上 下
7 / 8

第7話

しおりを挟む
幸せな日々を揺るがす一通の手紙が届いた。
差出人はフォンテイン公爵だった。
親子だけど縁を切られているので結婚式にも呼ばなかったし結婚したことも連絡しなかった。
手紙はハートレー商会を通じて届いたのだから私の現状を知らないのだと思う。

問題は手紙の内容だった。
もう私一人だけの問題ではないのでレドリックにも内容を伝え、どうするか相談する。

「どうも妹の嘘がバレたみたいなの」
「あれからもう随分経つよな?よく今までバレなかったな」
「モルトルーズ殿下も残念な人だから……」
「そうだったな………」

モルトルーズ殿下はともかく、問題はラライアだ。

「嘘がバレてモルトルーズ殿下から婚約破棄されそうになったって。それでラライアが馬鹿でしかないけど、自分で毒を飲んで私に毒を盛られたって嘘を本当にしようとしたみたいなの」
「簡単にバレそうだな」
「実際に簡単にバレたと思うわ。それで後遺症が残って、その治療のために薬が欲しいって。ハートレー商会で薬を取り扱うようになったことを知ってのことでしょうね」
「なるほどな」
「それで、リリエルはどうしたい?」

もう縁を切っているのだから助ける義理はない。
むしろ助けないほうが自業自得だからいいのかもしれない。
でも私はハートレー商会の人間。
レドリックはハートレー商会を継ぐ立場にあって、私はその妻。
何を一番優先すべきかは決まっている。

「薬を高値で売ってあげるのはどう?」
「ははは、いいね」

この機会にハートレー商会の利益に貢献してもらう。
嫌なら買わなければいいし、私たちは適正価格で売るだけ。
その価格にはラライアへの慰謝料請求みたいなものも上乗せされているけど。

* * * * * * * * * *

それから間もなく、また手紙が届いた。
しかも今度の差出人はモルトルーズ殿下だった。

きっと不愉快な内容だと思うけど見なかったことにはできない。

……内容は想像通り不愉快なものだった。
今になって私と復縁したいと言ってきたのだ。
そんな気はないし、私はレドリックと結婚して良かったと思っている。
モルトルーズ殿下と復縁する可能性は天文学的な確率よりも低い。

このような手紙が届いたことをレドリックに告げない訳にはいかなかったけど、さすがレドリック、告げたら告げたで良い案を出してくれた。

「たしか王城には出入り禁止にされただろう?モルトルーズ殿下には王族の発言の重さを守ってもらわないとね」

そう、私はモルトルーズ殿下から王城へ出入り禁止が申し渡されていたのだ。
復縁するならモルトルーズ殿下は自分の発言の責任を取らないということ。
そのような行為を国王陛下が許すとは思えない。
王子という身分を捨て城から出たなら、身分という唯一の魅力すら失ったモルトルーズ殿下と復縁するメリットが皆無になってしまう。
最初から復縁する気が無かったけど。

「何かあったらその手を使うわ。さすがレドリックね」
「リリエルとの幸せを守るためならお安い御用さ」

得意気な顔になっているレドリックを可愛らしいと思ってしまう。
それはともかく、出入り禁止のことも書いてお断りの手紙を書かないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました

紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。 だがそれは過去の話。 今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。 ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。 タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。

くだらない結婚はもう終わりにしましょう

杉本凪咲
恋愛
夫の隣には私ではない女性。 妻である私を除け者にして、彼は違う女性を選んだ。 くだらない結婚に終わりを告げるべく、私は行動を起こす。

出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??

新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。

私は既に結婚していますけど

杉本凪咲
恋愛
パーティー会場で婚約破棄を告げられた私。 彼の隣には、美しい女性が立っていた。 しかし私は困惑を露わにして、淡々と言う。 「私は既に結婚していますけど」

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

両親からも婚約者からも愛されません

ララ
恋愛
妹が生まれたことで、私の生活は一変した。 両親からの愛を妹が独り占めをして、私はすっかり蚊帳の外となった。 そんな生活に終わりを告げるように婚約が決まるが……

処理中です...