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第11話

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ジャスパー様が私に好意を抱いているなら嬉しいけど、そのために他の貴族を敵にするようなことはしてほしくない。
だってジャスパー様はペリノー子爵家のご令息。
下手な相手を敵にすると実家の不利益になり兼ねないのだから。

ジャスパー様のことだから相手を選んでいるはずだし、ドローネと呼ばれた令嬢の家もそこまで力があるようには思えない。
少なくとも学園に通う貴族の子女で家の爵位が高い生徒はそれなりの振る舞いをしているように思える。
平民相手に好き放題するのは男爵家や子爵家の子女が多い。
上位貴族相手だとへりくだらないといけないし、その分を平民に当たり散らすことでストレスを解消しているのかもしれない。

…そういった目に余る行為をする人は少ないはず。
でも行為が行為なので目につきやすいだけだと思う。

それはともかく、問題はドローネを敵にしてジャスパー様が迷惑を被らないか。
私が考えてもわからないし、ジャスパー様に訊いてみるしかない。

「ところでジャスパー様、あのように他の貴族の令嬢を敵にするようなことをして大丈夫なのですか?」
「ドローネなら大丈夫だよ。男爵家だし。それに恥ずかしい振る舞いをしているから、咎められるとすれば僕ではなくてドローネのほうだし」
「それなら良いのですが…」
「心配させてごめん。でも本当に大丈夫だから。リザ嬢は気にしないで」
「はい」

ジャスパー様の優しさが嬉しいけど、本当に大丈夫なのだろうか?
貴族同士のことは私ではわからないし、ジャスパー様を信じるしかないのだけれども。

そう考えてることを察したのか、ジャスパー様が言葉を続ける。

「と言っても気になるよね。幸いなことに爵位の高い貴族家なら子女の教育もしっかりしているし、多くは問題ないよ。全員が全員という訳ではないけど」
「はい」
「そういった人たちに泣きつくにしてもドローネの伝手だと難しいだろうね。親に泣きついたところで学園での些細な問題を大事にすれば恥をかくだけだし。ドローネが騒いだところでどうにもならないよ」
「それなら安心ですね」

良かった、ジャスパー様の迷惑にならなくて。

でもジャスパー様の表情が陰る。

「ただなぁ、ドローネが諦めてくれればいいけど、しつこそうだからなぁ……」
「そうですね……」

大丈夫と言ってくれたのは私を安心させるため。
諦めなさそうというのが本音だろう。

ドローネが諦めないでまた何かしてくると思うけど、私はそれを悪いことだとは思えない。
何かすればするほどドローネはジャスパー様に嫌われるだろう。
今も十分に嫌われているようだけど、念には念を入れないと。

ジャスパー様に近づく女性で問題があるような人なら排除しないと。

私はこんなにも浅ましい女だ。
でもドローネだって私が邪魔だから排除しようとしたのだから、お互い様よね。
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