結婚を先延ばしにされたのは婚約者が妹のことを好きだったからでした。妹は既婚者なので波乱の予感しかしません。

田太 優

文字の大きさ
上 下
4 / 8

第4話

しおりを挟む
レンヴィル公爵家からの使いがやってきて用事を済ませて帰ったようだ。
私はお父様に呼び出されたので執務室へと向かった。

「用事は済んだのですか?」
「ああ。レンヴィル公爵家からの使いだった。情報提供が役立ったようで感謝されたぞ。どうにもバドンがレンヴィル公爵家の別邸に押し掛けて捕らえられたようだ」
「そうだったのですね」

バドンのことだからやり兼ねないと思っていたけど、本当にするなんて。
でも事前に伝えていたことが役立ったようで何より。
被害も防げたようだし、レンヴィル公爵家にも良い印象を与えられたかもしれない。
シェリアも無事だろうから本当に良かった。

「もちろん当家に問題はなく、悪いのはバドンでありデーゲル伯爵家という認識だ。当然ファーニアの責任はない」
「良かったです」

可能性としては低いけど、元婚約者ということで私の責任を追及されることも考えてはいた。
相手は公爵家なのだから、その気になれば私や当家を責めることもできる。
でもシェリアもいるし、当家は協力的だし、私もバドンの被害者だと思ってくれたのなら幸いだ。

「これでデーゲル伯爵家は苦しい立場になるだろうな。他人の妻を奪おうとしたのだから擁護するような人はいないだろう。デーゲル伯爵家にそこまでするような価値も無いからな」
「そうですね」
「当然バドンも責任を追及されるだろう。処分も無しではレンヴィル公爵家の怒りも解消されまい」

私からはバドンへ制裁できなかったけど、結果的にレンヴィル公爵家が制裁してくれるようなものだから不満は…ない。
自分でも何かしたいと思っても難しいことは理解している。
だからどうにか納得するしかない。

「問題はデーゲル伯爵家が破滅するとファーニアの慰謝料が支払われるか危ういところだな」
「それは…仕方ないことです。最悪慰謝料が支払われなくても構いません。慰謝料請求はしましたし、支払わなければ相手の非が増えるだけですから」
「できるだけ慰謝料を回収するようにはするが、難しい可能性も考慮してくれ」
「わかりました」

どちからといえばバドンの非を増やしたほうが面白くなりそう。
バドンが酷い人だと広まれば広まるほど私は悪くないと思われるのだから。
慰謝料で済ませてしまうよりも徹底的に破滅に追い込んだほうが私の気持ちも晴れるし。

とにかくデーゲル伯爵家はもう終わりかもしれない。
私の時間を無駄にしたバドンには当然の報いだし、シェリアの幸せを壊そうとしたのだから同情の余地は全くない。
そのような人を育ててしまい、問題を防げなかったデーゲル伯爵家も当然責任を取ってもらう。

「これで全てが終わればいいのだが、バドンが何をするかわからんからな…。ファーニアも身辺には気をつけろ」
「はい、わかりました」

あのバドンのことだから私に逆恨みしても不思議ではない。
しばらくは護衛専門の人を付けてもらったほうがいいかもしれない。
……バドンがいる限り、私は安心することができないかもしれない。
逆恨みも怖いし、私ではなくシェリアの幸せを壊されてしまうかもしれないことも不安の大きな理由。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?

通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。 王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。 周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。 ※以前他のサイトで掲載していた作品です

妹に幸せになって欲しくて結婚相手を譲りました。

しあ
恋愛
「貴女は、真心からこの男子を夫とすることを願いますか」 神父様の問いに、新婦はハッキリと答える。 「いいえ、願いません!私は彼と妹が結婚することを望みます!」 妹と婚約者が恋仲だと気付いたので、妹大好きな姉は婚約者を結婚式で譲ることに! 100%善意の行動だが、妹と婚約者の反応はーーー。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話

しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」 「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」 父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。 ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。 婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。 両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

【完結】さっさと婚約破棄しろよ!って、私はもう書類を出していますって。

BBやっこ
恋愛
幼い頃に親同士で婚約したものの、学園に上がってから当人同士合わない!と確信したので 親を説得して、婚約破棄にする事にした。 結婚したらいいねー。男女で同い歳だから婚約しちゃう?と軽い感じで結ばれたらしい。 はっきり言って迷惑。揶揄われるし、合わないしでもう婚約破棄にしようと合意は得た。 せいせいした!と思ってた時…でた。お呼びでないのに。 【2023/10/1 24h. 12,396 pt (151位)】達成

処理中です...