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第10話

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「フロイデンとヴァローナが結婚したのね…」

報告を受けたけど、二人の結婚式は散々なものだったようだ。

多くの貴族家に招待状を送ったのは知っていたけど参加するような貴族家はないと考えていた。
だって仮病で有名な医師に無駄足を踏ませ、その影響で余計に苦しむことになった人だっていたというのに。
ヴァローナが仮病だったことはバードナー男爵家との契約で公表されたし、反感を買って当然のことだもの。
どうしてそんなことをした相手の結婚式に参加しなくてはならないというのだろうか。
そのような相手に結婚式の招待状を送るなんて、むしろ挑発でしかなかったと思う。

それに私は気にしていないけど、フロイデンは私の元婚約者だったことは事実だし、フロイデンの結婚式に参加することで当家の不興を買うと考えたのかもしれない。
それくらいの配慮はできて当然だと思う。
今となっては薬草の利権を手に入れたし、薬師への影響力も強まったし、お母様の実家の伝手で医師方面にも影響力がある。
そんな当家の不興を買ってまでフロイデンとヴァローナの結婚式に参加するような馬鹿貴族がいるとも思えないもの。

薬草の利権が当家に渡ったことで両領地は他領に売るようなものがなく商人も寄り付かなくなり景気も悪くなったと聞いていた。
そこに臨時徴税で費用を賄っての結婚式。
下手すれば領民が反乱を起こしてもおかしくないのに、そんな理由で徴税される領民の気持ちを理解できなかったのだろうか。
結婚式に参加すれば領民の反乱に巻き込まれて命を落とすことになってしまうかもしれないのだから、参加しなくて当然なのに。

自分たちで参加者を減らすようなことをして何をしたかったのだろうか。
たぶん難しいことは自分たちにとって都合良く考えただけだと思うけど。

「本当に考えなしの人たちなのね……」

フロイデンから婚約破棄されて本当に良かったと思ったのは何度目だろうか。
フロイデンを奪ってくれたヴァローナにも感謝しないといけないけど、私が嫌がらせしていると嘘をついたことは許せない。
それは二人に待っているであろう不幸な未来で許してあげるけど。

「あの二人は頭の中がお花畑なの?」

そう考えないと不可解な行動の理由が説明できない。
そんな人たちにいつまでも関わっていると、こちらまで頭がおかしくなりそう。

だからもう放っておこう。
あの二人が幸せになるはずなんて絶対にないのだから。

でも二人にとっては幸せなのかもしれない。
周囲のことなんてお構いなしの二人だから、最後の最後になって、やっと気付けるかもしれないけど。

「そのおかげで領地は発展しているから複雑な気分だわ。もう二人のことは忘れて経済的なつながりだけ意識すればいいわね」

ロスコーラー子爵領の薬草にバードナー男爵領の薬草。
それらは当家に大きな利益をもたらしてくれた。
領主が誰だろうと契約を守るならば問題ないし、契約を反故にするようなら、それこそ両家にとって取り返しのつかない事態になるだろう。
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