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第7話
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帰宅した私にお父様は第一に何の被害も無かったことを伝えてくれた。
「そう、被害がなくて良かったわ」
「衛兵が取り押さえてくれたからな。今は縛って監禁している。さて、どうしたものかな……」
バドンはもうデーゲル伯爵家の人間ではないので平民扱いになる。
処刑しようが問題にはならないけど、バドンで私の手を汚すのは人生の消えない汚点になってしまうかもしれない。
だからといって無罪放免にしては今後も同じような問題が繰り返されてしまうだろう。
ではどう処分するか。
「デーゲル伯爵家は本当にバドンとの縁を切ったのでしょうか?」
「そう聞いているが…。もし嘘でバドンを処刑してしまえば当家の非となるか……。ならば一度デーゲル伯爵に会ってみるしかないな。バドンはそのまま身柄を拘束しておこう」
「わかりました」
感情的に処刑してしまえば取り返しがつかなくなる。
お父様の判断はもっともだと思うし、時間がかかるので面倒だとも思ってしまった。
バドンはどこまで私に迷惑をかけてくれるのだろうか。
「ちなみにバドンと会うことはできますか?」
「安全を十分に確保するなら許可しよう」
「ありがとうございます。バドンから事情を聞いてからデーゲル伯爵のもとへ向かったほうがよろしいかと思いますがどうでしょうか?」
「それはそうだな。ファーニア、気をつけろよ」
「はい」
お父様の許可も得られたのでバドンに事情を聞いてみる。
きっと不愉快な結果が待っているだろうけど、確認すれば踏ん切りがつくだろうから。
* * * * * * * * * *
衛兵が護衛につき、バドンが監禁されている部屋へと通された。
部屋の中には縛られたバドンが椅子に座らせられている。
その背後には二人の衛兵がついていた。
これなら安全だろう。
私の姿を見たバドンは叫んだ。
「早く解放しろ!ファーニア、お前はどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ!」
やはり反省するようなバドンではなかった。
しかも酷い被害妄想に突き動かされてるようだった。
私は邪魔なんてしていないけど、もしかしたら身柄を拘束されていることへの抗議なのかもしれない。
「バドンは何をしたかったの?」
「ファーニアが俺の邪魔をするというなら徹底的に抗議するまでだ」
「私は邪魔なんてしていないわ。何かを勘違いしているの?」
「そんなはずはない!シェリアへの想いに嫉妬したのか?だがその程度のことで諦める俺ではない!」
…話が通じない。
きっとバドンは自分にとって都合のいいストーリーを作り上げてしまったのだと思う。
そこでは私が悪者で、何を言っても聞く耳を持たないだろう。
でも、もしかしたら逆手に取れるかもしれない。
反省しないバドンだもの。
デーゲル伯爵だってバドンを放置している責任を取ってもらわないと。
「バドンはデーゲル伯爵家から追放されたの?」
「ああ、そうだ。だがもう父上は俺の邪魔をすることはない。だからファーニア、お前も俺の邪魔をしないでくれ。さもないと……何をしてしまうかわからん」
バドンの脅しは本気なのかもしれない。
もう話も通じないし、バドンがどうなっても構わない。
だから私はバドンに教えてあげる。
バドンが望むかもしれない答えを。
「可哀そうなバドン…。何も知らないのね。全部デーゲル伯爵が仕組んだことだったのに」
「何だと!?」
「バドンの気持ちを知っていてシェリアとは婚約させなかったし、レンヴィル公爵家との密約があるからバドンの邪魔をしたのよ。知らなかったでしょ?」
「そんな…父上が本当の敵だったのか……」
バドンが怒りに震えているようだった。
まさか一番身近で全ての決定権のあったデーゲル伯爵が黒幕だったと知れば当然の反応ね。
「私から言えるのはここまでよ」
「あ、待て、待ってくれ!俺を解放しろ!」
バドンのことは無視して部屋から去った。
予定とは違うことをしてしまったけど、これでバドンの恨みはデーゲル伯爵に向いたと思う。
黒幕がデーゲル伯爵というのは嘘だけど、私やシェリアの安全のためにはバドンに恨まれてもらう対象が必要だった。
デーゲル伯爵が黒幕ならバドンが上手くいかなかった理由として納得してくれるはず。
納得しても許さないだろうから恨みを晴らすに違いない。
はたして結果は私の望むものになるだろうか。
まだお父様と相談しないといけないことがあるのでお父様のところへ向かった。
「そう、被害がなくて良かったわ」
「衛兵が取り押さえてくれたからな。今は縛って監禁している。さて、どうしたものかな……」
バドンはもうデーゲル伯爵家の人間ではないので平民扱いになる。
処刑しようが問題にはならないけど、バドンで私の手を汚すのは人生の消えない汚点になってしまうかもしれない。
だからといって無罪放免にしては今後も同じような問題が繰り返されてしまうだろう。
ではどう処分するか。
「デーゲル伯爵家は本当にバドンとの縁を切ったのでしょうか?」
「そう聞いているが…。もし嘘でバドンを処刑してしまえば当家の非となるか……。ならば一度デーゲル伯爵に会ってみるしかないな。バドンはそのまま身柄を拘束しておこう」
「わかりました」
感情的に処刑してしまえば取り返しがつかなくなる。
お父様の判断はもっともだと思うし、時間がかかるので面倒だとも思ってしまった。
バドンはどこまで私に迷惑をかけてくれるのだろうか。
「ちなみにバドンと会うことはできますか?」
「安全を十分に確保するなら許可しよう」
「ありがとうございます。バドンから事情を聞いてからデーゲル伯爵のもとへ向かったほうがよろしいかと思いますがどうでしょうか?」
「それはそうだな。ファーニア、気をつけろよ」
「はい」
お父様の許可も得られたのでバドンに事情を聞いてみる。
きっと不愉快な結果が待っているだろうけど、確認すれば踏ん切りがつくだろうから。
* * * * * * * * * *
衛兵が護衛につき、バドンが監禁されている部屋へと通された。
部屋の中には縛られたバドンが椅子に座らせられている。
その背後には二人の衛兵がついていた。
これなら安全だろう。
私の姿を見たバドンは叫んだ。
「早く解放しろ!ファーニア、お前はどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ!」
やはり反省するようなバドンではなかった。
しかも酷い被害妄想に突き動かされてるようだった。
私は邪魔なんてしていないけど、もしかしたら身柄を拘束されていることへの抗議なのかもしれない。
「バドンは何をしたかったの?」
「ファーニアが俺の邪魔をするというなら徹底的に抗議するまでだ」
「私は邪魔なんてしていないわ。何かを勘違いしているの?」
「そんなはずはない!シェリアへの想いに嫉妬したのか?だがその程度のことで諦める俺ではない!」
…話が通じない。
きっとバドンは自分にとって都合のいいストーリーを作り上げてしまったのだと思う。
そこでは私が悪者で、何を言っても聞く耳を持たないだろう。
でも、もしかしたら逆手に取れるかもしれない。
反省しないバドンだもの。
デーゲル伯爵だってバドンを放置している責任を取ってもらわないと。
「バドンはデーゲル伯爵家から追放されたの?」
「ああ、そうだ。だがもう父上は俺の邪魔をすることはない。だからファーニア、お前も俺の邪魔をしないでくれ。さもないと……何をしてしまうかわからん」
バドンの脅しは本気なのかもしれない。
もう話も通じないし、バドンがどうなっても構わない。
だから私はバドンに教えてあげる。
バドンが望むかもしれない答えを。
「可哀そうなバドン…。何も知らないのね。全部デーゲル伯爵が仕組んだことだったのに」
「何だと!?」
「バドンの気持ちを知っていてシェリアとは婚約させなかったし、レンヴィル公爵家との密約があるからバドンの邪魔をしたのよ。知らなかったでしょ?」
「そんな…父上が本当の敵だったのか……」
バドンが怒りに震えているようだった。
まさか一番身近で全ての決定権のあったデーゲル伯爵が黒幕だったと知れば当然の反応ね。
「私から言えるのはここまでよ」
「あ、待て、待ってくれ!俺を解放しろ!」
バドンのことは無視して部屋から去った。
予定とは違うことをしてしまったけど、これでバドンの恨みはデーゲル伯爵に向いたと思う。
黒幕がデーゲル伯爵というのは嘘だけど、私やシェリアの安全のためにはバドンに恨まれてもらう対象が必要だった。
デーゲル伯爵が黒幕ならバドンが上手くいかなかった理由として納得してくれるはず。
納得しても許さないだろうから恨みを晴らすに違いない。
はたして結果は私の望むものになるだろうか。
まだお父様と相談しないといけないことがあるのでお父様のところへ向かった。
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