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第3話
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ダンク様から婚約破棄されてしまったのだから、お父様に知らせない訳にはいかない。
重大な出来事だけど領地にいるお父様に直接伝えることもできないので、手紙を書いて知らせることにする。
できるだけ詳しい経緯を書いておく。
もちろん脚色したりはせずに、極力客観的な事実を伝えるようにした。
それからの学園生活は以前と変わらなかった。
ダンク様は以前から私を避けたり放置していたので、婚約関係が無くなったところで表面的には何も変わらなかった。
その事実が、やはり私は大切にされていなかったのだと私に追い討ちをかける。
過去を思い出しても辛くなるだけなので、今は前を向く。
私に勇気をくれたシャーロット様のように、何があっても堂々として、常に前向きでありたい。
* * * * * * * * * *
そのシャーロット様だけど、やはりゼーレイン殿下は何もせずにはいられなかったようだ。
学園では社交パーティーの練習のために、生徒を対象としたパーティーが定期的に開かれる。
その場での出来事だった。
「シャーロット・サーリッシュ!先日のお前の愚行を許すことはできない!婚約を破棄し、国外追放処分とする!」
「……それが王族としての言葉ですのね。わかりましたわ」
わざわざこの場で婚約破棄を告げたのだから、衆目に晒して恥をかかせる意図もあったのだろう。
でも動揺せず、事実をそのままに受け入れたシャーロット様のほうが大物に思えた。
言い訳もしないし、国外追放処分を受けても平然としているのだから、自分の行為に何の後悔もないということ。
やはりシャーロット様はすごい。
自分のことを振り返ると、少しはシャーロット様に近づけたかなと自分を褒めたくなってしまう。
「あっさりと受け入れるのだな。それだけ俺への未練もなければ愛も無かったということか」
「未練なんてありませんわ。浮気するような方への愛がどうして残っていると思われるのでしょうか?わたくしにはそれが不思議でなりませんわ」
「だから浮気なんかしていないと言っているだろう。俺を信じないのはよく理解している。お前が俺を信じようとしないこともな」
「今になって何をおっしゃろうとも関係は戻ることなんてありませんわ。もう婚約破棄なされたというのに、未練が残っていらっしゃるのは殿下のほうではございませんの?」
「くっ、やはりお前は生意気なんだ。もういい!さっさと出ていけ!」
ゼーレイン殿下に命令され、シャーロット様は公爵令嬢として完璧なカーテシーを見せ、会場の外へと向かって堂々と歩いて行った。
カーテシーも見事だったし、追放されても敗者のようには見えなかった。
むしろ最後まで見苦しい様を晒したのはゼーレイン殿下のほうだった。
やはりシャーロット様はすごい。
憧れてしまう。
国外追放処分なのだから、もう会うことはないだろう。
でも私は忘れない。
シャーロット様のようになりたいと思ったことも、勇気をもらったことも、最後まで毅然とした姿を見せてくれたことも。
「パーティーの邪魔をしてすまなかった。さあ、気分を変えて楽しんでくれ!」
ゼーレイン殿下がそう言っても会場の空気は重いままで、ゼーレイン殿下の評価を表しているように思えた。
重大な出来事だけど領地にいるお父様に直接伝えることもできないので、手紙を書いて知らせることにする。
できるだけ詳しい経緯を書いておく。
もちろん脚色したりはせずに、極力客観的な事実を伝えるようにした。
それからの学園生活は以前と変わらなかった。
ダンク様は以前から私を避けたり放置していたので、婚約関係が無くなったところで表面的には何も変わらなかった。
その事実が、やはり私は大切にされていなかったのだと私に追い討ちをかける。
過去を思い出しても辛くなるだけなので、今は前を向く。
私に勇気をくれたシャーロット様のように、何があっても堂々として、常に前向きでありたい。
* * * * * * * * * *
そのシャーロット様だけど、やはりゼーレイン殿下は何もせずにはいられなかったようだ。
学園では社交パーティーの練習のために、生徒を対象としたパーティーが定期的に開かれる。
その場での出来事だった。
「シャーロット・サーリッシュ!先日のお前の愚行を許すことはできない!婚約を破棄し、国外追放処分とする!」
「……それが王族としての言葉ですのね。わかりましたわ」
わざわざこの場で婚約破棄を告げたのだから、衆目に晒して恥をかかせる意図もあったのだろう。
でも動揺せず、事実をそのままに受け入れたシャーロット様のほうが大物に思えた。
言い訳もしないし、国外追放処分を受けても平然としているのだから、自分の行為に何の後悔もないということ。
やはりシャーロット様はすごい。
自分のことを振り返ると、少しはシャーロット様に近づけたかなと自分を褒めたくなってしまう。
「あっさりと受け入れるのだな。それだけ俺への未練もなければ愛も無かったということか」
「未練なんてありませんわ。浮気するような方への愛がどうして残っていると思われるのでしょうか?わたくしにはそれが不思議でなりませんわ」
「だから浮気なんかしていないと言っているだろう。俺を信じないのはよく理解している。お前が俺を信じようとしないこともな」
「今になって何をおっしゃろうとも関係は戻ることなんてありませんわ。もう婚約破棄なされたというのに、未練が残っていらっしゃるのは殿下のほうではございませんの?」
「くっ、やはりお前は生意気なんだ。もういい!さっさと出ていけ!」
ゼーレイン殿下に命令され、シャーロット様は公爵令嬢として完璧なカーテシーを見せ、会場の外へと向かって堂々と歩いて行った。
カーテシーも見事だったし、追放されても敗者のようには見えなかった。
むしろ最後まで見苦しい様を晒したのはゼーレイン殿下のほうだった。
やはりシャーロット様はすごい。
憧れてしまう。
国外追放処分なのだから、もう会うことはないだろう。
でも私は忘れない。
シャーロット様のようになりたいと思ったことも、勇気をもらったことも、最後まで毅然とした姿を見せてくれたことも。
「パーティーの邪魔をしてすまなかった。さあ、気分を変えて楽しんでくれ!」
ゼーレイン殿下がそう言っても会場の空気は重いままで、ゼーレイン殿下の評価を表しているように思えた。
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