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第8話
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一連の問題の決着をつけるべく、私はヘインリード公爵と面会していた。
「ギラルロイ家はディーンズを追放することで問題の解決を図りましたが、それについてはどうお考えですか?」
「家から追放したのだから、これ以上追及することは難しいだろう。セシーリア嬢は不服か?」
「いえ、公爵閣下の考えはもっともだと思います。ただ、ギラルロイ伯爵家は上手く対処したとは思います」
「そうだろうな。ギラルロイ伯爵は保身には長けているということだな。だが信用は失われた」
「はい」
そもそもギラルロイ伯爵家がディーンズの浮気や隠し子の存在を秘していたから問題がここまで大きくなった。
それを追及し躱したことはギラルロイ伯爵の手腕かもしれなけど、根本的な問題は解決していない。
不誠実なギラルロイ家は信用を失い、これからどれだけ影響が及ぶのかは私ではわからない。
「ギラルロイ伯爵家とは距離を置くことにする。その分はモーラン伯爵家を頼りにすることになるだろう」
「光栄です」
罪悪感があれば悪い扱いにはしないと思う。
ヘインリード公爵の誠意はこれからも見せ続けてもらう。
本気で悪いことをしたと思っているなら当家にも私にも悪いことはしないだろうから。
「それとセシーリア嬢の婚約者をどうするかという問題もある。ディーンズのせいで時間ばかりが浪費されてしまった。早く婚約者を決めないとな」
「そうですね」
婚期なのに結婚式間近で婚約破棄することになってしまったのだから、これから婚約者を探して婚約して信用できるか見極めて…なんてしていたら婚期を逃してしまうかもしれない。
それに婚約者にまた裏切られたら本気で行き遅れになってしまう。
「もしセシーリア嬢に意中の人がいないなら…当家の愚息と婚約するのはどうだろうか?もちろん気に入らなければ断ってくれて構わない」
この提案には悩んでしまう。
ヘインリード公爵家との縁を強めるなら悪くないけど、それは政略的な意味での話。
相手が信用できるかとは無縁だし、ディーンズを見抜けなかったヘインリード公爵閣下のご子息であることに不安を覚えてしまう。
でもまだ相手のことを知らないのだから、決めつけてしまうのはもったいない。
もし良い相手だったら、公爵閣下は私への罪悪感もあるだろうし、私を蔑ろにすることはないと思う。
もしかしたらご子息よりも私のほうを大切にしてくれるかもしれないし。
リスクは低いし嫌なら断ってもいいという閣下の言葉を信じよう。
「まずはご令息とお会いしたく思います。もちろん婚約は前向きに考えますよ」
「そうか、では後で呼ぶとしよう。繰り返しになるが嫌なら断ってくれて構わない。そのことで何かするつもりはないから安心してほしい」
「はい」
どうなるかはわからないけど、私に残された時間は短い。
その責任の一端はヘインリード公爵にもあるのだから、遠慮は不要。
貪欲なくらいでないと後悔するかもしれない。
悪くない相手なら良しとしないと。
それに…浮気したり隠し子を作るようなことをしなければいい、とも思ってしまう。
どうやらこれで私もやっと普通の幸せを手に入れられそう。
いつまでもディーンズに振り回されたり引きずられるわけにはいかないもの。
「ギラルロイ家はディーンズを追放することで問題の解決を図りましたが、それについてはどうお考えですか?」
「家から追放したのだから、これ以上追及することは難しいだろう。セシーリア嬢は不服か?」
「いえ、公爵閣下の考えはもっともだと思います。ただ、ギラルロイ伯爵家は上手く対処したとは思います」
「そうだろうな。ギラルロイ伯爵は保身には長けているということだな。だが信用は失われた」
「はい」
そもそもギラルロイ伯爵家がディーンズの浮気や隠し子の存在を秘していたから問題がここまで大きくなった。
それを追及し躱したことはギラルロイ伯爵の手腕かもしれなけど、根本的な問題は解決していない。
不誠実なギラルロイ家は信用を失い、これからどれだけ影響が及ぶのかは私ではわからない。
「ギラルロイ伯爵家とは距離を置くことにする。その分はモーラン伯爵家を頼りにすることになるだろう」
「光栄です」
罪悪感があれば悪い扱いにはしないと思う。
ヘインリード公爵の誠意はこれからも見せ続けてもらう。
本気で悪いことをしたと思っているなら当家にも私にも悪いことはしないだろうから。
「それとセシーリア嬢の婚約者をどうするかという問題もある。ディーンズのせいで時間ばかりが浪費されてしまった。早く婚約者を決めないとな」
「そうですね」
婚期なのに結婚式間近で婚約破棄することになってしまったのだから、これから婚約者を探して婚約して信用できるか見極めて…なんてしていたら婚期を逃してしまうかもしれない。
それに婚約者にまた裏切られたら本気で行き遅れになってしまう。
「もしセシーリア嬢に意中の人がいないなら…当家の愚息と婚約するのはどうだろうか?もちろん気に入らなければ断ってくれて構わない」
この提案には悩んでしまう。
ヘインリード公爵家との縁を強めるなら悪くないけど、それは政略的な意味での話。
相手が信用できるかとは無縁だし、ディーンズを見抜けなかったヘインリード公爵閣下のご子息であることに不安を覚えてしまう。
でもまだ相手のことを知らないのだから、決めつけてしまうのはもったいない。
もし良い相手だったら、公爵閣下は私への罪悪感もあるだろうし、私を蔑ろにすることはないと思う。
もしかしたらご子息よりも私のほうを大切にしてくれるかもしれないし。
リスクは低いし嫌なら断ってもいいという閣下の言葉を信じよう。
「まずはご令息とお会いしたく思います。もちろん婚約は前向きに考えますよ」
「そうか、では後で呼ぶとしよう。繰り返しになるが嫌なら断ってくれて構わない。そのことで何かするつもりはないから安心してほしい」
「はい」
どうなるかはわからないけど、私に残された時間は短い。
その責任の一端はヘインリード公爵にもあるのだから、遠慮は不要。
貪欲なくらいでないと後悔するかもしれない。
悪くない相手なら良しとしないと。
それに…浮気したり隠し子を作るようなことをしなければいい、とも思ってしまう。
どうやらこれで私もやっと普通の幸せを手に入れられそう。
いつまでもディーンズに振り回されたり引きずられるわけにはいかないもの。
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