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第6話
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数日後、お父様のターダム男爵の話し合いが終わり、私はお父様から内容を聞かされた。
「妥当な慰謝料だと思います。それよりも事実を周知させることに同意を得られたことが嬉しいです」
「それなら良かった」
私は笑顔になり、お父様も笑顔になる。
「これは直接関係ないが、もし今度またダンクが問題を起こすようならターダム男爵も厳しく罰を与えると言っていた」
「そうだったのですね」
これは…問題を起こすようにしろということ?
ターダム男爵にとって問題を起こすようなダンクは厄介者だろう。
それが嫡男という立場であるからターダム男爵家の存続を考えれば排除したほうがいいに決まっている。
他にも弟たちがいるのだから、明言していないけどターダム男爵の真意はダンクの排除なのだと思う。
そうでもなければ事実を周知させることに同意なんてしないだろうから。
お父様の顔を立てつつ自分が望む結果を、他人を利用して実現させようとするなんてターダム男爵は油断ならない。
でもお父様との話し合いは終わったのだから、今になって中止することもできない。
私はダンク様との事実関係を周知しなくてはならない。
* * * * * * * * * *
私は友人知人に話を広めた。
話を聞いた人が話を広め、驚くほどの速さで話が広まっていった。
その結果、怒ったダンク様が私の目の前にいる。
「よくも変な噂を広めてくれたな…!」
「これはラールデン男爵家とターダム男爵家との合意によるものです。それにターダム男爵も望んだことですから」
「適当なことを言うな!」
「無理難題を言わないでください」
「お前はいつも口だけは達者だな!」
「声を荒げて言い分を認めさせようとするダンク様よりもまともだと思います」
「減らず口を……!」
「ダンク様も懲りない人ですね」
ダンク様が理解してくれないので、また同じことを言い出し、私は呆れつつも同じように、あるいは別の切り口で反論した。
このようなやり取りをしていれば人が集まってくるのも当然。
周知した噂のこともあり、私たちのやり取りは注目されている。
これだけ人目があればダンク様の醜態を葬り去ることはできず、逆に率先して広めてくれるだろう。
だから私は仕上げに入る。
「そんなにデイジーのことが好きだったのですね。私を蔑ろにしたのも婚約破棄したのも納得できます。でもデイジーはダンク様のことを迷惑に感じているようですけど?」
「お前にデイジーの何がわかる!俺の気持ちを知らないで軽々しく口にするな!」
本当にデイジーがダンク様の忘れられない女性だったのか確証は無かったけど、これだけ怒るのだから間違いではなかった。
それにこれだけ本気で怒れば私を大切にしていなかったことも事実だと周囲に自白したようなものだし、デイジーへの気持ちが嘘でないことも自爆で周知してくれた。
熱くなってしまったダンク様の目を覚まさせてあげないと。
私はダンク様との距離を詰め、あの日見たシャーロット様へ平手打ちを思い出し、ダンク様にぶつける。
パシッと音が響き、周囲からは歓声が上がった。
「すげぇ、本気で叩いたぞ」
「婚約者を大切にしないで他の女性のことを愛してしまえば当然の報いよ」
「ははっ、ダンクの情けない姿、見たか?」
「悪くない平手打ちね」
「ふふふっ、女を怒らせると怖いのよ」
周囲の感想はともかく、これでダンク様の面目は完全に潰れた。
「またぶったな!みんな、これがリーディアの本性だ!こんな暴力的な女だったんだ!」
自らを弁明するダンク様。
「殴られて当然じゃない」
「言い訳か。ダンクは見苦しいな」
「あれって逆ギレ?ターダム男爵家ってその程度の家柄だったの?」
「みっともねー」
「この期に及んで見苦しいわね」
周囲の反応も散々だった。
最後は自爆するなんて、さすがダンク様。
ターダム男爵の真意を察した私は見事に役割を果たした。
後はダンク様がどう処分されるのかを楽しみに待つだけ。
「妥当な慰謝料だと思います。それよりも事実を周知させることに同意を得られたことが嬉しいです」
「それなら良かった」
私は笑顔になり、お父様も笑顔になる。
「これは直接関係ないが、もし今度またダンクが問題を起こすようならターダム男爵も厳しく罰を与えると言っていた」
「そうだったのですね」
これは…問題を起こすようにしろということ?
ターダム男爵にとって問題を起こすようなダンクは厄介者だろう。
それが嫡男という立場であるからターダム男爵家の存続を考えれば排除したほうがいいに決まっている。
他にも弟たちがいるのだから、明言していないけどターダム男爵の真意はダンクの排除なのだと思う。
そうでもなければ事実を周知させることに同意なんてしないだろうから。
お父様の顔を立てつつ自分が望む結果を、他人を利用して実現させようとするなんてターダム男爵は油断ならない。
でもお父様との話し合いは終わったのだから、今になって中止することもできない。
私はダンク様との事実関係を周知しなくてはならない。
* * * * * * * * * *
私は友人知人に話を広めた。
話を聞いた人が話を広め、驚くほどの速さで話が広まっていった。
その結果、怒ったダンク様が私の目の前にいる。
「よくも変な噂を広めてくれたな…!」
「これはラールデン男爵家とターダム男爵家との合意によるものです。それにターダム男爵も望んだことですから」
「適当なことを言うな!」
「無理難題を言わないでください」
「お前はいつも口だけは達者だな!」
「声を荒げて言い分を認めさせようとするダンク様よりもまともだと思います」
「減らず口を……!」
「ダンク様も懲りない人ですね」
ダンク様が理解してくれないので、また同じことを言い出し、私は呆れつつも同じように、あるいは別の切り口で反論した。
このようなやり取りをしていれば人が集まってくるのも当然。
周知した噂のこともあり、私たちのやり取りは注目されている。
これだけ人目があればダンク様の醜態を葬り去ることはできず、逆に率先して広めてくれるだろう。
だから私は仕上げに入る。
「そんなにデイジーのことが好きだったのですね。私を蔑ろにしたのも婚約破棄したのも納得できます。でもデイジーはダンク様のことを迷惑に感じているようですけど?」
「お前にデイジーの何がわかる!俺の気持ちを知らないで軽々しく口にするな!」
本当にデイジーがダンク様の忘れられない女性だったのか確証は無かったけど、これだけ怒るのだから間違いではなかった。
それにこれだけ本気で怒れば私を大切にしていなかったことも事実だと周囲に自白したようなものだし、デイジーへの気持ちが嘘でないことも自爆で周知してくれた。
熱くなってしまったダンク様の目を覚まさせてあげないと。
私はダンク様との距離を詰め、あの日見たシャーロット様へ平手打ちを思い出し、ダンク様にぶつける。
パシッと音が響き、周囲からは歓声が上がった。
「すげぇ、本気で叩いたぞ」
「婚約者を大切にしないで他の女性のことを愛してしまえば当然の報いよ」
「ははっ、ダンクの情けない姿、見たか?」
「悪くない平手打ちね」
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「またぶったな!みんな、これがリーディアの本性だ!こんな暴力的な女だったんだ!」
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「言い訳か。ダンクは見苦しいな」
「あれって逆ギレ?ターダム男爵家ってその程度の家柄だったの?」
「みっともねー」
「この期に及んで見苦しいわね」
周囲の反応も散々だった。
最後は自爆するなんて、さすがダンク様。
ターダム男爵の真意を察した私は見事に役割を果たした。
後はダンク様がどう処分されるのかを楽しみに待つだけ。
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