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第1話
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婚約者のディーンズ・ギラルロイとは大きな問題もなく、結婚式も間近に控えている。
このまま結婚し幸せになれると信じて疑わなかったけれど、それをひっくり返すような取り返しのつかない事実が判明した。
「隠し子がいるって…本当なの!?」
「あ…ああ、間違いじゃない。だがそれはもう済んだことだ」
済んだって…問題は私にそんな重大なことを隠していたことが問題だし、それに浮気の事実が問題なのに。
私にとってはまだ何も済んでいない問題だ。
「私にとっては済んでない問題なの。どうしてそんなことをしたの?」
「俺はセシーリアを愛しているんだ!その気持ちに嘘はない!」
はぁ…話が通じないわね……。
あえて話題を変えようとしているのか、そもそもこれがディーンズの本当の姿なのか……。
こんなことで誤魔化せるとでも思っているの?
真面目に話す気はないってこと?
いずれにせよ許すことはできない。
「話を逸らさないで。これは大切なことなのよ?浮気したことも問題だけど私に隠していたことも問題だし、それに子供まで作ってしまうなんて…酷すぎるわ」
「その程度の問題、乗り越えられなくてどうする?これからの俺たちのことを考えれば乗り越えていくべきことだろう」
その程度の問題って…婚約者を裏切ることがその程度のことって、ディーンズは何を考えているの?
それに自分が悪いとは考えていないようだし、問題の大きさを理解していない。
私をどうにか言いくるめようとするし、まともに話し合いもできない……。
きっとこれがディーンズの本当の姿なのだろう。
大きな問題が起きなければ騙され続けたかもしれないけど、今回の件ではっきりした。
ディーンズは信用できないし、もう無理。
今も必死に的外れな言い訳を続ける彼の姿を見ると不快感が積み重なっていく。
もう愛情なんてものはなく、気持ちは冷め、私は目の前の理解できない存在を冷たく見るだけだった。
もっともディーンズは私の視線になんて気が向いていないし、私の気持ちを理解することもないだろうけど。
「ねえ、ディーンズ。自分の子供だけど面倒は見ているの?」
「だからもう解決した問題だって言っただろう?どうして俺が面倒を見ないといけないんだ?」
ディーンズのことだから手切れ金でも渡して放っておいたのだと思う。
そんなことができるのは相手が平民だから。
身分差で断れない相手を都合良く扱って、邪魔になれば捨てる。
それが彼の本性なのだろう。
もし彼と結婚してしまったら私も大変な目に遭っていたに違いない。
お互いに伯爵家の人間だけど、嫁入りした妻の立場は当主に比べて弱いし、それに周囲は相手の家の関係者ばかり。
きっと弱い立場の私は孤立し意見することもできずに都合良く扱われると思う。
それにどこか感覚がおかしい人間はいくらだって問題を引き起こす。
しかも反省すらできず自分が間違っているとも思わないような人だもの。
結婚する前に本性を知ることができたのは不幸中の幸いだった。
だから私はもう遠慮しない。
「ディーンズ、婚約破棄するわ」
「何だと!?ま、待ってくれ!誤解だ!勘違いだ!」
見苦しく言い訳をするディーンズに更なる不快感を覚える。
この段階になって何が勘違いだというのか。
素直に認められずに言い訳ばかりするような人を信用できるはずもない。
彼が言い訳すればするほど私は婚約破棄が正しかったと思えた。
「見苦しいわよ。婚約破棄を翻す気はないの。大人しく諦めて」
「だから誤解だと言っているんだ!セシーリアはそんなこともわからないのか!」
…これだけ言っても反省すらできずに責任転嫁するのね。
もういいわ、私だってそこまで言われたら大人の対応なんてできない。
「どちらが正しいかなんてすぐにわかると思うわ」
「謝るなら今のうちだぞ?今ならまだ許してやってもいい」
はぁ……。
頭が痛くなってきたわ………。
もうこれ以上相手をしても無駄なので、ディーンズが何を言おうと無視して私は去った。
お父様に報告しないといけないし、私たちの婚約を推し進めたヘインリード公爵にも伝えないといけない。
ヘインリード公爵の顔に泥を塗るような結果になってしまったのだから気が重い……。
このまま結婚し幸せになれると信じて疑わなかったけれど、それをひっくり返すような取り返しのつかない事実が判明した。
「隠し子がいるって…本当なの!?」
「あ…ああ、間違いじゃない。だがそれはもう済んだことだ」
済んだって…問題は私にそんな重大なことを隠していたことが問題だし、それに浮気の事実が問題なのに。
私にとってはまだ何も済んでいない問題だ。
「私にとっては済んでない問題なの。どうしてそんなことをしたの?」
「俺はセシーリアを愛しているんだ!その気持ちに嘘はない!」
はぁ…話が通じないわね……。
あえて話題を変えようとしているのか、そもそもこれがディーンズの本当の姿なのか……。
こんなことで誤魔化せるとでも思っているの?
真面目に話す気はないってこと?
いずれにせよ許すことはできない。
「話を逸らさないで。これは大切なことなのよ?浮気したことも問題だけど私に隠していたことも問題だし、それに子供まで作ってしまうなんて…酷すぎるわ」
「その程度の問題、乗り越えられなくてどうする?これからの俺たちのことを考えれば乗り越えていくべきことだろう」
その程度の問題って…婚約者を裏切ることがその程度のことって、ディーンズは何を考えているの?
それに自分が悪いとは考えていないようだし、問題の大きさを理解していない。
私をどうにか言いくるめようとするし、まともに話し合いもできない……。
きっとこれがディーンズの本当の姿なのだろう。
大きな問題が起きなければ騙され続けたかもしれないけど、今回の件ではっきりした。
ディーンズは信用できないし、もう無理。
今も必死に的外れな言い訳を続ける彼の姿を見ると不快感が積み重なっていく。
もう愛情なんてものはなく、気持ちは冷め、私は目の前の理解できない存在を冷たく見るだけだった。
もっともディーンズは私の視線になんて気が向いていないし、私の気持ちを理解することもないだろうけど。
「ねえ、ディーンズ。自分の子供だけど面倒は見ているの?」
「だからもう解決した問題だって言っただろう?どうして俺が面倒を見ないといけないんだ?」
ディーンズのことだから手切れ金でも渡して放っておいたのだと思う。
そんなことができるのは相手が平民だから。
身分差で断れない相手を都合良く扱って、邪魔になれば捨てる。
それが彼の本性なのだろう。
もし彼と結婚してしまったら私も大変な目に遭っていたに違いない。
お互いに伯爵家の人間だけど、嫁入りした妻の立場は当主に比べて弱いし、それに周囲は相手の家の関係者ばかり。
きっと弱い立場の私は孤立し意見することもできずに都合良く扱われると思う。
それにどこか感覚がおかしい人間はいくらだって問題を引き起こす。
しかも反省すらできず自分が間違っているとも思わないような人だもの。
結婚する前に本性を知ることができたのは不幸中の幸いだった。
だから私はもう遠慮しない。
「ディーンズ、婚約破棄するわ」
「何だと!?ま、待ってくれ!誤解だ!勘違いだ!」
見苦しく言い訳をするディーンズに更なる不快感を覚える。
この段階になって何が勘違いだというのか。
素直に認められずに言い訳ばかりするような人を信用できるはずもない。
彼が言い訳すればするほど私は婚約破棄が正しかったと思えた。
「見苦しいわよ。婚約破棄を翻す気はないの。大人しく諦めて」
「だから誤解だと言っているんだ!セシーリアはそんなこともわからないのか!」
…これだけ言っても反省すらできずに責任転嫁するのね。
もういいわ、私だってそこまで言われたら大人の対応なんてできない。
「どちらが正しいかなんてすぐにわかると思うわ」
「謝るなら今のうちだぞ?今ならまだ許してやってもいい」
はぁ……。
頭が痛くなってきたわ………。
もうこれ以上相手をしても無駄なので、ディーンズが何を言おうと無視して私は去った。
お父様に報告しないといけないし、私たちの婚約を推し進めたヘインリード公爵にも伝えないといけない。
ヘインリード公爵の顔に泥を塗るような結果になってしまったのだから気が重い……。
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