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第3話
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ファーニアへ婚約破棄を告げた俺は自由の身。
これで本当に愛しているシェリアにアプローチすることができる。
とはいえファーニアからの婚約破棄は予定外だったから、その他の準備は何もできていない。
シェリアには花束を贈ろうか?
それとも指輪がいいだろうか?
ここで失敗する訳にはいかないから慎重に選ばなないといけない。
吟味すれば俺の気持ちはきっと伝わるだろう。
長い間我慢してきたのだから、ここで一日や二日時間をかけるのも悪くない。
何よりも恐れるべきはシェリアの気に入らない物を贈ってしまうことだ。
レンヴィル公爵家の令息と結婚してしまったシェリアは贅沢に慣れているかもしれず、単純に財力で勝負したら俺に勝ち目はない。
だがシェリアを愛する気持ちなら絶対に負けていない。
その俺がシェリアのために全力で選ぶのだから、きっと気に入るだろう。
とはいえ選ぶのは難しい。
だが楽しくもある。
このような気持ちはファーニアとの仕方なく結んだ婚約では味わうことができなかった。
この気持ちはシェリアへの愛だ。
自由の身になった今、シェリアへの熱い想いを伝えなくてはならない。
* * * * * * * * * *
いろいろと考えた挙句、俺が選んだのは花束だった。
できる限り派手に見えるように注文したので結構高くついてしまったが、これでシェリアが笑顔になるなら安いものだ。
これは俺の気持ちでもある。
金ではなく気持ちの問題。
だからきっとシェリアにも伝わるだろう。
シェリアがいるレンヴィル公爵家の別邸に向かった俺だったが、さっそく邪魔が入った。
「ここはレンヴィル公爵家の別邸です。予定のない方はお通しできません」
生意気な衛兵が俺の愛を邪魔した。
この花束を見てシェリアに渡そうとした意図が伝わらなかったというのか?
所詮は衛兵だ。
仕方ないから言葉で伝える。
「俺はバドン・デーゲル。伯爵家の者だ」
「これは失礼しました。ですが訪問の予定は入っておりませんので、お通しすることはできません」
「その程度のことは気にするな。俺はシェリアに用がある。呼び出してくれないか?」
「……申し訳ありませんが予定のない方の要望にはお応えできません」
まったく融通の利かない衛兵だな。
「どうしても通さないというのか?」
「アポイントメントを取ってください」
「そのようなことをするまでもないだろう」
埒が明かないので俺はもっと直接的な手段に出る。
通さないならば構わない。
愛を伝える方法は他にもあるのだから。
俺は大きく息を吸い込んだ。
「シェリア!俺だ!バドンだ!!愛してる!!!」
大声で叫んだからシェリアも気付いてくれたかもしれない。
もし気付かないようなら何度でも叫べばいい。
俺のシェリアへの愛の気持ちは何度叫ぼうが無くなることはない。
「シェリア!!俺は」
叫んでいる途中に衛兵によって組み伏せられてしまった。
「ええい、何をする!俺はバドン・デーゲル!無礼だぞ!!」
「申し訳ありませんがレンヴィル公爵家への嫌がらせは看過できません。大人しくしてください」
「嫌がらせ扱いとは失礼にも程があるぞ!侮辱するのか!!この程度のことで俺が諦めると思っているのか!!!」
俺は必死に抵抗したが衛兵を振りほどくことはできなかった。
やがて衛兵の応援が来て俺は身柄を拘束され、やっとレンヴィル公爵家の別邸へと入ることができた。
……そのはずだったのに、俺が通されたのは別邸ではなく小さな建物だった。
どうやら衛兵の詰所も兼ねているようだ。
そこで俺は一室に入れられた。
鉄格子に守られた、いわゆる牢屋のようなものだ。
「おい!これはどういうことだ!それと花束ももってこい!高かったんだぞ!それにシェリアに贈るものだから丁重に扱え!!」
返事はなかった。
…もしかしたらシェリアが面会にやってくるかもしれない。
少なくとも物理的な距離は近づいたのだから、確実に前進している。
「焦らさないでくれよ、シェリア」
こんな場所からは早く出たいが、シェリアが来てくれるならそれでもいい。
* * * * * * * * * *
……………待てど暮らせど誰も来なかった。
これで本当に愛しているシェリアにアプローチすることができる。
とはいえファーニアからの婚約破棄は予定外だったから、その他の準備は何もできていない。
シェリアには花束を贈ろうか?
それとも指輪がいいだろうか?
ここで失敗する訳にはいかないから慎重に選ばなないといけない。
吟味すれば俺の気持ちはきっと伝わるだろう。
長い間我慢してきたのだから、ここで一日や二日時間をかけるのも悪くない。
何よりも恐れるべきはシェリアの気に入らない物を贈ってしまうことだ。
レンヴィル公爵家の令息と結婚してしまったシェリアは贅沢に慣れているかもしれず、単純に財力で勝負したら俺に勝ち目はない。
だがシェリアを愛する気持ちなら絶対に負けていない。
その俺がシェリアのために全力で選ぶのだから、きっと気に入るだろう。
とはいえ選ぶのは難しい。
だが楽しくもある。
このような気持ちはファーニアとの仕方なく結んだ婚約では味わうことができなかった。
この気持ちはシェリアへの愛だ。
自由の身になった今、シェリアへの熱い想いを伝えなくてはならない。
* * * * * * * * * *
いろいろと考えた挙句、俺が選んだのは花束だった。
できる限り派手に見えるように注文したので結構高くついてしまったが、これでシェリアが笑顔になるなら安いものだ。
これは俺の気持ちでもある。
金ではなく気持ちの問題。
だからきっとシェリアにも伝わるだろう。
シェリアがいるレンヴィル公爵家の別邸に向かった俺だったが、さっそく邪魔が入った。
「ここはレンヴィル公爵家の別邸です。予定のない方はお通しできません」
生意気な衛兵が俺の愛を邪魔した。
この花束を見てシェリアに渡そうとした意図が伝わらなかったというのか?
所詮は衛兵だ。
仕方ないから言葉で伝える。
「俺はバドン・デーゲル。伯爵家の者だ」
「これは失礼しました。ですが訪問の予定は入っておりませんので、お通しすることはできません」
「その程度のことは気にするな。俺はシェリアに用がある。呼び出してくれないか?」
「……申し訳ありませんが予定のない方の要望にはお応えできません」
まったく融通の利かない衛兵だな。
「どうしても通さないというのか?」
「アポイントメントを取ってください」
「そのようなことをするまでもないだろう」
埒が明かないので俺はもっと直接的な手段に出る。
通さないならば構わない。
愛を伝える方法は他にもあるのだから。
俺は大きく息を吸い込んだ。
「シェリア!俺だ!バドンだ!!愛してる!!!」
大声で叫んだからシェリアも気付いてくれたかもしれない。
もし気付かないようなら何度でも叫べばいい。
俺のシェリアへの愛の気持ちは何度叫ぼうが無くなることはない。
「シェリア!!俺は」
叫んでいる途中に衛兵によって組み伏せられてしまった。
「ええい、何をする!俺はバドン・デーゲル!無礼だぞ!!」
「申し訳ありませんがレンヴィル公爵家への嫌がらせは看過できません。大人しくしてください」
「嫌がらせ扱いとは失礼にも程があるぞ!侮辱するのか!!この程度のことで俺が諦めると思っているのか!!!」
俺は必死に抵抗したが衛兵を振りほどくことはできなかった。
やがて衛兵の応援が来て俺は身柄を拘束され、やっとレンヴィル公爵家の別邸へと入ることができた。
……そのはずだったのに、俺が通されたのは別邸ではなく小さな建物だった。
どうやら衛兵の詰所も兼ねているようだ。
そこで俺は一室に入れられた。
鉄格子に守られた、いわゆる牢屋のようなものだ。
「おい!これはどういうことだ!それと花束ももってこい!高かったんだぞ!それにシェリアに贈るものだから丁重に扱え!!」
返事はなかった。
…もしかしたらシェリアが面会にやってくるかもしれない。
少なくとも物理的な距離は近づいたのだから、確実に前進している。
「焦らさないでくれよ、シェリア」
こんな場所からは早く出たいが、シェリアが来てくれるならそれでもいい。
* * * * * * * * * *
……………待てど暮らせど誰も来なかった。
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