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第2話

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ランファス殿下の婚約者に選ばれたのが私だと知り、やはり妹のアレーラは文句を言ってきた。

「お姉様はズルいです!ランファス殿下の婚約者に選ばれるなんて!私の気持ちを知っていたくせに酷いです!」
「私が望んで婚約者になった訳ではないの。お父様だって力が及ばなかったのよ。決めたのは多分国王陛下だわ」
「そんなの言い訳です!本当は私が婚約者に選ばれたかったのに!!」

自分にとって不愉快だったり不都合だったりすれば八つ当たりする。
それがアレーラだった。
今までも同じような経験は何度もしているので、今は何を言おうが無駄だと理解している。
特に今回は婚約なので後々まで引き摺りそう。

その予想は当たっていた。

* * * * * * * * * *

私はランファス殿下の婚約者として親睦を深めることもあった。
親睦を深めるという目的なのに、肝心のランファス殿下は私に無関心だった。
無関心というよりも義務的に接していると表現したほうが正しいかもしれない。
それはどう考えてもお互いのことを知ろうとするものではなかった。

もしかしたら私がランファス殿下との婚約を望まなかったように、ランファス殿下もまた私との婚約を望んでいなかったのかもしれない。
本心を訊けるほどの信頼関係はないし、きっとこんな関係のまま続いていくのだと思う。
お互いにとって不幸な関係だと思った。

そのような実態を知らないアレーラは私を羨ましがった。

「またランファス殿下と一緒だったのですか?ズルいです、お姉様ばかり。本当は私がランファス殿下の婚約者だったはずなのに!」
「必要なことだから会ったのよ。それをどうこう言われても困るわ」
「少しくらい私に譲ってくれてもいいとは思わないのですか?」
「譲れるものではないけど……」

いつも以上にアレーラは無茶なことを言ってきた。
譲れるものなら私だって譲りたいけど、それは無理。

「あ、わかりました。ランファス殿下に直接頼んでみます!」
「ちょっと待って………」

待たずにアレーラはどこかへ行ってしまった。
珍しく行動的なアレーラだけど方向性が間違っている。
王太子殿下相手に失礼なことをすれば当家の立場が危うくなってしまう。
かといって私が一日中アレーラの行動を監視することもできないし、使用人たちではアレーラを抑えられないはず。
お父様が言ってもアレーラのことだから無視するだろうし…………。

「もう諦めるわ」

急に疲れを感じてしまった。
ランファス殿下との婚約を望んでおらず、それなのに婚約することになった。
ランファス殿下は私と親しくするつもりはないようだし、どうして婚約したのか理解できなかった。
無駄とはいえ努力したのにアレーラは何も知らず私の苦労を理解しない。

「どうしてこんなに不自由なのよ…」

公爵令嬢といっても実態はこんなもの。
羨まれるような華やかな面だけではない。
そのくせ果たすべき義務は多いし、家のことを考えて行動しなくてはならない。

「いっそのこと婚約破棄してくれればいいのに……」

それが私の正直な気持ちだった。
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