期待するような眼差しを向けられても困ります。貴方に告げるのは婚約破棄ですから。

田太 優

文字の大きさ
上 下
10 / 11

第10話

しおりを挟む
ラセルベール殿下に嵌められた俺に学園での居場所はなくなった。
友人たちは手のひらを返したかのように俺を避けるようになったし、友人ですらない奴らは俺を見下してくる。
令嬢たちは俺のことも汚物のように見てくる。

どうにか挽回できないかと苦心したが無駄だった。
そんな時に学園を退学して領地に戻れと親から連絡があった。

俺は失意の中、学園を去った。

* * * * * * * * * *

領地へ戻った俺を待っていたのは親からの叱責だった。

「この馬鹿が!お前のせいでクレメン子爵家の名誉まで地に落ちてしまったではないか!!」
「申し訳ありません」
「どうしてそのようなことになったのだ?」
「それは……」

動機なんて些細なものだった。
ミレイを困らせ俺の余裕を見せつけたかっただけだ。
そうすればミレイも俺に敬意をもって接するようになるかもしれないと思ったからだ。

そもそもそのように振る舞ってしまったのはミレイとの婚約を親同士が勝手に決めたからだ。

「どうした?言えないのか?」
「ミレイとの婚約が不本意だったからです」
「そうか…。だが自由に相手を決められたとして、お前が適切な相手と婚約できると思うか?」
「適切かどうかは結果が全てです。仮定の話をしても無駄でしょう」

親ですら俺を見下してくる。
俺にはミレイがお似合いだったと言うのか?
その相手に嵌められたんだ。
俺は悪くないし、悪いのはミレイと婚約させた親のほうだろう?

「仮定の話は確かに無駄だな。だがデリック、お前はクレメン子爵家の名誉をこれ以上ないほどに貶めてくれた。その責任は取ってもらうぞ」
「はい」

不本意だが何か言ったところで無駄だろう。
所詮俺もクレメン子爵家の犠牲にされてしまうのだろうな。
親に勝手に婚約者を決められ、その婚約者に嵌められ、まさかのラセルベール殿下にまで嵌められるとはな。
これが力のない子爵家の令息に生まれた俺の悲劇的な運命だ。

「デリックは家から追放する。除籍するからもう二度とクレメンの名を名乗るな」
「はい」

こうなったか。
親も親だがミレイもミレイだ。
俺は人に恵まれなかったようだ。

どうして俺がこんな仕打ちを受けないといけないんだ?
ミレイにしたことなんて可愛いものじゃないか。
それなのにこんな結果になるなんて、みんな俺に恨みでもあるのか?

「以上だ。さっさと出て行け」

* * * * * * * * * *

家から追い出されただけでなく親子の縁まで切られてしまった。
クレメン子爵家から除籍されたのであれば俺の身分はもう貴族ではなくなったということ。

「どうすればいいんだよ……」

無い無い尽くしの現状をどうやって乗り切ればいいのかわからない。
友人たちを頼ったところで身分を失った俺は相手にすらされないだろう。
所詮偽りの友諠でしかなかったということだ。

学園での友は将来役に立つ?
何の冗談だ。
所詮利用価値があるかないかだけじゃないか。

それよりも、だ。
この先どうやって生きていけばいいんだ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

【完結】まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?

横居花琉
恋愛
長い間婚約しているのに結婚の話が進まないことに悩むフローラ。 婚約者のケインに相談を持ち掛けても消極的な返事だった。 しかし、ある時からケインの行動が変わったように感じられた。 ついに結婚に乗り気になったのかと期待したが、期待は裏切られた。 それも妹のリリーによってだった。

婚約者は迷いの森に私を捨てました

天宮有
恋愛
侯爵令息のダウロスは、婚約者の私ルカを迷いの森に同行させる。 ダウロスは「ミテラを好きになったから、お前が邪魔だ」と言い森から去っていた。 迷いの森から出られない私の元に、公爵令息のリオンが現れ助けてくれる。 力になると言ってくれたから――ダウロスを、必ず後悔させてみせます。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。

青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。 婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。 王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。

【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 責任感の強いヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

処理中です...