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第5話
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デリック様が浮気したという噂が広まっていることは確認できたし、噂のことを調べようとして無駄だったことまで確認できた。
友人ネットワークを通じて調べた結果だけど、この程度の情報なら難しくはなかった。
次はこの状態をデリック様がどう考えているのか確認しないとね。
「デリック様、浮気しているという噂を耳にしましたけど本当ですか?」
「そんなはずないだろう?ミレイの邪推というものだ。噂ごときに踊らされるなんてみっともないぞ」
自分のことは棚に上げるのね。
私の噂はどうでもよくて、自分の噂は調べようとしたことを私は知っている。
デリック様は私が知っているなんて思わないだろう。
どう言い訳するのか楽しくなってきたわ。
「そうですか。デリック様も大変ですね」
「ああそうだ。大変な俺を笑いにでも来たのか?」
「いえ、そのようなことはありません。ただ噂の内容が事実なのか確認したかっただけです」
「…浮気を疑ったというのか?そんなに俺の信用がないのか?」
ええ、もちろん。
だってデリック様は私に嘘をついたから。
でもまだ茶番を続けたいので適当な言い分で会話を続ける。
「事実を確認しただけですよ。本人の口からはっきり否定してほしいと思うのは当然だと思いますけど?」
「……まあ言い分には納得できる。だが俺は大変な状況なんだ。少しくらい助けてくれてもいいとは思わないのか?」
それをデリック様が言うのね。
「あら、面白い冗談ですね。以前に私の噂が広まった際、デリック様は調べたりするなと言いましたよね?」
「………ああ、言ったな」
「それならどうして今回は動いたのですか?どうして私のときには余計なことをするなと言い、ご自身のときには調べて回ったのですか?」
「ええい、うるさいな。俺は色々大変なんだ。邪魔しないでくれ」
都合の悪い追及をごまかすために無理矢理話を打ち切ろうとする。
これがデリック様の本性なのだろう。
自分の非を認めることなんてできず、適切な言い訳ができる訳でもなく、感情的に振る舞って話を終わらせようとする。
もう信用もないけど人としての評価も最低になったわ。
「邪魔だと思うのなら、いっそのこと婚約破棄してください」
「…………ミレイ、お前は本気で婚約破棄を望んでいるのか?」
「どうでしょうね?でもデリック様が浮気しているという噂ですし、信用していいのか疑問を抱いていることは事実です」
「だから俺は浮気なんてしていない」
「それなら噂は嘘だと言うのですか?嘘ならどうしてこんなにも広まっているのでしょうね?事実だからではありませんか?」
「そんなに俺のことが信用できないのか!」
「はい」
「……………」
本当のことを言って黙ってしまうなんて、デリック様は問題から逃げるのね。
デリック様のほうから私に攻撃してきたというのに、自分がやり返されるなんて思わなかったの?
婚約破棄も視野に入れて覚悟してのことではなかったの?
「お互いに冷静になろう。婚約破棄なんて軽々しく口にするものではないんだ」
「そうですか。ではデリック様が適切に判断できることを願っています」
逃げたいなら逃げればいい。
この場は退いてあげるけど、これが終わりではないもの。
この程度のことで私は許したりはしないから。
友人ネットワークを通じて調べた結果だけど、この程度の情報なら難しくはなかった。
次はこの状態をデリック様がどう考えているのか確認しないとね。
「デリック様、浮気しているという噂を耳にしましたけど本当ですか?」
「そんなはずないだろう?ミレイの邪推というものだ。噂ごときに踊らされるなんてみっともないぞ」
自分のことは棚に上げるのね。
私の噂はどうでもよくて、自分の噂は調べようとしたことを私は知っている。
デリック様は私が知っているなんて思わないだろう。
どう言い訳するのか楽しくなってきたわ。
「そうですか。デリック様も大変ですね」
「ああそうだ。大変な俺を笑いにでも来たのか?」
「いえ、そのようなことはありません。ただ噂の内容が事実なのか確認したかっただけです」
「…浮気を疑ったというのか?そんなに俺の信用がないのか?」
ええ、もちろん。
だってデリック様は私に嘘をついたから。
でもまだ茶番を続けたいので適当な言い分で会話を続ける。
「事実を確認しただけですよ。本人の口からはっきり否定してほしいと思うのは当然だと思いますけど?」
「……まあ言い分には納得できる。だが俺は大変な状況なんだ。少しくらい助けてくれてもいいとは思わないのか?」
それをデリック様が言うのね。
「あら、面白い冗談ですね。以前に私の噂が広まった際、デリック様は調べたりするなと言いましたよね?」
「………ああ、言ったな」
「それならどうして今回は動いたのですか?どうして私のときには余計なことをするなと言い、ご自身のときには調べて回ったのですか?」
「ええい、うるさいな。俺は色々大変なんだ。邪魔しないでくれ」
都合の悪い追及をごまかすために無理矢理話を打ち切ろうとする。
これがデリック様の本性なのだろう。
自分の非を認めることなんてできず、適切な言い訳ができる訳でもなく、感情的に振る舞って話を終わらせようとする。
もう信用もないけど人としての評価も最低になったわ。
「邪魔だと思うのなら、いっそのこと婚約破棄してください」
「…………ミレイ、お前は本気で婚約破棄を望んでいるのか?」
「どうでしょうね?でもデリック様が浮気しているという噂ですし、信用していいのか疑問を抱いていることは事実です」
「だから俺は浮気なんてしていない」
「それなら噂は嘘だと言うのですか?嘘ならどうしてこんなにも広まっているのでしょうね?事実だからではありませんか?」
「そんなに俺のことが信用できないのか!」
「はい」
「……………」
本当のことを言って黙ってしまうなんて、デリック様は問題から逃げるのね。
デリック様のほうから私に攻撃してきたというのに、自分がやり返されるなんて思わなかったの?
婚約破棄も視野に入れて覚悟してのことではなかったの?
「お互いに冷静になろう。婚約破棄なんて軽々しく口にするものではないんだ」
「そうですか。ではデリック様が適切に判断できることを願っています」
逃げたいなら逃げればいい。
この場は退いてあげるけど、これが終わりではないもの。
この程度のことで私は許したりはしないから。
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