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第7話

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「この辺に住んでいるはずなんだが…」

あの女――名前がウィーナだったことをやっと思い出し、その辺の人に訊きながら大まかな場所を知ることができた。
久々の再会に喜ぶだろうか?

「ここか?」

みすぼらしい家は、まさに貧民の住まいとしての貫録を感じさせた。
あれだけ手切れ金があればもっと立派な家に住むことだってできただろうに。

ドアをノックして呼びかける。

「おい、ウィーナ!いるんだろう!」

物音がしてドアが開き、一人の男が姿を現した。

「ウィーナはここに住んでいるのか?」
「誰だ、お前は?」

質問にすら答えられないなんて教育がなってないな。
だから貧しく、こんな家に住んでいるのだろう。

「俺はディーンズだ。ギラルロイ家の人間だ」
「ディーンズ?ギラルロイ家?」
「ああ」

男は少し考えるような素振りを見せたが、何かに気付いたようだ。

「なるほど、お前がディーンズか」
「失礼だな。お前ごときに呼び捨てにされるとは無礼だぞ」
「はっ、平民落ちした元貴族様が偉そうに…」

男は馬鹿にするような目で見てきた。
事情があって平民になったが、俺はギラルロイ家の人間だ。
馬鹿にして許される相手ではないのだ。

「それでウィーナはいるのか?」
「その答えは…これだっ!」
「ぐはっ」

男がいきなり殴りかかってきて顔を殴られた。

「な、何をするんだ!?俺は――」

今度は蹴られた。
平民風情が俺にこんなことをして許されると思うのか!?

「ウィーナに何をするつもりなのか知らないが関わるな!俺はお前がしたことを許さない!」
「がっ…」

男はそれからも何度も何度も俺を殴りつけ蹴りつけてきた。
俺がいったい何をしたというんだ!?
どうしてお前からこんなことをされなければならないんだ!?

「はした金を渡して捨てるような奴がまたウィーナを苦しめようとするなら俺は許さない!お前はもう平民なんだ!貴族じゃないんだ!」

こいつはウィーナの恋人か何かか?
嫉妬に狂って狂暴化しているに違いない。
こいつは俺がウィーナと別れてから恋人になったに違いない。
そんな過去のことを持ち出して暴力を振るうなんて最低だな。
ウィーナだって納得して俺と別れたのに。

「このくらいで勘弁してやる。もう二度と近づくなよ?また見かけたら今度は殺すかもしれないからな」
「……」
「それと…これは慰謝料代わりに貰ってやる。あんなはした金でウィーナがどれだけ苦労したのか想像できるか?だからこれは正当な慰謝料だ」

それは勘違いだ。
ウィーナには十分な金を渡したし口外しないことにも同意していた。

こいつはウィーナのことを理由にしているだけだ。
こんな男に捕まるなんてウィーナも不幸な女だな。

もうウィーナのことは放っておこう。
こんな男と一緒にいても不幸になるだけだ。
せっかく俺が不幸になる未来から救ってやるチャンスを与えてやろうとしたのに、それ以上に不運に愛されているようだ。

……それよりも金を奪われたことのほうが問題だ。
金がなければ生きていけない。
俺にどうしろというんだ?
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