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第3話
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当主であるルウィンが不在である今、その妻である私が最高権力者として扱われる。
離婚する以上、このまま使用人を雇い続ける訳にもいかないし、どうせルウィンは財産分与なんてするつもりもないだろうから私のほうで上手くやっておく。
文句があるなら言ってくれればいい。
ということでまずは使用人たちに解雇を告げなくてはならない。
そのために使用人たちを集めさせた。
「今度ルウィンと離婚することになったわ。あなたたちには申し訳ないけど解雇することになるわ。急な話だし、その分は退職金に色をつけてあげる」
使用人たちは動揺することもなく私の言葉を聞いている。
「いつまで雇えるかは財産の処分や離婚の手続きの進み方次第だけど、いずれにせよすぐに路頭に迷うようなことはさせないから安心して。以上よ。仕事に戻って」
使用人たちは一礼し仕事に戻っていった。
使用人たちはよく働いてくれたから満足だったし、離れ離れになってしまうのは少し悲しくもある。
でも離婚は避けられず解雇もまた避けられない。
使用人たちのことを放置して私が出て行ってしまえば給金の支払いも滞るだろうし、そうなることに比べれば早いうちに解雇してしまったほうがいい。
使用人たちのためにも財源を確保しないと。
ルウィンの趣味で揃えた意味不明の絵画や古ぼけた壺も処分するし、館ごと売りに出してしまおう。
文句があれば言ってくれれば中止するけど、ルウィンは文句がないようだから問題ないわ。
その後も使用人たちに指示を出して商人を呼ぶ手配もさせた。
いくらになるかわからないけど、最悪でも館はそれなりに高く売れるはず。
* * * * * * * * * *
数日後、商人がやって来て売却予定の品々を査定してもらった。
「大変お伝えしにくいのですが、これらの品々にはほとんど価値がございません」
「そうだったの。そんな気がしていたわ」
実家と関係がある商人だから騙そうとしているとは思えなかった。
こんな価値のないものを高値で集めたルウィンは悪徳商人たちのお得意様だっただろう。
私の言葉を聞いてくれたならこんな物に大金を出すようなことはなかったのに。
もしこのまま結婚していればルウィンが浪費して借金まで作ってしまうかもしれない。
やはり早めに離婚という決断を下して間違いではなかった。
「必要なら個別の査定額も出しますがどうなさいますか?」
「貴方のことは信用しているもの。個別の査定額は不要よ。せっかくだから安く買い叩いて利益を出しなさい」
普通ならそのようなことは言われないであろう商人は驚きの表情を浮かべた。
演技のようにも思えるし、私の提案がそれだけ魅力的だと表現しているのかもしれない。
別にそういった小細工はしなくていいのに。
実家にいた頃からの付き合いだし、どうせほとんどルウィンが出した財産だから買い叩いて商人の利益にしてもらったほうがいいわ。
商人に恩も売れるし。
「お心遣い感謝いたします。それでは商品の引取りの日時と支払いですが希望はございますか?」
「後は執事と相談して」
「かしこまりました」
こうして不要品の処分も進んでいった。
離婚する以上、このまま使用人を雇い続ける訳にもいかないし、どうせルウィンは財産分与なんてするつもりもないだろうから私のほうで上手くやっておく。
文句があるなら言ってくれればいい。
ということでまずは使用人たちに解雇を告げなくてはならない。
そのために使用人たちを集めさせた。
「今度ルウィンと離婚することになったわ。あなたたちには申し訳ないけど解雇することになるわ。急な話だし、その分は退職金に色をつけてあげる」
使用人たちは動揺することもなく私の言葉を聞いている。
「いつまで雇えるかは財産の処分や離婚の手続きの進み方次第だけど、いずれにせよすぐに路頭に迷うようなことはさせないから安心して。以上よ。仕事に戻って」
使用人たちは一礼し仕事に戻っていった。
使用人たちはよく働いてくれたから満足だったし、離れ離れになってしまうのは少し悲しくもある。
でも離婚は避けられず解雇もまた避けられない。
使用人たちのことを放置して私が出て行ってしまえば給金の支払いも滞るだろうし、そうなることに比べれば早いうちに解雇してしまったほうがいい。
使用人たちのためにも財源を確保しないと。
ルウィンの趣味で揃えた意味不明の絵画や古ぼけた壺も処分するし、館ごと売りに出してしまおう。
文句があれば言ってくれれば中止するけど、ルウィンは文句がないようだから問題ないわ。
その後も使用人たちに指示を出して商人を呼ぶ手配もさせた。
いくらになるかわからないけど、最悪でも館はそれなりに高く売れるはず。
* * * * * * * * * *
数日後、商人がやって来て売却予定の品々を査定してもらった。
「大変お伝えしにくいのですが、これらの品々にはほとんど価値がございません」
「そうだったの。そんな気がしていたわ」
実家と関係がある商人だから騙そうとしているとは思えなかった。
こんな価値のないものを高値で集めたルウィンは悪徳商人たちのお得意様だっただろう。
私の言葉を聞いてくれたならこんな物に大金を出すようなことはなかったのに。
もしこのまま結婚していればルウィンが浪費して借金まで作ってしまうかもしれない。
やはり早めに離婚という決断を下して間違いではなかった。
「必要なら個別の査定額も出しますがどうなさいますか?」
「貴方のことは信用しているもの。個別の査定額は不要よ。せっかくだから安く買い叩いて利益を出しなさい」
普通ならそのようなことは言われないであろう商人は驚きの表情を浮かべた。
演技のようにも思えるし、私の提案がそれだけ魅力的だと表現しているのかもしれない。
別にそういった小細工はしなくていいのに。
実家にいた頃からの付き合いだし、どうせほとんどルウィンが出した財産だから買い叩いて商人の利益にしてもらったほうがいいわ。
商人に恩も売れるし。
「お心遣い感謝いたします。それでは商品の引取りの日時と支払いですが希望はございますか?」
「後は執事と相談して」
「かしこまりました」
こうして不要品の処分も進んでいった。
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