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第8話
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ターダム男爵家から連絡があり、ダンク様が廃嫡され退学させられることになったとのこと。
ダンク様はターダム男爵の跡継ぎとして相応しくないと判断されたのだろう。
ターダム男爵の真意を察した私は見事に役割を果たしたのだ。
ターダム男爵に恩を売ったことになるかはわからないけど、少なくともダンク様のしてきたことを周知することに同意してくれたのだから、私にとって利益にはなったということ。
結果的にダンク様が名誉を損ない廃嫡され退学させられることで私の名誉は守られた。
こうなったのもシャーロット様から貰った勇気があったから。
あの日、シャーロット様の姿を見なかったら今もダンク様のことで悩んでいたかもしれない。
シャーロット様はどこで何をしているのだろうか。
今も変わらずに輝いているのだろうか。
私はシャーロット様へ感謝し、幸せになれることを祈る。
こうして平穏な学園生活を取り戻したのだった。
* * * * * * * * * *
そういえばゼーレイン殿下が浮気したのかどうか、真相は不明のままだった。
王子の不祥事なのだから王家が隠匿したのかもしれないけど、浮気相手として怪しい人の名前すら出てこないのは何かがおかしいと思った。
それにゼーレイン殿下が浮気相手に夢中だったのであれば、シャーロット様を排除して新たな婚約者に迎えてもおかしくはない。
だからこそ未だに婚約者のいないゼーレイン殿下が本当に浮気していたのか疑問だ。
その疑問が解決することもなく時間が過ぎた。
* * * * * * * * * *
気が付けばシャーロット様が婚約破棄され追放処分を受けてから1年以上が過ぎていた。
いなくて当然の存在となり、噂にすら名前が出なくなった。
今、一番の噂は隣国から留学生を迎えるというものだ。
隣国との関係は近年悪化してきている。
このままでは数年以内に戦争もあり得るとも噂されている。
その状況での留学生なのだから、関係を改善させるためなのかもしれない。
しかも相手は公爵家の令嬢という。
十分な身分だから戦争の意思はないのかもしれない。
油断させるために犠牲にすることを前提にしているのかもしれないけど。
そして行われる留学生歓迎パーティー。
相手の身分が身分だし、留学生を歓迎することで我が国が関係改善を望んでいるというメッセージを込めてのものだろう。
問題は留学生だった。
パーティーという場で挨拶に現れた女性の姿を見た人たちがザワザワと何か言っている。
その女性を見ればそう反応してしまうのも当然だ。
だって間違いなくシャーロット様だったから。
追放されたはずなのに、どうして外国の留学生として迎え入れられたのか謎だった。
周囲がどうあれシャーロット様は以前と変わらない堂々とした姿で人前に出た。
…ただ、その目はかつてのような誇り高さを感じさせない。
「皆様、このような歓迎パーティーの場を用意してくださいましたことを真に嬉しく思います。わたくし、シャルロッテ・リヴィエールは国を代表して感謝の意を伝えさせていただきます」
シャーロット様なのにシャルロッテ…様?
隣国風の名前の読み方だけど……。
「きっと歓迎してくださると信じておりますし、まさかわたくしに無礼なことを働くようなことはないと信じております。何か言うべきことはございませんか、ゼーレイン殿下」
まさかとは思うけど、全てはゼーレイン殿下への復讐のためだったのかもしれない。
シャーロット様に何があったのかはわからないけど、理不尽な扱いを受けて何もしないようなシャーロット様ではなかったのだ。
「貴女を歓迎しよう、シャルロッテ嬢」
「あら、わたしくが望んでいる言葉はそれではありませんの。いい加減浮気を認めてくださいませんか?」
「浮気なんてしていない。認めることはできない」
「それが貴国の王子であるゼーレイン殿下の態度なのですね。どうやら両国間の関係を改善するどころか戦争でもしたいように思えてしまいますわね」
「そのようなことはない。だが事実ではないことは認められない」
「今はまだ構いませんわ。いつか事実を認めてくださると信じておりますわ」
国家間の関係を危うくしてまでゼーレイン殿下が浮気していないと嘘をつき続けるとも思えない。
…以前もゼーレイン殿下は浮気をしていない、誤解だと主張していた。
それを信じなかったのはシャーロット様だし、平手打ちしたのも誤解してのものだったのかもしれない。
私の中でシャーロット様のイメージが崩れていく。
今のシャーロット様は復讐心に囚われてしまった恐ろしい何かになってしまった。
復讐心を利用され両国間での問題に発展させ戦争の理由にしたい隣国の思惑に乗せられただけかもしれない。
かつて憧れていたシャーロット様はもういない。
私はあのようになりたくはないし、なれないと思った。
シャーロット様には私の憧れでいてほしかった。
それが自分勝手な願いだということは理解しているけど。
もう憧れることはやめよう。
私は私なのだから、私らしく生きなくては。
ダンク様はターダム男爵の跡継ぎとして相応しくないと判断されたのだろう。
ターダム男爵の真意を察した私は見事に役割を果たしたのだ。
ターダム男爵に恩を売ったことになるかはわからないけど、少なくともダンク様のしてきたことを周知することに同意してくれたのだから、私にとって利益にはなったということ。
結果的にダンク様が名誉を損ない廃嫡され退学させられることで私の名誉は守られた。
こうなったのもシャーロット様から貰った勇気があったから。
あの日、シャーロット様の姿を見なかったら今もダンク様のことで悩んでいたかもしれない。
シャーロット様はどこで何をしているのだろうか。
今も変わらずに輝いているのだろうか。
私はシャーロット様へ感謝し、幸せになれることを祈る。
こうして平穏な学園生活を取り戻したのだった。
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そういえばゼーレイン殿下が浮気したのかどうか、真相は不明のままだった。
王子の不祥事なのだから王家が隠匿したのかもしれないけど、浮気相手として怪しい人の名前すら出てこないのは何かがおかしいと思った。
それにゼーレイン殿下が浮気相手に夢中だったのであれば、シャーロット様を排除して新たな婚約者に迎えてもおかしくはない。
だからこそ未だに婚約者のいないゼーレイン殿下が本当に浮気していたのか疑問だ。
その疑問が解決することもなく時間が過ぎた。
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気が付けばシャーロット様が婚約破棄され追放処分を受けてから1年以上が過ぎていた。
いなくて当然の存在となり、噂にすら名前が出なくなった。
今、一番の噂は隣国から留学生を迎えるというものだ。
隣国との関係は近年悪化してきている。
このままでは数年以内に戦争もあり得るとも噂されている。
その状況での留学生なのだから、関係を改善させるためなのかもしれない。
しかも相手は公爵家の令嬢という。
十分な身分だから戦争の意思はないのかもしれない。
油断させるために犠牲にすることを前提にしているのかもしれないけど。
そして行われる留学生歓迎パーティー。
相手の身分が身分だし、留学生を歓迎することで我が国が関係改善を望んでいるというメッセージを込めてのものだろう。
問題は留学生だった。
パーティーという場で挨拶に現れた女性の姿を見た人たちがザワザワと何か言っている。
その女性を見ればそう反応してしまうのも当然だ。
だって間違いなくシャーロット様だったから。
追放されたはずなのに、どうして外国の留学生として迎え入れられたのか謎だった。
周囲がどうあれシャーロット様は以前と変わらない堂々とした姿で人前に出た。
…ただ、その目はかつてのような誇り高さを感じさせない。
「皆様、このような歓迎パーティーの場を用意してくださいましたことを真に嬉しく思います。わたくし、シャルロッテ・リヴィエールは国を代表して感謝の意を伝えさせていただきます」
シャーロット様なのにシャルロッテ…様?
隣国風の名前の読み方だけど……。
「きっと歓迎してくださると信じておりますし、まさかわたくしに無礼なことを働くようなことはないと信じております。何か言うべきことはございませんか、ゼーレイン殿下」
まさかとは思うけど、全てはゼーレイン殿下への復讐のためだったのかもしれない。
シャーロット様に何があったのかはわからないけど、理不尽な扱いを受けて何もしないようなシャーロット様ではなかったのだ。
「貴女を歓迎しよう、シャルロッテ嬢」
「あら、わたしくが望んでいる言葉はそれではありませんの。いい加減浮気を認めてくださいませんか?」
「浮気なんてしていない。認めることはできない」
「それが貴国の王子であるゼーレイン殿下の態度なのですね。どうやら両国間の関係を改善するどころか戦争でもしたいように思えてしまいますわね」
「そのようなことはない。だが事実ではないことは認められない」
「今はまだ構いませんわ。いつか事実を認めてくださると信じておりますわ」
国家間の関係を危うくしてまでゼーレイン殿下が浮気していないと嘘をつき続けるとも思えない。
…以前もゼーレイン殿下は浮気をしていない、誤解だと主張していた。
それを信じなかったのはシャーロット様だし、平手打ちしたのも誤解してのものだったのかもしれない。
私の中でシャーロット様のイメージが崩れていく。
今のシャーロット様は復讐心に囚われてしまった恐ろしい何かになってしまった。
復讐心を利用され両国間での問題に発展させ戦争の理由にしたい隣国の思惑に乗せられただけかもしれない。
かつて憧れていたシャーロット様はもういない。
私はあのようになりたくはないし、なれないと思った。
シャーロット様には私の憧れでいてほしかった。
それが自分勝手な願いだということは理解しているけど。
もう憧れることはやめよう。
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