9 / 11
第9話
しおりを挟む
俺たちの結婚式は盛大に行われるべきだが、そこで予算という現実の問題が立ちふさがってしまった。
無いものは無いのだから、それをどうすべきか父上と協議している。
協議というか説得のようなものかもしれない。
「ですからみすぼらしい結婚式ではロスコーラー子爵家が侮られることになります。それにヴァローナを蔑ろにしているとバードナー男爵にいらぬ誤解を与えることにもなってしまいます」
「確かにそうだな。だが予算が無いことにはどうにもなるまい」
「そこで臨時徴税です。俺の結婚式は領民も祝って当然ですし、そのためにいくらか税を取っても喜んでくれるでしょう」
「ふむ…」
父上は少しの間、考え込んだ。
「よし、臨時徴税を行う。やはり他家に侮られるようではいかないからな」
「さすがです、父上」
これでヴァローナも喜んでくれるだろうしバードナー男爵も俺をもっと高く評価するに違いない。
領民も喜び経済も活発になるだろう。
* * * * * * * * * *
予算の目途も立ったが、今度は招待状を送った貴族たちからお断りの手紙が届くようになった。
それも複数で、揃いも揃ってお断りだ。
このままお断りの手紙が届き続けるとは思えないが……。
だがこんな状況でもヴァローナは違った。
「別に誰が参加するかなんて関係ないよ。私たちが幸せなら、それでいいじゃない」
「そうだな、その通りだよ」
「それに幸せそうな私たちを見たらショックを受けるかもしれないし。余計なトラブルが起きなくて好都合じゃない」
「その通りだ。人は嫉妬すると何をするかわからないからな。せっかくのヴァローナとの結婚式を台無しにされる訳にはいかないからな」
そう言ってから思ったが、もしかしたらこれもルミーネ……フィルド伯爵家が何かしたのかもしれない。
嫌がらせの一環で招待客たちに圧力をかけたに違いない。
あれでも伯爵家だから他の貴族家への影響力がある。
ロスコーラー子爵家にしてもバードナー男爵家にしてもフィルド伯爵家に比べれば弱い存在だ。
強い者に従う情けない貴族どもに祝ってもらったところで嬉しくはない。
「幸せなのかは私たちが決めるのよ」
「本当にそうだな」
「でもせっかくの招待を断ったことは忘れてはいけないわ」
「ああ」
参加しなかった貴族たちは潜在的にロスコーラー子爵家の敵ということだ。
この結婚式は誰が俺たちの味方なのか敵なのかを判別する切っ掛けにもなる。
否応なく状況は変わっていく。
だがヴァローナとならば、どんな困難だって乗り越えられると信じている。
原因不明の病気すら治してしまった俺たちの真実の愛の前には不可能はない。
* * * * * * * * * *
そして迎えた結婚式。
参加者はロスコーラー子爵家の関係者とバードナー男爵家の関係者ばかり。
俺たちを祝ってくれる参加者に恵まれたのだから数は問題ではない。
「一生変わらぬ愛を誓うよ、ヴァローナ」
「嬉しいわ。私もよ、フロイデン」
こうして俺たちは結婚できた。
思い返せば困難だらけだった。
ルミーネとの望まない政略結婚のための婚約。
ルミーネからヴァローナへの嫌がらせ。
俺からルミーネへの婚約破棄。
ヴァローナへの愛が原因不明の病気を治した奇跡。
紆余曲折あったが実現できたヴァローナとの婚約。
だがそれらを乗り越え俺はヴァローナと結婚できた。
俺の人生は最高に幸せだ。
無いものは無いのだから、それをどうすべきか父上と協議している。
協議というか説得のようなものかもしれない。
「ですからみすぼらしい結婚式ではロスコーラー子爵家が侮られることになります。それにヴァローナを蔑ろにしているとバードナー男爵にいらぬ誤解を与えることにもなってしまいます」
「確かにそうだな。だが予算が無いことにはどうにもなるまい」
「そこで臨時徴税です。俺の結婚式は領民も祝って当然ですし、そのためにいくらか税を取っても喜んでくれるでしょう」
「ふむ…」
父上は少しの間、考え込んだ。
「よし、臨時徴税を行う。やはり他家に侮られるようではいかないからな」
「さすがです、父上」
これでヴァローナも喜んでくれるだろうしバードナー男爵も俺をもっと高く評価するに違いない。
領民も喜び経済も活発になるだろう。
* * * * * * * * * *
予算の目途も立ったが、今度は招待状を送った貴族たちからお断りの手紙が届くようになった。
それも複数で、揃いも揃ってお断りだ。
このままお断りの手紙が届き続けるとは思えないが……。
だがこんな状況でもヴァローナは違った。
「別に誰が参加するかなんて関係ないよ。私たちが幸せなら、それでいいじゃない」
「そうだな、その通りだよ」
「それに幸せそうな私たちを見たらショックを受けるかもしれないし。余計なトラブルが起きなくて好都合じゃない」
「その通りだ。人は嫉妬すると何をするかわからないからな。せっかくのヴァローナとの結婚式を台無しにされる訳にはいかないからな」
そう言ってから思ったが、もしかしたらこれもルミーネ……フィルド伯爵家が何かしたのかもしれない。
嫌がらせの一環で招待客たちに圧力をかけたに違いない。
あれでも伯爵家だから他の貴族家への影響力がある。
ロスコーラー子爵家にしてもバードナー男爵家にしてもフィルド伯爵家に比べれば弱い存在だ。
強い者に従う情けない貴族どもに祝ってもらったところで嬉しくはない。
「幸せなのかは私たちが決めるのよ」
「本当にそうだな」
「でもせっかくの招待を断ったことは忘れてはいけないわ」
「ああ」
参加しなかった貴族たちは潜在的にロスコーラー子爵家の敵ということだ。
この結婚式は誰が俺たちの味方なのか敵なのかを判別する切っ掛けにもなる。
否応なく状況は変わっていく。
だがヴァローナとならば、どんな困難だって乗り越えられると信じている。
原因不明の病気すら治してしまった俺たちの真実の愛の前には不可能はない。
* * * * * * * * * *
そして迎えた結婚式。
参加者はロスコーラー子爵家の関係者とバードナー男爵家の関係者ばかり。
俺たちを祝ってくれる参加者に恵まれたのだから数は問題ではない。
「一生変わらぬ愛を誓うよ、ヴァローナ」
「嬉しいわ。私もよ、フロイデン」
こうして俺たちは結婚できた。
思い返せば困難だらけだった。
ルミーネとの望まない政略結婚のための婚約。
ルミーネからヴァローナへの嫌がらせ。
俺からルミーネへの婚約破棄。
ヴァローナへの愛が原因不明の病気を治した奇跡。
紆余曲折あったが実現できたヴァローナとの婚約。
だがそれらを乗り越え俺はヴァローナと結婚できた。
俺の人生は最高に幸せだ。
115
お気に入りに追加
2,020
あなたにおすすめの小説
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~
舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」
わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。
ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。
驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。
※話自体は三人称で進みます。
家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうでもいいですけどね
志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」
‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。
まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。
思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる