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第5話
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再びユージェが訪ねてきたので、前回と同様にガゼボでお茶をし、内密の話があるとユージェが言ったことを機に使用人を下がらせた。
「結果が出たわ。ライール様の浮気は確定ね。相手の素性もわかったの」
「そうだったのね。ありがとう、手間をかけさせてしまったわね」
「いいのよ、セレステアのためですもの」
ユージェがそう言ってくれたことは幸いだった。
いくら友人とはいえ夫の浮気調査を代理で依頼するのだから手間をかけさせてしまった。
でもそれ以上の収穫はあった。
ユージェは封筒を差し出し、中身を確認したら浮気相手の素性や浮気の日時や場所の記録まであった。
「こんなに詳しくわかってしまうものなのね。驚いたわ」
「隠すつもりがなかったみたいですって。調査員も簡単だと言っていたわ」
ライール様はまさか私が調べるとは思わなかったのだろう。
油断してくれたなら幸いだった。
「これからどうするの?」
「問題はそこよね…」
浮気を理由に離婚はできるはず。
ウォルティのことに無関心なライール様は親権も私のものにするだろう。
問題はライール様よりも義理の両親。
まずはそちらから説得したほうがスムーズに話が進むかもしれない。
「義理の両親に話を持ち掛けて離婚に協力してもらうわ。証拠もあることだし」
「そうね、それがいいわね。ところでライール様への制裁はしなくていいの?ずっと昔から酷い態度だったのでしょう?」
「そうだけど……」
愛することはないと告げられた悲惨な顔合わせ。
その後関係を改善すべく努力した私にライール様はいっそう冷たい態度を取るようになり、努力は無駄に終わってしまった。
不本意な結婚、そして義務としての子づくり。
……このまま何もしないのでは私の気持ちが晴れることはない。
でも今更ライール様に心を入れ替えてほしくはない。
ウォルティを育てるために不自由しないお金があればライール様なんて邪魔なだけ。
「決めたわ。できるだけ多くのお金を搾り取るから。ライール様は払わないだろうから義理の両親に支払ってもらうわ。拒否するようなら浮気の事実を公表するつもり。スキャンダルがいいか選ばせてあげる」
「いい考えね。がんばらないとね!」
「ええ」
これはウォルティのためにも必要なことだから容赦しない。
少しでも多くのお金が得られれば、その分だけウォルティのためになるのだから。
「それで浮気相手はどうするの?」
「…正直なところ、どうでもいいわ」
「そう……。セレステアがそれなら別にいいけど…」
「別に許すとかじゃないの。相手にするのが面倒なだけなのよ。どうせライール様と結婚するだろうし、その時になってお金が無ければ面白いことになりそうだし」
「それもありね」
一番の恨みはライール様にあって、かなり長い間苦しめられてきた。
それに比べれば浮気なんて些細な問題。
むしろ浮気してくれたから私に有利に離婚話を進められそうだから手心を加えてあげるのもいいと思う。
手心を加えるというよりも面倒だから放っておきたい気持ちのほうが強いかもしれないけど。
「ありがとう、ユージェ。お陰様でいろいろ上手くいきそうだわ」
「どういたしまして」
それからの私たちは明るい話題に切り替えた。
不安が減り未来への希望が見えた今、やっと笑えるようになった。
「結果が出たわ。ライール様の浮気は確定ね。相手の素性もわかったの」
「そうだったのね。ありがとう、手間をかけさせてしまったわね」
「いいのよ、セレステアのためですもの」
ユージェがそう言ってくれたことは幸いだった。
いくら友人とはいえ夫の浮気調査を代理で依頼するのだから手間をかけさせてしまった。
でもそれ以上の収穫はあった。
ユージェは封筒を差し出し、中身を確認したら浮気相手の素性や浮気の日時や場所の記録まであった。
「こんなに詳しくわかってしまうものなのね。驚いたわ」
「隠すつもりがなかったみたいですって。調査員も簡単だと言っていたわ」
ライール様はまさか私が調べるとは思わなかったのだろう。
油断してくれたなら幸いだった。
「これからどうするの?」
「問題はそこよね…」
浮気を理由に離婚はできるはず。
ウォルティのことに無関心なライール様は親権も私のものにするだろう。
問題はライール様よりも義理の両親。
まずはそちらから説得したほうがスムーズに話が進むかもしれない。
「義理の両親に話を持ち掛けて離婚に協力してもらうわ。証拠もあることだし」
「そうね、それがいいわね。ところでライール様への制裁はしなくていいの?ずっと昔から酷い態度だったのでしょう?」
「そうだけど……」
愛することはないと告げられた悲惨な顔合わせ。
その後関係を改善すべく努力した私にライール様はいっそう冷たい態度を取るようになり、努力は無駄に終わってしまった。
不本意な結婚、そして義務としての子づくり。
……このまま何もしないのでは私の気持ちが晴れることはない。
でも今更ライール様に心を入れ替えてほしくはない。
ウォルティを育てるために不自由しないお金があればライール様なんて邪魔なだけ。
「決めたわ。できるだけ多くのお金を搾り取るから。ライール様は払わないだろうから義理の両親に支払ってもらうわ。拒否するようなら浮気の事実を公表するつもり。スキャンダルがいいか選ばせてあげる」
「いい考えね。がんばらないとね!」
「ええ」
これはウォルティのためにも必要なことだから容赦しない。
少しでも多くのお金が得られれば、その分だけウォルティのためになるのだから。
「それで浮気相手はどうするの?」
「…正直なところ、どうでもいいわ」
「そう……。セレステアがそれなら別にいいけど…」
「別に許すとかじゃないの。相手にするのが面倒なだけなのよ。どうせライール様と結婚するだろうし、その時になってお金が無ければ面白いことになりそうだし」
「それもありね」
一番の恨みはライール様にあって、かなり長い間苦しめられてきた。
それに比べれば浮気なんて些細な問題。
むしろ浮気してくれたから私に有利に離婚話を進められそうだから手心を加えてあげるのもいいと思う。
手心を加えるというよりも面倒だから放っておきたい気持ちのほうが強いかもしれないけど。
「ありがとう、ユージェ。お陰様でいろいろ上手くいきそうだわ」
「どういたしまして」
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不安が減り未来への希望が見えた今、やっと笑えるようになった。
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