けるほうが無理というもの。
愛も無い冷めた関係。
問題を起こさないという最低限の信頼関係さえ崩壊した。
だからスターグの望むであろう離婚は実現させない。
最初から最後までスターグから都合良くは扱われたくないもの。
最初から終わっていた関係、あるいはスターグの裏切りで終わった関係。
私は悪くない。
悪いのはスターグ。
だから容赦する必要もない。
* * * * * * * * * *
スターグと離婚の話が出てから、スターグは日々弱っていった。
どうにか慰謝料を支払わずに離婚しようと考えたのだと思うけど、そう簡単に実現できるはずがない。
でもそういった行動が私と離婚したいという確固たる意志を表明しているようにしか思えなかった。
謝罪されても離婚したくないと言われても応じる意思はないけど。
でもこのような関係を続けていても虚しいだけ。
だからもう終わらせる。
「離婚してあげてもいいわよ。慰謝料は無しで。でもスターグの有責なのは認めてね」
スターグは驚いたようで目を見開き口も半開きになり間抜け面を晒した。
「……本当だな?」
「本当よ。疑うなら取り消してもいいけど?」
「い、いや、信じるとも。離婚しよう」
やはり私との離婚を切望していたのだろう。
スターグはもう十分に苦しんだようだし、どうせ離婚してしまえば経済的に困窮するはず。
私が直接何かしなくとも制裁が続くようなもの。
むしろ婚姻関係を続けているほうがスターグを経済的に延命させてしまうことにもなる。
だから離婚は私の負けでもないし温情でもない。
「それなら書類にサインして。サインしたらもう取り消せないから。後悔しない?」
「後悔しないために離婚するんだ。サインだな」
事前に用意しておいた書類を持ち出し、スターグにサインさせた。
これで書類を提出すれば婚姻関係は正式に終了する。
妙に清々しい表情のスターグの顔を見ると殴りたくなるけど、私は自分の気持ちを押し留める。
面倒なことを起こすよりも確実に離婚するほうが重要だから。
「書類は私が出しておくわ。それと私は出ていくから。荷物の運び出しで数日かかるかもしれないけど、それくらいは問題ないわよね?」
「ああ。それよりも書類の提出、任せたぞ」
「はいはい」
今になって離婚の意思を覆す気はないし、私を信用していないこともよくわかる。
それにスターグが離婚を望んでいたことも。
結局、離婚という結末を迎えるけど、最初からこうなるべくしてなったのだと思う。
愛もなければ努力もなく、信頼すらもない関係。
スターグにとっては私との結婚は妥協の産物であり、本当はマデリーナと結婚したかったはず。
間違った関係を終わらせられるのだから、私にとってもスターグにとっても良いことだ。
それだけではないけど。
その日のうちに離婚の書類を提出し、翌日には荷物も運びだした。
もうスターグと関わることはないだろう。
私は約束を果たした。
マデリーナの夫との約束を。
だって最初から私のことを愛そうとしなかったし、あくまでも私の実家の資金力を求めての結婚だったのは明らかだった。
商会を経営していた親は貴族家との縁を結ぶことで商売上のメリットが得られると考えたようだけど、それは甘い考えだと思った。
でも私は親の説得によりスターグとの結婚を受け入れたのだ。
親に逆らったところで余計なしこりが残るだけ。
それなら最初から親に従ったほうがいい。
そのようにして始まった結婚生活は当然のように虚しいものだった。
表面的には良好のようで、その中身は冷めた関係。
スターグからは改善する意思も感じられなかったし、私は無駄になることが明らかな努力はしなかった。
スターグを変えようとすることもなく、変わってほしいと願うこともなく、スターグが歩み寄る気がないのだから合わせてあげた。
幸か不幸かスターグは問題を起こさなかったから私も表面的には問題の無い妻を演じていた。
問題でも起こしてくれれば離婚の切っ掛けにもなったというのに…。
でも降って湧いたようなチャンスがやってきた。
スターグが私に内緒でマデリーナという女性、しかも既婚者と会っていた。
浮気と断定するには弱すぎる出来事だけど、私に黙って他の女性と密かに会うことは信頼関係を壊す行為でしかない。
しかも私を裏切った罪悪感を抱いていないようだったし、何か隠しているようだったし、無理に平静を装っていたから怪しいと自白しているようなものだった。
女性と会ってから様子が変になったということは、後ろめたいと感じているか私と別れたいと思っているかと考えたけど、後ろめたいと感じるようなスターグでないことはよく理解している。
だから私と別れたがっているに違いなかった。
そこで離婚を切り出してみて確認してみた。
慰謝料で今まで援助した分の返金を求めれば応じるはずがないと考えてのことだったけど、その考えは正しかった。
スターグに離婚したと告げたとき、無理に喜びを隠そうとしていたのはバレバレだった。
その本心が偽りのないスターグの本当の気持ち。
元から冷めた関係だったけど、やはりスターグは私と別れたがっていたのだと確認できたし、私を裏切ったことを隠そうとする人間だったことも確認できた。
これだけ信頼関係を損なえば婚姻関係を続けるほうが無理というもの。
愛も無い冷めた関係。
問題を起こさないという最低限の信頼関係さえ崩壊した。
だからスターグの望むであろう離婚は実現させない。
最初から最後までスターグから都合良くは扱われたくないもの。
最初から終わっていた関係、あるいはスターグの裏切りで終わった関係。
私は悪くない。
悪いのはスターグ。
だから容赦する必要もない。
* * * * * * * * * *
スターグと離婚の話が出てから、スターグは日々弱っていった。
どうにか慰謝料を支払わずに離婚しようと考えたのだと思うけど、そう簡単に実現できるはずがない。
でもそういった行動が私と離婚したいという確固たる意志を表明しているようにしか思えなかった。
謝罪されても離婚したくないと言われても応じる意思はないけど。
でもこのような関係を続けていても虚しいだけ。
だからもう終わらせる。
「離婚してあげてもいいわよ。慰謝料は無しで。でもスターグの有責なのは認めてね」
スターグは驚いたようで目を見開き口も半開きになり間抜け面を晒した。
「……本当だな?」
「本当よ。疑うなら取り消してもいいけど?」
「い、いや、信じるとも。離婚しよう」
やはり私との離婚を切望していたのだろう。
スターグはもう十分に苦しんだようだし、どうせ離婚してしまえば経済的に困窮するはず。
私が直接何かしなくとも制裁が続くようなもの。
むしろ婚姻関係を続けているほうがスターグを経済的に延命させてしまうことにもなる。
だから離婚は私の負けでもないし温情でもない。
「それなら書類にサインして。サインしたらもう取り消せないから。後悔しない?」
「後悔しないために離婚するんだ。サインだな」
事前に用意しておいた書類を持ち出し、スターグにサインさせた。
これで書類を提出すれば婚姻関係は正式に終了する。
妙に清々しい表情のスターグの顔を見ると殴りたくなるけど、私は自分の気持ちを押し留める。
面倒なことを起こすよりも確実に離婚するほうが重要だから。
「書類は私が出しておくわ。それと私は出ていくから。荷物の運び出しで数日かかるかもしれないけど、それくらいは問題ないわよね?」
「ああ。それよりも書類の提出、任せたぞ」
「はいはい」
今になって離婚の意思を覆す気はないし、私を信用していないこともよくわかる。
それにスターグが離婚を望んでいたことも。
結局、離婚という結末を迎えるけど、最初からこうなるべくしてなったのだと思う。
愛もなければ努力もなく、信頼すらもない関係。
スターグにとっては私との結婚は妥協の産物であり、本当はマデリーナと結婚したかったはず。
間違った関係を終わらせられるのだから、私にとってもスターグにとっても良いことだ。
それだけではないけど。
その日のうちに離婚の書類を提出し、翌日には荷物も運びだした。
もうスターグと関わることはないだろう。
私は約束を果たした。
マデリーナの夫との約束を。
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