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第8話
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家に帰ればすっかり変わってしまったマーシャが暴言と共に出迎えてくれる。
「臭いわよ、ルコム」
わざわざ鼻をつまんで言わなくたっていいだろう?
俺が好き好んで臭くなっている訳じゃないんだ。
必死に働いている俺への感謝が無いのは酷い。
「仕方ないだろう。そういった仕事なんだから」
「そのくせ給料は全然じゃない。魔法使いが稼げるって話、嘘だったのね」
「嘘ではない。今の仕事が安すぎるだけだ」
「なら仕事を辞めて他の仕事をしてよ」
「俺の訴えが認められないから等級が低いままだ。このままではまともな仕事なんて無理だ」
マーシャは俺のことを何も理解していない。
金の切れ目が縁の切れ目とでもいうのか、前の仕事を失い金に困るようになった俺への態度が豹変してしまった。
「…嘘つき」
「仕方ないだろう。それよりも実家から援助は受けられないのか?」
「お父様もお母様も酷いのよ。もう私にはお金は使えないって。私も騙されたの。あんなの親なんかじゃない」
「そうか……」
俺だってマーシャに騙されたよ。
実家が裕福だ?
そんなの援助を受けられないなら意味がないじゃないか。
問題ばかり起こしていたリナリアを追い出したから親に感謝されていたんじゃないのか?
援助しないということはマーシャに問題があったからなのか?
もしかしてマーシャの言ったことは全部嘘だったのか!?
「どうしてこんなことになったの?ルコムと一緒になったのが間違いだったの?ねえ、どうして私を幸せにしてくれないのよ!」
「そんなこと俺に言ってもどうにもならないだろう?」
「わかった、ルコムにはもう期待なんかしないから。だから離婚して。お金を稼げないなら離婚してよ!」
離婚すると俺の評価がまた下がってしまう。
どうにかマーシャに考え直してもらわないと。
「どうにかするから考え直してくれ」
「本当?嘘だったらただじゃおかないからね」
「あ、ああ」
困ったことになってしまった。
どうにかできる当てはないのだから、マーシャが怒って離婚される未来しか想像できない。
俺を見るマーシャの目は不信感を訴えている。
俺の言葉が信用されないことが悲しかった。
かつて俺を支えてくれたマーシャは幻のようなものだったというのか?
リナリアの悪事を教えてくれたマーシャには感謝している。
でももうそれも過去の事と割り切ったほうがいいだろう。
「そうか、そうだったんだ」
「どうしたの?」
気付いてしまった。
離婚されずに乗り切る方法であり、煩わしいマーシャから解放される方法を。
俺はマーシャに対し魅了魔法をかけた。
使用がバレたら問題になるが、今の俺はもう問題が起きようが最下級の扱いなのだから別に構わない。
マーシャが従順になるならそれでいい。
「あぁん、ルコム!大好き!抱いて!」
「は…はははは…………」
それまでの態度が信じられないくらい、冗談みたいに効果があった。
あまりの豹変ぶりに思わず乾いた笑いが出てしまった。
これでマーシャは文句を言わないし、離婚されなければこれ以上俺の評価が下がることもない。
最初からこうしておけば良かったんだ。
魅了魔法が禁止されている理由が理解できてしまった。
「どうしたの、ルコム?抱いてくれないの?」
この機会に虐げられた分をやり返してやる。
魅了魔法があればどれだけ酷い扱いをしようが喜ぶだろう。
* * * * * * * * * *
どうしてか俺が魅了魔法を使ったことがバレてしまい、魔法使い協会で身柄を拘束されることになった。
魔法使いは尊敬される立場だ。
問題を起こしたなら厳しく罰せられる。
この後に俺を待ち受けている処罰は強制的に汚水処理か?
そんな仕事をさせられるために魔法使いになった訳ではないのに。
才能に恵まれ努力もしたのに、俺はどこで間違えてしまったんだ?
「臭いわよ、ルコム」
わざわざ鼻をつまんで言わなくたっていいだろう?
俺が好き好んで臭くなっている訳じゃないんだ。
必死に働いている俺への感謝が無いのは酷い。
「仕方ないだろう。そういった仕事なんだから」
「そのくせ給料は全然じゃない。魔法使いが稼げるって話、嘘だったのね」
「嘘ではない。今の仕事が安すぎるだけだ」
「なら仕事を辞めて他の仕事をしてよ」
「俺の訴えが認められないから等級が低いままだ。このままではまともな仕事なんて無理だ」
マーシャは俺のことを何も理解していない。
金の切れ目が縁の切れ目とでもいうのか、前の仕事を失い金に困るようになった俺への態度が豹変してしまった。
「…嘘つき」
「仕方ないだろう。それよりも実家から援助は受けられないのか?」
「お父様もお母様も酷いのよ。もう私にはお金は使えないって。私も騙されたの。あんなの親なんかじゃない」
「そうか……」
俺だってマーシャに騙されたよ。
実家が裕福だ?
そんなの援助を受けられないなら意味がないじゃないか。
問題ばかり起こしていたリナリアを追い出したから親に感謝されていたんじゃないのか?
援助しないということはマーシャに問題があったからなのか?
もしかしてマーシャの言ったことは全部嘘だったのか!?
「どうしてこんなことになったの?ルコムと一緒になったのが間違いだったの?ねえ、どうして私を幸せにしてくれないのよ!」
「そんなこと俺に言ってもどうにもならないだろう?」
「わかった、ルコムにはもう期待なんかしないから。だから離婚して。お金を稼げないなら離婚してよ!」
離婚すると俺の評価がまた下がってしまう。
どうにかマーシャに考え直してもらわないと。
「どうにかするから考え直してくれ」
「本当?嘘だったらただじゃおかないからね」
「あ、ああ」
困ったことになってしまった。
どうにかできる当てはないのだから、マーシャが怒って離婚される未来しか想像できない。
俺を見るマーシャの目は不信感を訴えている。
俺の言葉が信用されないことが悲しかった。
かつて俺を支えてくれたマーシャは幻のようなものだったというのか?
リナリアの悪事を教えてくれたマーシャには感謝している。
でももうそれも過去の事と割り切ったほうがいいだろう。
「そうか、そうだったんだ」
「どうしたの?」
気付いてしまった。
離婚されずに乗り切る方法であり、煩わしいマーシャから解放される方法を。
俺はマーシャに対し魅了魔法をかけた。
使用がバレたら問題になるが、今の俺はもう問題が起きようが最下級の扱いなのだから別に構わない。
マーシャが従順になるならそれでいい。
「あぁん、ルコム!大好き!抱いて!」
「は…はははは…………」
それまでの態度が信じられないくらい、冗談みたいに効果があった。
あまりの豹変ぶりに思わず乾いた笑いが出てしまった。
これでマーシャは文句を言わないし、離婚されなければこれ以上俺の評価が下がることもない。
最初からこうしておけば良かったんだ。
魅了魔法が禁止されている理由が理解できてしまった。
「どうしたの、ルコム?抱いてくれないの?」
この機会に虐げられた分をやり返してやる。
魅了魔法があればどれだけ酷い扱いをしようが喜ぶだろう。
* * * * * * * * * *
どうしてか俺が魅了魔法を使ったことがバレてしまい、魔法使い協会で身柄を拘束されることになった。
魔法使いは尊敬される立場だ。
問題を起こしたなら厳しく罰せられる。
この後に俺を待ち受けている処罰は強制的に汚水処理か?
そんな仕事をさせられるために魔法使いになった訳ではないのに。
才能に恵まれ努力もしたのに、俺はどこで間違えてしまったんだ?
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