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第6話

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ライール様の浮気の件で義理の親であるバリート伯爵と話し合うことになった。
バリート伯爵は話し合う必要はないと考えたのか話し合いに否定的だったけど、私が事実を公表すると言ったら素直に話し合いに応じてくれた。
余程事実を公表されたくないのかも。
話し合いの前に良いことを知ったわ。

話し合いの場だけど、私は歓迎されていないことが良くわかる。
敵でも見るかのように睨むのだから私は敵なのかもしれない。
それならそれでいいけど。

「お時間を取っていただきありがとうございます。さっそくですがライール様の浮気のことですが――」
「よくも自分のことを棚に上げてライールのことを悪し様に言えたな」
「おっしゃる意味がわからないのですが…」
「惚けるのか?浮気していたのはセレステアが先だろう?それに不義の子まで作ってしまうなんて……」

急に意味不明なことを言われても理解に苦しむ。
浮気していたのはライール様のほうだし、ウォルティはライール様の子なのに。

…もしかしてライール様が自分に都合のいい内容をでっち上げて伝えていたのかもしれない。
でもそうなら私が信用されないのは当然だし、敵のように睨まれても納得できる。

「それは事実ではありません。ですが信用できないのであればそれはそれで構いません」
「開き直ったか。さすがの悪女っぷりだな」

いちいち反応していたら話が進まないので無視する。
そういった態度を取ったこと、後悔させてあげるから。

「それよりも本題です。ライール様が浮気したことで離婚したく思いますが、どうでしょうか?」
「離婚したいなら勝手にすればいい。だが慰謝料は支払わんぞ」
「そうですか。それなら裁判を起こすしかありませんね。私には証拠もありますし、まず負けないと思います」
「…証拠だって捏造だろう?」
「そうお考えになるなら構いません。事実を明らかにするだけです。このような事実が明らかになったらバリート伯爵家の名誉も大変なことになりそうですね」
「……脅す気か?」
「別に。ただ私は真実を明らかにしたいだけです。私には非がないのですから」

堂々とした私の態度から嘘ではないと感じ取ったのか、バリート伯爵は考え込んだ。

「………いくら欲しいんだ?」
「いくらでも。バリート伯爵家の誠意を見せてください。誠意によって私は口を閉ざすでしょう」
「くっ、だが金を払えば事実は公表しないのだろう?それでも離婚してしまえば当家の名誉の問題に関わる。離婚しないことも約束してほしい」
「構いませんよ。その分お金を払っていただければ。ライール様は私の生活費も最低限しか出してくれませんから期待しています」
「いいだろう。だが一つだけ条件を付け加えさせてくれ。セレステアからは離婚できないと。何があっても離婚できないとなれば浮気されようが離婚できないことになるからな」

…この期に及んでまだ私が浮気するような人間だと思われているのね。
浮気しているのはライール様のほうで、私はそんなことしていないのに。
バリート伯爵の言葉は侮辱でしかないけど、ウォルティのためにも私は平然と受け流す。

「わかりました。私からは離婚しないと約束します。ですがライール様やバリート伯爵から言い出されればその限りではないことを忘れないでください」
「忘れないとも」

離婚できなくてもウォルティを育てるために十分なお金があればいい。
ライール様は邪魔しなければ浮気相手に夢中でも構わない。
むしろ浮気相手に夢中になってくれれば私に離婚すると言い出すだろう。

それともう一つだけ重要なことがある。

「もし離婚するとなったらウォルティの親権はどうなります?」
「……本当にライールの子なのか疑わしい。ライールだって同じように考えているから子には無関心なのだろう?それなら親権は求めない」
「わかりました」

もし離婚しても私がウォルティを引き取れる。
それは大切なことだった。
離婚してウォルティだけバリート伯爵家に育てられることになれば虐待されるに決まっている。

これで必要な同意は得られた。

「有意義な話し合いになって良かったです」
「強欲だな。セレステアとライールの婚約を認めたことを後悔しているよ」
「私もライール様との婚約を後悔していますよ」

誠意としていくら払うのかは書類にまとめてサインもしてもらった。
これで何かあれば裁判を起こして私が勝てる。
必要なものが手に入って私は上機嫌。
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