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第7話
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レオール様がオースタン男爵邸を訪れ、全てが終わったと報告を受けた。
「ロザリン様には感謝しています。お陰様でナーディーの不正を暴くことができました」
「お力になれて私も嬉しく思います」
レオール様は少し悩んだようで、きっと言葉を選んでいるのだと思う。
「……ロザリン様がお元気そうで何よりです」
「ナーディーのことですか?もう吹っ切れているのでお気遣い無用です。愛も情も何もありませんでしたから」
ナーディーの処刑のことで私を気遣ってくれたのだと思う。
自分でも驚くくらいに、もうナーディーのことは心底どうでもよくなっていた。
でも真面目なレオール様のことだから、私が気にしているのではないかと考えてくださったのだろう。
…こんな私に幻滅してしまっただろうか?
嘘でも悲しんだふりをしたほうが良かっただろうか?
レオール様はどういった反応を望んでいたのだろう?
こういった場面で気の利いた一言なんて、レオール様には難しいだろう。
そもそもこんな話題なんて気分が暗くなるだけ。
せっかくなのに暗い気持ちにはなりたくない。
でも、せめて感謝の気持ちだけはしっかりと伝えたい。
「…レオール様のお気持ち、嬉しく思います」
私の言葉にレオール様も表情を明るくした。
「ロザリン様に喜んでいただければ自分も救われたように思えます。自分は間違っていなかったのだと」
「レオール様…」
レオール様は不正を調べ罪人を捕まえる仕事。
捕まえた人間は裁かれ、場合によっては処刑されてしまう。
間接的に人を殺める手助けをしているようなものだけど、誰かが取り締まらなくては不正が蔓延し国が亡ぶことになってしまうかもしれない。
「立派だと思います。……尊敬しています」
「そう言っていただけると救われます」
レオール様も意外にロマンチストというか…大げさというか……私に謝意というよりも好意を伝えようとしている?
私の考えすぎかもしれないけど。
そういえば私も尊敬しているなんて、もしかしたら好意を抱いているように捉えられてしまったかもしれない。
………私からレオール様への気持ち。
嫌いなんてはずがなく、むしろその逆。
好ましく思っているし、頼りがいがあるし、真面目で不器用なところだってレオール様の良さだと思う。
でも、きっとそんなレオール様だから、もう結婚していたり婚約者がいるはず。
私の幸せはどこにあるのだろう…。
「あの、もしロザリン様さえ良ければですが…今度一緒に食事でもどうですか?感謝の気持ちですけど、騎士団は関係なくて、個人的にというか…」
「よろしいのですか?私なんかと食事をすると機嫌を損ねたりする方がいるのではありませんか?」
「そのようなことはありませんのでご安心ください。もう結婚していてもおかしくない年齢ではありますが、結婚はおろか婚約者すらいませんので」
私の取り越し苦労だった。
ということは、私とレオール様の邪魔となる存在はいないということ。
レオール様の表情も明るくなった。
きっとお互いに同じことを望んでいるのだと思う。
「では一緒に食事させてください。楽しみです」
「はい、ありがとうございます。それで日時についてですが……」
こうして私たちの友人としての付き合いが始まった。
でもそんな関係が長く続くはずがない。
「ロザリン様には感謝しています。お陰様でナーディーの不正を暴くことができました」
「お力になれて私も嬉しく思います」
レオール様は少し悩んだようで、きっと言葉を選んでいるのだと思う。
「……ロザリン様がお元気そうで何よりです」
「ナーディーのことですか?もう吹っ切れているのでお気遣い無用です。愛も情も何もありませんでしたから」
ナーディーの処刑のことで私を気遣ってくれたのだと思う。
自分でも驚くくらいに、もうナーディーのことは心底どうでもよくなっていた。
でも真面目なレオール様のことだから、私が気にしているのではないかと考えてくださったのだろう。
…こんな私に幻滅してしまっただろうか?
嘘でも悲しんだふりをしたほうが良かっただろうか?
レオール様はどういった反応を望んでいたのだろう?
こういった場面で気の利いた一言なんて、レオール様には難しいだろう。
そもそもこんな話題なんて気分が暗くなるだけ。
せっかくなのに暗い気持ちにはなりたくない。
でも、せめて感謝の気持ちだけはしっかりと伝えたい。
「…レオール様のお気持ち、嬉しく思います」
私の言葉にレオール様も表情を明るくした。
「ロザリン様に喜んでいただければ自分も救われたように思えます。自分は間違っていなかったのだと」
「レオール様…」
レオール様は不正を調べ罪人を捕まえる仕事。
捕まえた人間は裁かれ、場合によっては処刑されてしまう。
間接的に人を殺める手助けをしているようなものだけど、誰かが取り締まらなくては不正が蔓延し国が亡ぶことになってしまうかもしれない。
「立派だと思います。……尊敬しています」
「そう言っていただけると救われます」
レオール様も意外にロマンチストというか…大げさというか……私に謝意というよりも好意を伝えようとしている?
私の考えすぎかもしれないけど。
そういえば私も尊敬しているなんて、もしかしたら好意を抱いているように捉えられてしまったかもしれない。
………私からレオール様への気持ち。
嫌いなんてはずがなく、むしろその逆。
好ましく思っているし、頼りがいがあるし、真面目で不器用なところだってレオール様の良さだと思う。
でも、きっとそんなレオール様だから、もう結婚していたり婚約者がいるはず。
私の幸せはどこにあるのだろう…。
「あの、もしロザリン様さえ良ければですが…今度一緒に食事でもどうですか?感謝の気持ちですけど、騎士団は関係なくて、個人的にというか…」
「よろしいのですか?私なんかと食事をすると機嫌を損ねたりする方がいるのではありませんか?」
「そのようなことはありませんのでご安心ください。もう結婚していてもおかしくない年齢ではありますが、結婚はおろか婚約者すらいませんので」
私の取り越し苦労だった。
ということは、私とレオール様の邪魔となる存在はいないということ。
レオール様の表情も明るくなった。
きっとお互いに同じことを望んでいるのだと思う。
「では一緒に食事させてください。楽しみです」
「はい、ありがとうございます。それで日時についてですが……」
こうして私たちの友人としての付き合いが始まった。
でもそんな関係が長く続くはずがない。
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