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第3話
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アンジェに婚約破棄を告げ、俺が良い婚約者として振る舞う演技も終わらせることができた。
意にそぐわない振る舞いはストレスでしかないが、これももっと大きな計画のためだから仕方ない。
だからリタニーにも不本意ながら好意を抱いているように振る舞う。
「アンジェとは婚約破棄した」
「お疲れ様です、オーレンス様」
リタニーは平民でしかないし、俺の母親くらいの年齢だ。
間違っても好意なんて抱くはずがない。
俺はオンネル男爵家の人間だから俺のほうが偉い。
その辺のことを弁えているのは悪くない。
そもそもこんな面倒なことを企んだのは父上の野心だ。
アラベリー伯爵が後妻を探していることを知り、自分の息のかかったリタニーを後妻に送り込み、アラベリー伯爵を少しずつ毒で弱らせ殺害するはずだった。
少しずつ弱らせるはずが急死してしまったのだから計画が発覚するかと思ったが、それを追及する立場の人間がいなかったことが幸いした。
そういった計画のズレもあったが、俺は予定通りアンジェの婚約者となった。
アラベリー伯爵が以前から婚約する話を進めていたことにしていたが、それは嘘だ。
だが嘘はバレなければ問題ない。
俺はアンジェの婚約者として優しく振る舞ったから怪しまれなかった。
だがもう計画の最終段階になり、アンジェとの婚約が邪魔になった。
アラベリー伯爵家の実権を握ったリタニーと俺が結婚することで、俺がアラベリー伯爵家を乗っ取るのだ。
だからアンジェには婚約破棄した。
心にもないリタニーのことが好きになったという言葉と共に。
「そういえばアンジェはどうしてる?」
「それが…姿が見えません」
俺に婚約破棄されたショックでどこかに隠れたか?
それとも逃げ出した?
どちらにせよ小娘一人では計画の邪魔はできないだろう。
いないならいないでアラベリー伯爵家を乗っ取るだけだ。
邪魔な人間がいなくなったことは幸いだ。
「まあいいだろう」
だが次なる問題が待ち構えている。
俺がこの年増のリタニーと結婚しなくてはならないのだ。
年齢だけならアンジェと婚約したかったが、あれでもアンジェは伯爵家の人間だ。
乗っ取りのためには俺よりも身分が低い人間が好都合であり、平民のリタニーが選ばれるのは必要なことだった。
結婚したら若い愛人でも囲えばいい。
そのくらいの財力はアラベリー伯爵家にはあるからな。
「アンジェがいないならオーレンス様もここに住みますか?」
「…そうするか」
「わかりました。部屋を用意させます」
形だけの婚姻であってもリタニーの裏切りを防ぐには抱いてやったほうがいいのか?
まさかまた毒殺するとアラベリー伯爵を毒殺した手口に気付かれる恐れもある。
思い返せばリタニーが俺を見る目には期待のようなものが見え隠れしていた。
欲を出しているのは察することができた。
毒殺しないとなれば餌を与えて裏切らないようにするしかないか。
…これも俺がアラベリー伯爵家を乗っ取るためだ。
乗っ取ったら愛人に子を産ませて、リタニーとの子としてアラベリー伯爵を継がせればいい。
ここまでは順調だった。
だからこれからもきっと上手くいく。
そう信じている。
意にそぐわない振る舞いはストレスでしかないが、これももっと大きな計画のためだから仕方ない。
だからリタニーにも不本意ながら好意を抱いているように振る舞う。
「アンジェとは婚約破棄した」
「お疲れ様です、オーレンス様」
リタニーは平民でしかないし、俺の母親くらいの年齢だ。
間違っても好意なんて抱くはずがない。
俺はオンネル男爵家の人間だから俺のほうが偉い。
その辺のことを弁えているのは悪くない。
そもそもこんな面倒なことを企んだのは父上の野心だ。
アラベリー伯爵が後妻を探していることを知り、自分の息のかかったリタニーを後妻に送り込み、アラベリー伯爵を少しずつ毒で弱らせ殺害するはずだった。
少しずつ弱らせるはずが急死してしまったのだから計画が発覚するかと思ったが、それを追及する立場の人間がいなかったことが幸いした。
そういった計画のズレもあったが、俺は予定通りアンジェの婚約者となった。
アラベリー伯爵が以前から婚約する話を進めていたことにしていたが、それは嘘だ。
だが嘘はバレなければ問題ない。
俺はアンジェの婚約者として優しく振る舞ったから怪しまれなかった。
だがもう計画の最終段階になり、アンジェとの婚約が邪魔になった。
アラベリー伯爵家の実権を握ったリタニーと俺が結婚することで、俺がアラベリー伯爵家を乗っ取るのだ。
だからアンジェには婚約破棄した。
心にもないリタニーのことが好きになったという言葉と共に。
「そういえばアンジェはどうしてる?」
「それが…姿が見えません」
俺に婚約破棄されたショックでどこかに隠れたか?
それとも逃げ出した?
どちらにせよ小娘一人では計画の邪魔はできないだろう。
いないならいないでアラベリー伯爵家を乗っ取るだけだ。
邪魔な人間がいなくなったことは幸いだ。
「まあいいだろう」
だが次なる問題が待ち構えている。
俺がこの年増のリタニーと結婚しなくてはならないのだ。
年齢だけならアンジェと婚約したかったが、あれでもアンジェは伯爵家の人間だ。
乗っ取りのためには俺よりも身分が低い人間が好都合であり、平民のリタニーが選ばれるのは必要なことだった。
結婚したら若い愛人でも囲えばいい。
そのくらいの財力はアラベリー伯爵家にはあるからな。
「アンジェがいないならオーレンス様もここに住みますか?」
「…そうするか」
「わかりました。部屋を用意させます」
形だけの婚姻であってもリタニーの裏切りを防ぐには抱いてやったほうがいいのか?
まさかまた毒殺するとアラベリー伯爵を毒殺した手口に気付かれる恐れもある。
思い返せばリタニーが俺を見る目には期待のようなものが見え隠れしていた。
欲を出しているのは察することができた。
毒殺しないとなれば餌を与えて裏切らないようにするしかないか。
…これも俺がアラベリー伯爵家を乗っ取るためだ。
乗っ取ったら愛人に子を産ませて、リタニーとの子としてアラベリー伯爵を継がせればいい。
ここまでは順調だった。
だからこれからもきっと上手くいく。
そう信じている。
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