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第8話
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ウルーナが犯人だったのね……。
ウルーナのことだからミハイ殿下を奪うチャンスだと思ってのことだろう。
別に奪ってくれるならそれで構わないけど。
「それでミハイ殿下はどう考えているのですか?」
「俺はウルーナのことを好きではないぞ」
これもミハイ殿下の冗談だとでもいうの?
空気を読まずに不適切な発言をするのは良くない。
もしもっと重要な場面で失態を犯せば取り返しのつかない事態になってしまうかもしれない。
王となったミハイ殿下が他国の使者に失言したら、最悪戦争を引き起こしてしまうかもしれない。
今はまだもしもの話だけど、人はそう簡単には変わらないのだから、きっと現実のものになってしまうだろう。
ミハイ殿下のせいで国が危うくなるのは困る。
あの国王陛下の子なのに、こうも残念に育ってしまうなんて……。
「そうではなくて、噂を流した責任をどう取らせるのかと訊いているのです」
「それは…ベルネスク公爵と相談したほうがいいのではないか?」
「そうするとしても、まずはミハイ殿下の考えを知りたいのです」
「……噂を流したくらいで責任を問えるのか?」
ミハイ殿下には未来を予想する力が欠けている。
あるいは現状を認識する力のほうかもしれないし、両方かもしれない。
「なるほど、それがミハイ殿下の考えなのですね。私に操られているという噂を放置することは王太子として不適格だと認めるようなものですよ。それでいいのですか?」
「良いはずがない」
「それなら適切に犯人に罰を与えてください」
「だが…ウルーナはイリアナの妹ではないか」
「そこはお構いなく。罪には罰を与えなくてはなりません。公平さを軽んじるようでは誰も法を守らなくなりますよ。それでいいのですか?」
「だが……」
とにかく決断できない。
でも…もしかしたら全てはウルーナへの愛が言動や判断力を狂わせているのかもしれない。
ウルーナがミハイ殿下を奪おうと手を回し、ミハイ殿下がその影響を受けた可能性も考えられる。
「やはりミハイ殿下はウルーナのことが好きだったのですね。甘い処分にしようと考えるのも理解できます」
「だからウルーナのことは好きではない!あれは冗談で言っただけだ!」
ミハイ殿下の反応からは嘘ではないように思える。
そうなると単純にミハイ殿下の判断力が足りないから適切な選択ができないのだろう。
ミハイ殿下とのくだらないやり取りにも飽きてきた。
ミハイ殿下に任せていてはウルーナへの処分も期待できないし、そもそももう十分にチャンスを与え、ミハイ殿下はそれを失した。
もう十分だろう。
「わかりました。後は私に任せてください」
「ああ。でもいいのか?」
そういう発言を信用していないと取られる言動がミハイ殿下の悪いところなのに。
「任せてくださいと言ったのですよ?」
「…わかりました」
言葉よりも不機嫌さを表現したほうがミハイ殿下には伝わる。
言葉で伝わらないようでは人の上に立つべきではない。
ウルーナのことだからミハイ殿下を奪うチャンスだと思ってのことだろう。
別に奪ってくれるならそれで構わないけど。
「それでミハイ殿下はどう考えているのですか?」
「俺はウルーナのことを好きではないぞ」
これもミハイ殿下の冗談だとでもいうの?
空気を読まずに不適切な発言をするのは良くない。
もしもっと重要な場面で失態を犯せば取り返しのつかない事態になってしまうかもしれない。
王となったミハイ殿下が他国の使者に失言したら、最悪戦争を引き起こしてしまうかもしれない。
今はまだもしもの話だけど、人はそう簡単には変わらないのだから、きっと現実のものになってしまうだろう。
ミハイ殿下のせいで国が危うくなるのは困る。
あの国王陛下の子なのに、こうも残念に育ってしまうなんて……。
「そうではなくて、噂を流した責任をどう取らせるのかと訊いているのです」
「それは…ベルネスク公爵と相談したほうがいいのではないか?」
「そうするとしても、まずはミハイ殿下の考えを知りたいのです」
「……噂を流したくらいで責任を問えるのか?」
ミハイ殿下には未来を予想する力が欠けている。
あるいは現状を認識する力のほうかもしれないし、両方かもしれない。
「なるほど、それがミハイ殿下の考えなのですね。私に操られているという噂を放置することは王太子として不適格だと認めるようなものですよ。それでいいのですか?」
「良いはずがない」
「それなら適切に犯人に罰を与えてください」
「だが…ウルーナはイリアナの妹ではないか」
「そこはお構いなく。罪には罰を与えなくてはなりません。公平さを軽んじるようでは誰も法を守らなくなりますよ。それでいいのですか?」
「だが……」
とにかく決断できない。
でも…もしかしたら全てはウルーナへの愛が言動や判断力を狂わせているのかもしれない。
ウルーナがミハイ殿下を奪おうと手を回し、ミハイ殿下がその影響を受けた可能性も考えられる。
「やはりミハイ殿下はウルーナのことが好きだったのですね。甘い処分にしようと考えるのも理解できます」
「だからウルーナのことは好きではない!あれは冗談で言っただけだ!」
ミハイ殿下の反応からは嘘ではないように思える。
そうなると単純にミハイ殿下の判断力が足りないから適切な選択ができないのだろう。
ミハイ殿下とのくだらないやり取りにも飽きてきた。
ミハイ殿下に任せていてはウルーナへの処分も期待できないし、そもそももう十分にチャンスを与え、ミハイ殿下はそれを失した。
もう十分だろう。
「わかりました。後は私に任せてください」
「ああ。でもいいのか?」
そういう発言を信用していないと取られる言動がミハイ殿下の悪いところなのに。
「任せてくださいと言ったのですよ?」
「…わかりました」
言葉よりも不機嫌さを表現したほうがミハイ殿下には伝わる。
言葉で伝わらないようでは人の上に立つべきではない。
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