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第10話

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レーヴァン様との婚約を祝福され、できるだけ早く結婚することで意見は一致し、関係者から反対意見はなかった。
本来であれば喜びが溢れるはずの毎日なのに、私には一つだけ不安に思うことがあった。
それはルウィンの存在。

ルウィンから何の接触も無いことが不気味だった。
あのルウィンだから文句を言ってきて私を責めて謝罪しろとでも言い出しそうだし、いくらお父様が心配しなくても大丈夫だと言われてもルウィンを知っている私は安心できない。

この心配を隠しておくことはできず、レーヴァン様に打ち明けることにしたけど、驚くべきことを告げられた。

「ああ、ルウィンね。彼は死んだよ」
「えっ…」

急に死んだと言われても理解が追い付かない。
でも…別に心が痛んだりはしなかった。

「浮気相手をめぐって男とトラブルになって殺されたらしんだ。だからもう大丈夫。それにバウター男爵家も僕たちに手を出さないことで話はついているから」
「そう…だったの……」

ルウィンらしい最期だと思うし、浮気相手のことが私よりも大切だったと証明されたようで安心できた。
だって私のほうが大切なんて嘘でも言われたらレーヴァン様に悪いと思ってしまうだろうから。
そこまで私の邪魔をするなら私もどうしてしまうかわからないけど、もうその可能性は無くなったのだから安心できる。

それにしてもレーヴァン様は私の知らないところでいろいろと動いていたのね。
バウター男爵家と話をつけたのもさすがだと思った。
ルウィンはともかく、バウター男爵ならルウィンよりも常識人だろうし。

「エラステラを悲しませたような男には相応しい末路だよ」
「そうね」

一瞬、レーヴァン様の笑顔の裏側に何かがあるように感じてしまった。
気のせいかもしれないけど……もしかしたら私のために何かしてくれたのかもしれない。
私たちの幸せを邪魔するなら許さないという気持ちの表れかもしれない。

本当のことはどうでもいいし、話さないということは私に余計な心配や気苦労をかけたくないというレーヴァン様の優しさだろう。
だからルウィンのことはもう終わり。

「話は変わるけど新居には使用人を雇わないといけないでしょう?心当たりがあるから任せてくれない?」
「いいよ。エラステラが選ぶ使用人だから、きっと良い人たちなんだろうね」
「ええ、それは保障するわ」

今度こそ私は幸せになる。
だってレーヴァン様と結婚するのだから。
私がこの人だと思えた人だもの。
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