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第2話

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「サバーナといると心が癒されるよ」
「まあ、嬉しいこと言ってくれるのね」

エラステラとの生活は窮屈だったし、そもそも愛していない女との婚約も苦痛だった。
親が決めた婚約がこんなにも面倒なものだとは知らなかったし、いっそのこと法で禁止してくれればいい。
もう手遅れだけどな。

やるせない日々に酒を飲んで気を紛らわせているときに出会ったのがサバーナだった。

サバーナは平民だったが美人で体つきも文句なし。
口説いたら俺の魅力を理解してくれて愛し合う関係になれた。

あのままエラステラと暮らしていたら俺はどうにかなってしまったと思う。
サバーナがいてくれて俺は救われた。

「帰らなくてもいいの?今までは朝には帰っていたじゃない」
「ちょっといろいろとあってな。このままいたら迷惑か?」
「迷惑じゃないけど…ずっといるなら関係をはっきりさせてもらわないと」

なるほど、確かに愛し合う者同士だから結婚すべきだな。
エラステラも離婚には積極的なようだから離婚さえ成立すればサバーナと結婚しても文句は言われないだろう。

「今すぐは無理だが…結婚するか?」
「ほんと!?嬉しいわ!」

サバーナが抱きついてきた。
いろいろと嬉しい気持ちは理解できる。
エラステラでは味わうことのなかった満足感や幸福感がサバーナとの間にはある。

やはり俺にはサバーナしかいない。
最初からサバーナと結婚すべきだったし、出会いが遅くなってしまったことが悔やまれる。
エラステラと婚約する前に出会えていれば親が決めた婚約だろうと覆してやったのに。

「ルウィンと結婚したら私も貴族になれるの?」
「正式には爵位を継いだ人だけが貴族だ。だがその家族も貴族家の一員として貴族と見なされるのが一般的だな」
「それなら私も貴族になれるのね」
「まあ大体その通りだな」

俺は爵位を継いでいないし継ぐ予定もない。
でも親父は貴族だから俺も貴族家の一員だし、その妻になるならサバーナも対外的には貴族として扱われるだろう。
だがそんな身分に関係なくルウィンはサバーナのことを愛してしまったんだ。

「身分なんて関係なく俺はサバーナのことを愛している。その気持ちに嘘はない」
「わかっているわ。それで結婚できるのはいつ頃になりそうなの?」
「それは未定だな。俺だって早く結婚したいが、そう簡単ではないからな…」

エラステラの気が変わって離婚を渋ったら大変なことになる。
ここはエラステラを信じて刺激せずに離婚することを優先するか。
それに放っておけば気持ちも落ち着いて話が通じるようになるかもしれない。
やはり時間は必要だ。
サバーナには申し訳ないと思うが許して欲しい。

「…奥さんが邪魔してくるの」
「そうだ。だから予定が立たないんだ。サバーナには本当に申し訳ないと思っている」
「しかたないわ」

残念そうな表情のサバーナを見ると心が痛む。
エラステラはどこまで俺の邪魔をすれば気が済むというのか。
きっと気が済むことなんてないだろう。

望まない相手と結婚なんてすべきではないな。
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