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第2話
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気が重いけど、バドンに婚約破棄したことをお父様に報告しない訳にはいかない。
お父様にはバドンの件で話があるとは伝えていたけど、シェリアの件も含めて報告したらどうなるかわからない。
すごく気が重いけど、報告する。
「それでバドンがどうしたんだ?」
「結論としては婚約破棄しました。結婚を先延ばしにされただけではなく、私ではない女性の事が好きだったと言われましたので」
「そうか……」
お父様の胸中は落胆し、そしてバドンへの怒りへと変わったのだと思う。
「それで誰のことが好きだと言ったんだ?名前は出たのか?」
「それが……シェリアです」
「シェリアだと!?まさか!?」
「本当です」
「何てことだ………」
バドンが私の幼馴染であるように、シェリアもまたバドンと長い付き合いだ。
いつから好きだったという話は聞いていないけど、ずっと昔からシェリアのことが好きだったのなら私とどうして婚約したのだろう。
最初から裏切るつもりだったのなら許せない。
仮に私を好きになろうとして無理だったなんて言われても許さない。
理由がどうあれ私との婚約を軽んじたバドンを許せるはずがない。
「デーゲル伯爵家には抗議しないとな。せいぜい慰謝料をふんだくるくらいしか制裁はできないが、それでファーニアの気持ちは晴れるのか?」
「その程度のことでは晴れません。私がどれだけ悲しんだか、心を痛めたか、バドンは知らないでしょう。だから絶対に許しません」
「そうだろうな。できれば容赦なく制裁を下したいところだ」
お父様の気持ちは嬉しいけど、現実問題としてどうやって制裁するかは難しい問題だ。
慰謝料請求はバドンの有責なのだから問題ないけど、それ以上の制裁となると難しい。
だからといって慰謝料のみで済ませるのでは私が納得できない。
……世の中には納得できないことも多いけど、バドンへの制裁もそういったものに含まれるのだろうか。
「それにレンヴィル公爵家にも伝えないとな。ファーニアとの婚約関係が無くなった今、バドンが暴走するかもしれん」
「その可能性は高そうですね」
自分のことばかり考えていてシェリアのことを失念していた。
バドンがシェリアのことを好きだと言ったのだから、これからシェリアに何かしらのことをする可能性は十分に考えられる。
シェリアはレンヴィル公爵家の令息と結婚した。
家督を継ぐ立場ではないから伯爵家の娘であるシェリアとの結婚が認められたけど、それでもレンヴィル公爵家の一族であることには違いない。
もしバドンが何かすればレンヴィル公爵家を敵にするだろう。
私が何かしなくてもレンヴィル公爵家が制裁を下すかもしれない。
何よりもシェリアを気に入り大切にしている夫のオースティー様が許すはずがない。
…無いとは思うけど、オースティー様が私にも責任があると考えるようなことは絶対に避けなくてはならない。
バドンと共犯に思われたくないし、問題のきっかけを作ったことで責められたくもない。
「速やかにレンヴィル公爵家に伝えましょう。バドンのことだから何をするかわかりませんし、ここでレンヴィル公爵家に恩を売って損はありません」
「そうだな。事が事だから私が直接伝えよう。手遅れになる前にどうにかしないとな。すぐにでも動くぞ」
「はい」
お父様は準備があるので私からの報告は終わりとなった。
バドンがシェリアに何かすればシェリアに迷惑がかかるけど、それでバドンは致命的なことになるかもしれない。
悪い考えだと理解はしているけど、私はバドンの行動にまでは責任を持てない。
きっとバドンが問題を起こしてくれると信じている。
できればシェリアにあまり迷惑にならない形で決着が付けばいいと思う。
お父様にはバドンの件で話があるとは伝えていたけど、シェリアの件も含めて報告したらどうなるかわからない。
すごく気が重いけど、報告する。
「それでバドンがどうしたんだ?」
「結論としては婚約破棄しました。結婚を先延ばしにされただけではなく、私ではない女性の事が好きだったと言われましたので」
「そうか……」
お父様の胸中は落胆し、そしてバドンへの怒りへと変わったのだと思う。
「それで誰のことが好きだと言ったんだ?名前は出たのか?」
「それが……シェリアです」
「シェリアだと!?まさか!?」
「本当です」
「何てことだ………」
バドンが私の幼馴染であるように、シェリアもまたバドンと長い付き合いだ。
いつから好きだったという話は聞いていないけど、ずっと昔からシェリアのことが好きだったのなら私とどうして婚約したのだろう。
最初から裏切るつもりだったのなら許せない。
仮に私を好きになろうとして無理だったなんて言われても許さない。
理由がどうあれ私との婚約を軽んじたバドンを許せるはずがない。
「デーゲル伯爵家には抗議しないとな。せいぜい慰謝料をふんだくるくらいしか制裁はできないが、それでファーニアの気持ちは晴れるのか?」
「その程度のことでは晴れません。私がどれだけ悲しんだか、心を痛めたか、バドンは知らないでしょう。だから絶対に許しません」
「そうだろうな。できれば容赦なく制裁を下したいところだ」
お父様の気持ちは嬉しいけど、現実問題としてどうやって制裁するかは難しい問題だ。
慰謝料請求はバドンの有責なのだから問題ないけど、それ以上の制裁となると難しい。
だからといって慰謝料のみで済ませるのでは私が納得できない。
……世の中には納得できないことも多いけど、バドンへの制裁もそういったものに含まれるのだろうか。
「それにレンヴィル公爵家にも伝えないとな。ファーニアとの婚約関係が無くなった今、バドンが暴走するかもしれん」
「その可能性は高そうですね」
自分のことばかり考えていてシェリアのことを失念していた。
バドンがシェリアのことを好きだと言ったのだから、これからシェリアに何かしらのことをする可能性は十分に考えられる。
シェリアはレンヴィル公爵家の令息と結婚した。
家督を継ぐ立場ではないから伯爵家の娘であるシェリアとの結婚が認められたけど、それでもレンヴィル公爵家の一族であることには違いない。
もしバドンが何かすればレンヴィル公爵家を敵にするだろう。
私が何かしなくてもレンヴィル公爵家が制裁を下すかもしれない。
何よりもシェリアを気に入り大切にしている夫のオースティー様が許すはずがない。
…無いとは思うけど、オースティー様が私にも責任があると考えるようなことは絶対に避けなくてはならない。
バドンと共犯に思われたくないし、問題のきっかけを作ったことで責められたくもない。
「速やかにレンヴィル公爵家に伝えましょう。バドンのことだから何をするかわかりませんし、ここでレンヴィル公爵家に恩を売って損はありません」
「そうだな。事が事だから私が直接伝えよう。手遅れになる前にどうにかしないとな。すぐにでも動くぞ」
「はい」
お父様は準備があるので私からの報告は終わりとなった。
バドンがシェリアに何かすればシェリアに迷惑がかかるけど、それでバドンは致命的なことになるかもしれない。
悪い考えだと理解はしているけど、私はバドンの行動にまでは責任を持てない。
きっとバドンが問題を起こしてくれると信じている。
できればシェリアにあまり迷惑にならない形で決着が付けばいいと思う。
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