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第5話
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オーネストと結ばれて一ヶ月も経たないうちに、私とディクス様は結婚し新生活を始めた。
ディクス様は結婚前から卑屈で自信なさげで自分のほうが立場が上だということを忘れるなと言っていた。
私を大切にする気もなければ愛する気もないことは言葉でも明らかだったし、態度でも行動でも明らかだった。
それは覚悟していたし、文句を言ったところで何かが良くなるものでもないし、婚約を無かったことにもできない。
諦めた私はそのまま結婚式を迎え結婚したのだ。
愛の無い関係でも結婚したのだから跡継ぎを作らなくてはならない。
幸いなことに私が純潔を失っていたことには気づかなかったようだし、婚前もそういったことは確認されなかったことも幸いだった。
そういった風習は廃れていたけど一部の貴族家ではまだ残っているらしい。
ディップトン男爵家は成り上がりだけあって古い習慣とはあまり縁が無かったことは幸いだった。
翌日からディクス様は変わっていった。
きっと初めて女性を抱いたのだと思うし、それで調子に乗ってしまったのだと思う。
卑屈な態度から強気な態度に豹変したし、やたらと自信満々で自分が優れた人間だと思い込んでしまったようだった。
私は乱暴に抱かれ、大切にされていないことを何度も理解させられた。
私の妊娠が発覚すると、今度はディクス様は娼館に通い出すようになった。
しかも私に抱いた女性のことを自分の武勇伝として語り聞かせてきたのだから質が悪い。
金で買った女性が心にもない言葉を言うことすら理解できないディクス様は滑稽だった。
女性にモテているのは自分の魅力ではなく商売だからなのに。
あえて機嫌を損ねさせたところで私には何の利益もないので、適当にすごいすごいと言っておいたらディクス様も満足したようだった。
やはり本音と建前の区別ができないのね。
やがて娼婦に飽きたのか、次はメイドだった。
ディクス様は高い給金や愛人という待遇を約束し抱いたようだった。
メイドは私が女主人であるにもかかわらず、まるで自分こそがディクス様の妻みたいな態度で私に接するようになった。
別にディクス様の寵愛を受けようが平民は平民だし、貴族社会では何の役にも立たないというのに。
ディクス様が私を大切にしないことで一部の使用人たちからも私は軽んじられた。
そして月日は流れ、子供も無事に産まれた。
待望の跡継ぎのはずなのに、ディクス様は私との子ということで不満があったようだった。
「どうせなら本当に愛する相手との子だったら良かった。名前は適当に考えておけ」
そう言われて、ディクス様にとっては私が関わった時点で何もかもが不満なのだと理解した。
子供の名前はオルトにしたけど、それをディクス様に伝えても「そうか」の一言で済まされた。
ディクス様がオルトに愛情を注がずとも私はオルトに愛情を注ぐ。
私が望んで授かった子なのだから。
むしろ下手にディクス様が関わると虐待されるかもしれないので、私がオルトを育てられるのは好都合だった。
どうせメイドたちもオルトを大切にしないだろうし、私が守らないと。
このような関係でもロロウズ子爵家はディップトン男爵家から援助を受けていたので私の意思で離婚はできない。
最初から覚悟していたし、私にはオーネストとの思い出があるから耐えられた。
オーネストは今頃何をしているのだろう?
手を尽くすと言ってくれたけど、特に何かが変わったようには思えない。
でもオーネストが嘘をつくとも思えない。
変わったといえばディクス様。
以前とは打って変わって自信満々で横暴に振る舞うようになったのもまた過去の話になってしまった。
最近ではイライラしているようだし暴言を吐くようにもなった。
何かが上手くいっていないのだと思う。
まさかオーネストが何かしたのかとも思ってしまったけど、それは希望的観測。
きっと私はオーネストに助けてほしいのだと思う。
思い出だけで十分だと思ったけど、私にはやはりオーネストが必要。
ディクス様から厳しい仕打ちを受けるほどにオーネストへの想いが募っていく。
そして決定的な出来事が生じた。
「ルルシー、お前と結婚してから何もかもが上手くいかない!全部お前のせいだ!」
ディクス様が私への不満を盛大にぶつけてきたのだ。
ディクス様は結婚前から卑屈で自信なさげで自分のほうが立場が上だということを忘れるなと言っていた。
私を大切にする気もなければ愛する気もないことは言葉でも明らかだったし、態度でも行動でも明らかだった。
それは覚悟していたし、文句を言ったところで何かが良くなるものでもないし、婚約を無かったことにもできない。
諦めた私はそのまま結婚式を迎え結婚したのだ。
愛の無い関係でも結婚したのだから跡継ぎを作らなくてはならない。
幸いなことに私が純潔を失っていたことには気づかなかったようだし、婚前もそういったことは確認されなかったことも幸いだった。
そういった風習は廃れていたけど一部の貴族家ではまだ残っているらしい。
ディップトン男爵家は成り上がりだけあって古い習慣とはあまり縁が無かったことは幸いだった。
翌日からディクス様は変わっていった。
きっと初めて女性を抱いたのだと思うし、それで調子に乗ってしまったのだと思う。
卑屈な態度から強気な態度に豹変したし、やたらと自信満々で自分が優れた人間だと思い込んでしまったようだった。
私は乱暴に抱かれ、大切にされていないことを何度も理解させられた。
私の妊娠が発覚すると、今度はディクス様は娼館に通い出すようになった。
しかも私に抱いた女性のことを自分の武勇伝として語り聞かせてきたのだから質が悪い。
金で買った女性が心にもない言葉を言うことすら理解できないディクス様は滑稽だった。
女性にモテているのは自分の魅力ではなく商売だからなのに。
あえて機嫌を損ねさせたところで私には何の利益もないので、適当にすごいすごいと言っておいたらディクス様も満足したようだった。
やはり本音と建前の区別ができないのね。
やがて娼婦に飽きたのか、次はメイドだった。
ディクス様は高い給金や愛人という待遇を約束し抱いたようだった。
メイドは私が女主人であるにもかかわらず、まるで自分こそがディクス様の妻みたいな態度で私に接するようになった。
別にディクス様の寵愛を受けようが平民は平民だし、貴族社会では何の役にも立たないというのに。
ディクス様が私を大切にしないことで一部の使用人たちからも私は軽んじられた。
そして月日は流れ、子供も無事に産まれた。
待望の跡継ぎのはずなのに、ディクス様は私との子ということで不満があったようだった。
「どうせなら本当に愛する相手との子だったら良かった。名前は適当に考えておけ」
そう言われて、ディクス様にとっては私が関わった時点で何もかもが不満なのだと理解した。
子供の名前はオルトにしたけど、それをディクス様に伝えても「そうか」の一言で済まされた。
ディクス様がオルトに愛情を注がずとも私はオルトに愛情を注ぐ。
私が望んで授かった子なのだから。
むしろ下手にディクス様が関わると虐待されるかもしれないので、私がオルトを育てられるのは好都合だった。
どうせメイドたちもオルトを大切にしないだろうし、私が守らないと。
このような関係でもロロウズ子爵家はディップトン男爵家から援助を受けていたので私の意思で離婚はできない。
最初から覚悟していたし、私にはオーネストとの思い出があるから耐えられた。
オーネストは今頃何をしているのだろう?
手を尽くすと言ってくれたけど、特に何かが変わったようには思えない。
でもオーネストが嘘をつくとも思えない。
変わったといえばディクス様。
以前とは打って変わって自信満々で横暴に振る舞うようになったのもまた過去の話になってしまった。
最近ではイライラしているようだし暴言を吐くようにもなった。
何かが上手くいっていないのだと思う。
まさかオーネストが何かしたのかとも思ってしまったけど、それは希望的観測。
きっと私はオーネストに助けてほしいのだと思う。
思い出だけで十分だと思ったけど、私にはやはりオーネストが必要。
ディクス様から厳しい仕打ちを受けるほどにオーネストへの想いが募っていく。
そして決定的な出来事が生じた。
「ルルシー、お前と結婚してから何もかもが上手くいかない!全部お前のせいだ!」
ディクス様が私への不満を盛大にぶつけてきたのだ。
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