私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

第6話

サバーナから結婚の催促が激しくなってきた。
結婚するならエラステラと離婚しなくてはならないし、また顔を会わせるのも不愉快だ。
どうにか言い訳して時間を稼いできたが、そろそろサバーナも限界かもしれないな。

「いつになったら結婚してくれるの？本当に私と結婚する気があるの？」
「結婚する気はある。でもそう簡単なことではないんだ。サバーナには迷惑ばかりかけるけど、もう少しの辛抱だよ」
「いつもそう言って先延ばしにしてきたじゃない。いい？今度こそ具体的な話を進めて。そうしないと叩きだすわよ？」
「わ、わかった、わかったから落ち着いてくれよ」
「わかったならさっさとどうにかしてよ！」

追い出されるように追い出されてしまった。
こうなるとサバーナの機嫌を治すにはエラステラと離婚するしかないな。
せめて離婚が成立する具体的な日程まで決めないとサバーナは納得しないだろう。

仕方ないがエラステラと話し合うか。

俺は数ヶ月ぶりとなる自宅へと向かった。

＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

おかしい。
俺は自宅に帰ったはずなのに他人が住んでいた。
俺の家だと言っても理解されず、逆に俺を不審者扱いしてきやがった。
しかも家を買っただと？
あそこは俺の家だから売っていない。
つまり家を乗っ取るという犯罪者集団ということだ。

それなのに自分たちが正しいと信じて通報した。
通報するのは俺の正しさを証明するためにも必要なことだから構わなかった。
だが衛兵がやってきたら俺だけが身柄を拘束されてしまった。
あいつら絶対におかしい。
どうしてバウター男爵家の一員である俺が牢屋に入らなければならないというのか。

「俺は無実だ！無実で投獄したらどうなるのかわかっているのか！俺はバウター男爵家の者だぞ！」

やはり返事はない。
こうして俺の身分を明かしているというのに親は助けにも来ない。
きっと衛兵たちが連絡しないのだろう。
親が出てくれば平民どもは最悪処刑されるかもしれないし、少なくとも重い罰が与えられるに決まっている。
そうならないために連絡しないのだろうから平民の保身を優先する仕事ぶりには驚かされる。

＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊　＊

結局三日ほど牢屋に入れられ、親の使いがやって来て俺は解放された。
事情を説明するよう親から呼び出されたので実家へと向かった。
俺は被害者だし俺の仕打ちを知れば衛兵たちにも抗議してくれるだろう。
俺を犯罪者扱いしやがったことを後悔させてやる。

実家に着き親父と久々に顔を合わせた。
だが再会を喜ぶでもなく、怒りのままに殴りつけられた。

「この馬鹿者が！！！」
「ごっ」

誤解だと言う間もなく殴られた。
親父も話を聞かないなんて酷い。
冤罪で捕まったのは俺の責任じゃない。
だからまずは話を聞いてほしい。