期待するような眼差しを向けられても困ります。貴方に告げるのは婚約破棄ですから。

田太 優

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第10話

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ラセルベール殿下に嵌められた俺に学園での居場所はなくなった。
友人たちは手のひらを返したかのように俺を避けるようになったし、友人ですらない奴らは俺を見下してくる。
令嬢たちは俺のことも汚物のように見てくる。

どうにか挽回できないかと苦心したが無駄だった。
そんな時に学園を退学して領地に戻れと親から連絡があった。

俺は失意の中、学園を去った。

* * * * * * * * * *

領地へ戻った俺を待っていたのは親からの叱責だった。

「この馬鹿が!お前のせいでクレメン子爵家の名誉まで地に落ちてしまったではないか!!」
「申し訳ありません」
「どうしてそのようなことになったのだ?」
「それは……」

動機なんて些細なものだった。
ミレイを困らせ俺の余裕を見せつけたかっただけだ。
そうすればミレイも俺に敬意をもって接するようになるかもしれないと思ったからだ。

そもそもそのように振る舞ってしまったのはミレイとの婚約を親同士が勝手に決めたからだ。

「どうした?言えないのか?」
「ミレイとの婚約が不本意だったからです」
「そうか…。だが自由に相手を決められたとして、お前が適切な相手と婚約できると思うか?」
「適切かどうかは結果が全てです。仮定の話をしても無駄でしょう」

親ですら俺を見下してくる。
俺にはミレイがお似合いだったと言うのか?
その相手に嵌められたんだ。
俺は悪くないし、悪いのはミレイと婚約させた親のほうだろう?

「仮定の話は確かに無駄だな。だがデリック、お前はクレメン子爵家の名誉をこれ以上ないほどに貶めてくれた。その責任は取ってもらうぞ」
「はい」

不本意だが何か言ったところで無駄だろう。
所詮俺もクレメン子爵家の犠牲にされてしまうのだろうな。
親に勝手に婚約者を決められ、その婚約者に嵌められ、まさかのラセルベール殿下にまで嵌められるとはな。
これが力のない子爵家の令息に生まれた俺の悲劇的な運命だ。

「デリックは家から追放する。除籍するからもう二度とクレメンの名を名乗るな」
「はい」

こうなったか。
親も親だがミレイもミレイだ。
俺は人に恵まれなかったようだ。

どうして俺がこんな仕打ちを受けないといけないんだ?
ミレイにしたことなんて可愛いものじゃないか。
それなのにこんな結果になるなんて、みんな俺に恨みでもあるのか?

「以上だ。さっさと出て行け」

* * * * * * * * * *

家から追い出されただけでなく親子の縁まで切られてしまった。
クレメン子爵家から除籍されたのであれば俺の身分はもう貴族ではなくなったということ。

「どうすればいいんだよ……」

無い無い尽くしの現状をどうやって乗り切ればいいのかわからない。
友人たちを頼ったところで身分を失った俺は相手にすらされないだろう。
所詮偽りの友諠でしかなかったということだ。

学園での友は将来役に立つ?
何の冗談だ。
所詮利用価値があるかないかだけじゃないか。

それよりも、だ。
この先どうやって生きていけばいいんだ?
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