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第2話
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「ほほぅ?随分と強気だな。俺の気のせいか?」
ニヤニヤと私を馬鹿にするように言うパーシー様。
挑発だけど私はもう覚悟を決めているのだから挑発なんてされなくても何度でも言ってあげる。
「聞こえなかったのですか?もういい加減にしてくださいと言ったのですよ、パーシー様」
「ははっ、聞いたか?俺に意見するとはな」
わざわざ周囲に同意を求めるように言ったところで同意するような愚かな人はいない。
自分のほうが悪者になっていることにすら気付かないなんて、パーシー様は本当に自分にとって都合のいい解釈しかしないのね。
自分で自分を貶めていくなんて、さすがパーシー様。
「そもそもレイナード様は浮気なんてしていません。この程度のことで浮気呼ばわりするなら、学園の生徒の多くが浮気していることになってしまいますよ?」
「楽しそうに話していたじゃないか。まるで恋人同士みたいだったぞ。それは浮気だろう?」
「レイナード様の会話はパーシー様とは違って理知的で機知に富んでいますから。自然と楽しい会話になってしまうのです」
「いや、違うな。アイラは俺と会話するときはつまらなさそうじゃないか。それと比べてレイナード様との時はまるで別の反応だろう?それが浮気の証拠だ」
「意にそぐわないことを言えばパーシー様は声を荒げるではありませんか。だから私ははいはいと適当な返事をするしかできないのです。まさか気付いていなかったのですか?」
周囲からは失笑が漏れている。
パーシー様がこれだけ恥をかいているのに、肝心の本人はまるで気付いていないようだった。
もう呆れを通り越して驚きだわ……。
「俺はアイラのことを十分に気遣っている。それを感じられないアイラのほうが問題だ」
自信満々に現在の振る舞いと矛盾したことを言うのだから、周囲から再び失笑が漏れた。
さすがにこうもパーシー様が失態を重ねれば失笑を堪えることもできないだろう。
でもみんなは鋼のような強靭な理性で爆笑しないようにしているに決まっている。
「この状況で良くそんなことを恥ずかしげもなく言えますね…」
「俺を馬鹿にするのか!?」
「馬鹿にはしていません。ただ事実を述べているだけです」
「くっ、この…アイラめ!俺を怒らせたな!絶対に許さんぞ!!」
「許さなくて結構ですから、浮気しているなんて決めつけないでください。レイナード様の名誉の問題にもなってしまいますから」
「覚えてろよ!」
どこかの下賎な人間みたいな捨て台詞を残してパーシー様が教室から出ていってしまった。
どう考えてもパーシー様のほうに非があるし、言われなくたって忘れたりはしない。
それに最後のほうは会話として成立していなかったような気がする。
語彙も乏しいし、あれがパーシー様の限界なのだろう。
細かいことはさておき、根本的な問題は全く解決していないけど、これで一応この場の問題は落ち着いた。
そして速やかに謝罪するレイナード様。
「迷惑をかけてしまって申し訳ない」
レイナード様に謝罪させてしまって私のほうが申し訳なくなってしまった。
「いえ、パーシー様が失礼なことを言い申し訳ありませんでした」
「アイラ嬢が謝ることではないよ。それにしても困った婚約者だね」
「はい……」
レイナード様は私を責めたりはしない。
パーシー様の侮辱にも怒りを露わにすることもない。
でも私は知っている。
表に出さずともレイナード様は裏で適切に対処することを。
問題はどの程度の対処になるか。
パーシー様だけの問題に留めるのか、それともロッドワード伯爵家の責任問題に発展させるのか。
でも……。
レイナード様に迷惑をかけたパーシー様は許さない。
それにパーシー様との婚約は両家だけの問題ではない。
私には詳しいことを知らされていないけど、どうも宰相様が関わっているらしい。
簡単に婚約解消できなくとも、私はパーシー様を許さない。
今回の件も含めて、もう何もせずにはいられない。
コップから零れた水が元通りにならないように、パーシー様はもう許すことのできない行為をしたのだ。
ニヤニヤと私を馬鹿にするように言うパーシー様。
挑発だけど私はもう覚悟を決めているのだから挑発なんてされなくても何度でも言ってあげる。
「聞こえなかったのですか?もういい加減にしてくださいと言ったのですよ、パーシー様」
「ははっ、聞いたか?俺に意見するとはな」
わざわざ周囲に同意を求めるように言ったところで同意するような愚かな人はいない。
自分のほうが悪者になっていることにすら気付かないなんて、パーシー様は本当に自分にとって都合のいい解釈しかしないのね。
自分で自分を貶めていくなんて、さすがパーシー様。
「そもそもレイナード様は浮気なんてしていません。この程度のことで浮気呼ばわりするなら、学園の生徒の多くが浮気していることになってしまいますよ?」
「楽しそうに話していたじゃないか。まるで恋人同士みたいだったぞ。それは浮気だろう?」
「レイナード様の会話はパーシー様とは違って理知的で機知に富んでいますから。自然と楽しい会話になってしまうのです」
「いや、違うな。アイラは俺と会話するときはつまらなさそうじゃないか。それと比べてレイナード様との時はまるで別の反応だろう?それが浮気の証拠だ」
「意にそぐわないことを言えばパーシー様は声を荒げるではありませんか。だから私ははいはいと適当な返事をするしかできないのです。まさか気付いていなかったのですか?」
周囲からは失笑が漏れている。
パーシー様がこれだけ恥をかいているのに、肝心の本人はまるで気付いていないようだった。
もう呆れを通り越して驚きだわ……。
「俺はアイラのことを十分に気遣っている。それを感じられないアイラのほうが問題だ」
自信満々に現在の振る舞いと矛盾したことを言うのだから、周囲から再び失笑が漏れた。
さすがにこうもパーシー様が失態を重ねれば失笑を堪えることもできないだろう。
でもみんなは鋼のような強靭な理性で爆笑しないようにしているに決まっている。
「この状況で良くそんなことを恥ずかしげもなく言えますね…」
「俺を馬鹿にするのか!?」
「馬鹿にはしていません。ただ事実を述べているだけです」
「くっ、この…アイラめ!俺を怒らせたな!絶対に許さんぞ!!」
「許さなくて結構ですから、浮気しているなんて決めつけないでください。レイナード様の名誉の問題にもなってしまいますから」
「覚えてろよ!」
どこかの下賎な人間みたいな捨て台詞を残してパーシー様が教室から出ていってしまった。
どう考えてもパーシー様のほうに非があるし、言われなくたって忘れたりはしない。
それに最後のほうは会話として成立していなかったような気がする。
語彙も乏しいし、あれがパーシー様の限界なのだろう。
細かいことはさておき、根本的な問題は全く解決していないけど、これで一応この場の問題は落ち着いた。
そして速やかに謝罪するレイナード様。
「迷惑をかけてしまって申し訳ない」
レイナード様に謝罪させてしまって私のほうが申し訳なくなってしまった。
「いえ、パーシー様が失礼なことを言い申し訳ありませんでした」
「アイラ嬢が謝ることではないよ。それにしても困った婚約者だね」
「はい……」
レイナード様は私を責めたりはしない。
パーシー様の侮辱にも怒りを露わにすることもない。
でも私は知っている。
表に出さずともレイナード様は裏で適切に対処することを。
問題はどの程度の対処になるか。
パーシー様だけの問題に留めるのか、それともロッドワード伯爵家の責任問題に発展させるのか。
でも……。
レイナード様に迷惑をかけたパーシー様は許さない。
それにパーシー様との婚約は両家だけの問題ではない。
私には詳しいことを知らされていないけど、どうも宰相様が関わっているらしい。
簡単に婚約解消できなくとも、私はパーシー様を許さない。
今回の件も含めて、もう何もせずにはいられない。
コップから零れた水が元通りにならないように、パーシー様はもう許すことのできない行為をしたのだ。
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