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第6話
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私はパーシー様に見つからないように隠れながら掲示板の様子を窺っていた。
ちなみになぜかレイナード様とオルファス殿下も一緒。
いろいろな意味でドキドキしてしまう。
「おっ、来たようだぞ」
「どれどれ。ああ、確かに」
ドキドキして冷静ではいられない私とは対照的にレイナード様もオルファス殿下も余裕のようだった。
それにしても二人は親し気だけど、いつの間にそんなに親しくなったのだろう?
疑問はさておき、パーシー様に気付いた人たちが道を空けていく。
パーシー様は気分が良さそうだけど、私にとっては断頭台へ向かう罪人のようにしか見えなかった。
パーシー様は掲示板の前で問題の掲示物を読んだようだ。
「なんだこれは!!!」
パーシー様は何かをつぶやいたあと、理解が追い付いたのか叫んだ。
オルファス殿下の名前で、私の噂を広めた犯人がパーシー様だと書いてあるのだから、叫ぶのも理解できる。
今、パーシー様はどんな気持ちなのだろう?
あれだけ上機嫌だったのに驚きと怒りに満ちているみたい。
オルファス殿下が動くということは国王陛下直轄の情報収集に長けた部隊が動くということと同異議だ。
さすがプロといったところで関係者から話を訊いたり、詳しくは教えてくれなかったけどいろいろな準備が役立ったらしい。
とにかくこれ以上ないくらいのプロであり、これ以上ないほどの権力者である王族の名前でパーシー様の罪が明らかになったのだ。
もうパーシー様もピーケット伯爵家も終わりだろう。
「パーシー殿のことだから納得しないかもしれない。ここは僕が直接話をしてくるよ」
「オルファス殿下、パーシー殿は何をするかわかりません。どうかお気をつけて」
「ははっ、もしものことがあればパーシー殿は死刑になるかもね」
こんな時でもオルファス殿下は余裕だった。
あれが王子の余裕なのかもしれないけど、ちょっと心配になってしまう。
そんな私の気持ちをよそにオルファス殿下はパーシー様の前へ出た。
「パーシー・ピーケット!貴様の悪事はお見通しだ!婚約者であるアイラ・イクセル侯爵令嬢への辛辣な態度は許せるものではないが、王族への謂れなき噂を広めた罪は重い!しかも事実を隠そうとした罪もある!反論はあるか!」
「くっ……。全てはアイラが悪いのです!アイラが反抗的だから俺は追い詰められ、仕方なく噂を流したのです!これもアイラの矯正のためです!」
「そんな言い分、認められるはずがないだろう。貴様は婚約者なら何をしても許されるとでも考えているのか?」
「…俺の婚約者をどうしようが口出しされたくはありません」
「そうか…」
オルファス殿下は私のほうを向いた。
気のせいでなければ私と目があっている…。
「アイラ嬢、ちょっと来てくれないかな?」
「はい……」
何をさせられるのか不安だけど、オルファス殿下に言われたのだから行くしかない。
「たぶんだけど、パーシー殿を殴ってくればいいと思うよ」
レイナード様が小声で囁いてくれた。
話が飛躍しているように思えたけど、話の流れを踏まえればレイナード様の言葉に納得がいく。
婚約者なら何をしても許される。
その言葉をパーシー様は否定しなかった。
だから私が何をしても許されるのだと理解した。
私はパーシー様の前に立つなり、体をひねり勢いをつけて平手打ちをお見舞いした!
「っ……!」
スパーンと見事な音が響いた。
でも悲しいけど私の力では綺麗な音を響かせるだけで、それほどの痛みは与えられなかったのだと思う。
「この…!」
私の行為はパーシー様を逆上させるには十分だった。
もう言葉にするよりも先に私に掴みかかろうとしてきたけど、私の横からレイナード様が飛び出した!
そしてパーシー様の腕を捻じり上げた。
「痛、痛たたたた!」
レイナード様は涼しい顔だし、なぜかパーシー様は異様に痛がっている。
でも抵抗らしいこともできないのだからレイナード様が完全にパーシー様の動きを封じたのだと思う。
「やれやれ、婚約者とはいえ暴力を振るおうとするのは良くないぞ」
オルファス殿下はそう言ったけど、私をこんな場所に呼び出すからパーシー様が凶行に及んだように思えてしまう。
…もしかして、パーシー様への罪状を追加するためだったの!?
ちなみになぜかレイナード様とオルファス殿下も一緒。
いろいろな意味でドキドキしてしまう。
「おっ、来たようだぞ」
「どれどれ。ああ、確かに」
ドキドキして冷静ではいられない私とは対照的にレイナード様もオルファス殿下も余裕のようだった。
それにしても二人は親し気だけど、いつの間にそんなに親しくなったのだろう?
疑問はさておき、パーシー様に気付いた人たちが道を空けていく。
パーシー様は気分が良さそうだけど、私にとっては断頭台へ向かう罪人のようにしか見えなかった。
パーシー様は掲示板の前で問題の掲示物を読んだようだ。
「なんだこれは!!!」
パーシー様は何かをつぶやいたあと、理解が追い付いたのか叫んだ。
オルファス殿下の名前で、私の噂を広めた犯人がパーシー様だと書いてあるのだから、叫ぶのも理解できる。
今、パーシー様はどんな気持ちなのだろう?
あれだけ上機嫌だったのに驚きと怒りに満ちているみたい。
オルファス殿下が動くということは国王陛下直轄の情報収集に長けた部隊が動くということと同異議だ。
さすがプロといったところで関係者から話を訊いたり、詳しくは教えてくれなかったけどいろいろな準備が役立ったらしい。
とにかくこれ以上ないくらいのプロであり、これ以上ないほどの権力者である王族の名前でパーシー様の罪が明らかになったのだ。
もうパーシー様もピーケット伯爵家も終わりだろう。
「パーシー殿のことだから納得しないかもしれない。ここは僕が直接話をしてくるよ」
「オルファス殿下、パーシー殿は何をするかわかりません。どうかお気をつけて」
「ははっ、もしものことがあればパーシー殿は死刑になるかもね」
こんな時でもオルファス殿下は余裕だった。
あれが王子の余裕なのかもしれないけど、ちょっと心配になってしまう。
そんな私の気持ちをよそにオルファス殿下はパーシー様の前へ出た。
「パーシー・ピーケット!貴様の悪事はお見通しだ!婚約者であるアイラ・イクセル侯爵令嬢への辛辣な態度は許せるものではないが、王族への謂れなき噂を広めた罪は重い!しかも事実を隠そうとした罪もある!反論はあるか!」
「くっ……。全てはアイラが悪いのです!アイラが反抗的だから俺は追い詰められ、仕方なく噂を流したのです!これもアイラの矯正のためです!」
「そんな言い分、認められるはずがないだろう。貴様は婚約者なら何をしても許されるとでも考えているのか?」
「…俺の婚約者をどうしようが口出しされたくはありません」
「そうか…」
オルファス殿下は私のほうを向いた。
気のせいでなければ私と目があっている…。
「アイラ嬢、ちょっと来てくれないかな?」
「はい……」
何をさせられるのか不安だけど、オルファス殿下に言われたのだから行くしかない。
「たぶんだけど、パーシー殿を殴ってくればいいと思うよ」
レイナード様が小声で囁いてくれた。
話が飛躍しているように思えたけど、話の流れを踏まえればレイナード様の言葉に納得がいく。
婚約者なら何をしても許される。
その言葉をパーシー様は否定しなかった。
だから私が何をしても許されるのだと理解した。
私はパーシー様の前に立つなり、体をひねり勢いをつけて平手打ちをお見舞いした!
「っ……!」
スパーンと見事な音が響いた。
でも悲しいけど私の力では綺麗な音を響かせるだけで、それほどの痛みは与えられなかったのだと思う。
「この…!」
私の行為はパーシー様を逆上させるには十分だった。
もう言葉にするよりも先に私に掴みかかろうとしてきたけど、私の横からレイナード様が飛び出した!
そしてパーシー様の腕を捻じり上げた。
「痛、痛たたたた!」
レイナード様は涼しい顔だし、なぜかパーシー様は異様に痛がっている。
でも抵抗らしいこともできないのだからレイナード様が完全にパーシー様の動きを封じたのだと思う。
「やれやれ、婚約者とはいえ暴力を振るおうとするのは良くないぞ」
オルファス殿下はそう言ったけど、私をこんな場所に呼び出すからパーシー様が凶行に及んだように思えてしまう。
…もしかして、パーシー様への罪状を追加するためだったの!?
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