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第7話

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バリート伯爵との話し合いを終え帰宅した私を待ち構えていたのは、不機嫌なライール様だった。

「どこへ行ってたんだ?浮気でもしていたか?」
「そのようなことはしていません。浮気しているのはライール様のほうでしょう?」
「そんなことをするか!侮辱するのか!!」

これはチャンスだと思い、挑発するように鼻で笑ってあげたら効果はてきめんだった。
ライール様がこんなに怒りやすかったなんて知らなかった。
冷静な対処ができないなら感情に任せて離婚を言い出すかもしれない。
そうなれば願ったり叶ったり。

私にはバリート伯爵との約束があるから私から離婚することはできない。
でもライール様から離婚すると言ってくれれば離婚できる。
慰謝料と口止め料込みで莫大なお金が支払われることになっているのだから、もう離婚しても問題ない。
ウォルティの親権だって私のものになるし。
まさかバリート伯爵と約束を交わしたその日のうちにチャンスに恵まれるとは思ってもみなかった幸運。

「セレステアにはずっと不満を抱いてきた!俺がどれだけ我慢を重ねてきたのか理解できないだろう!」
「私もライール様には不満しか抱いていません。同じ想いだったのですね」
「ふざけるな!あまりにも酷いようなら離婚してやってもいいんだぞ!」
「離婚するなら応じますよ。それでどうします?言葉で脅すだけですか?」

私の心中も知らずにライール様は良い流れを作り出してくれた。
ならば私は流れを自分の望むものへと引き寄せる。
なかなか離婚すると断言しない優柔不断なライール様のために私は優しく挑発してあげた。

「もう我慢できない!セレステア、お前とは離婚する!」

ああ、待ち望んでいた言葉をやっと言ってくれた。
今この瞬間だけはライール様のことを見直してあげたい。
でもまだ言っただけなので、後で発言を無かったことにされてしまうかもしれない。

「わかりました。では離婚することを文書にしてサインもしましょう。お互いに証拠となるものがあったほうがいいですよね?」
「もちろんだ。さっさと準備しよう」

使用人に命じて紙を用意させ、ライール様が私に離婚を要求する内容にした。
ただ離婚に応じるだけではなく、ライール様が私に離婚を要求したことが書かれている。
それがないとライール様が言い出したことを証明できない。

同じものを2つ用意し、それぞれにサインをした。
ライール様も同様にサインした。

「これで離婚は決定ですね」
「ああ。後で撤回しても応じないからな。それは理解しておけ」
「大丈夫ですよ、撤回なんてしませんから。準備に数日ほど時間をいただけますか?」
「それくらいならいいだろう。三日だ。それ以上は許さんからな」
「わかりました」

三日あれば荷物をまとめて出て行くには十分。
どうせあまり価値のないものばかりだから本当に必要な物なんてわずかだろう。
大切な書類、そしてウォルティ。
後はお金次第でどうにでもなるものばかり。
ライール様から頂いたアクセサリー類なんて全部要らないわ。

* * * * * * * * * *

三日どころか一日で準備して私は家を出た。
もちろんウォルティを連れて。
私はもう自由の身なのだ。

ウォルティは私が責任をもって立派に育てる。
間違ってもライール様のようにならないように。
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