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第2話
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ナーディーは騎士たちによって逃げられないよう囲まれてしまった。
ナーディーは抵抗しなかったけど、オロオロと困惑し何もできなかったのが本当のところだと思う。
抵抗したところで罪が重くなるだけだし、結果としては悪くないものだと思う。
それで罪が軽くなる訳でもないけど。
「俺はロザリンの指示に従っただけだ!俺は悪くない!!」
「言い分は取り調べで聞かせてもらおう。抵抗せずについて来い。抵抗したり指示に従わなければ引き摺ってでも連れていく。無駄に手を煩わせないでくれよ」
ナーディーの言い分は当然のように受け入れられなかった。
それにしても本当に私のせいにするなんて…。
しかも私に助けを求めるように視線を向けてくる。
自分が何をしたのか理解していないの?
どうして勝手に首謀者扱いされたのに助けると思えるの?
そんなナーディーに私から伝えたいことがある。
「待ってください!」
私の言葉に歩みを止める騎士たち。
希望に満ちた眼差しを向けるナーディー。
「ナーディー・ワドリー!婚約者に罪を擦り付けようとする行為は許せませんし幻滅しました。罪人とは婚約していられません。婚約破棄します!」
これだけナーディーに非があれば婚約破棄するのも当然。
ナーディーが絶望した表情になったので少しは溜飲が下がるというもの。
しかしナーディーの立ち直りは早かった。
「許さない、許さないぞ、ロザリン!絶対に道連れにしてやる!!!!」
「黙れ!」
「ぐあっ」
騎士によってナーディーの腕が捻じり上げられ苦痛の声を上げた。
こうなってしまえばナーディーも黙る他なく、それ以上の暴言は阻止された。
私だって暴言を吐かれれば不愉快になる。
それを食い止めてくれた騎士には感謝したい。
頼れる騎士、レオール・リール様。
ナーディーは知らないだろうけど、騎士団はナーディーの不正の事実を掴んでおり、婚約者である私に被害が及ばないよう事前に話を持ち掛けてくれたのだ。
私だってナーディーがそのようなことをするなんて驚いたけど、不正を許せば私だけでなくオースタン男爵家にまで影響が及ぶだろうし、私は騎士団に協力することで無罪を証明することにしたのだ。
そしてナーディーから大切な話があると言われワドリー男爵邸を訪れる日時が決まってから騎士団にも連絡しておいた。
踏み込むタイミングを窺ってくれたことは感謝している。
お陰でナーディーの罪も増えたし、私に非がないことは騎士も証明してくれるだろう。
そもそもナーディーが不正に手を染めたのだから婚約破棄の理由としては十分すぎると思うけど。
何も知らなかったのはナーディーだけ。
私を睨みつけてもどうにもならないのに。
「もういいだろう、連れていけ」
「はっ」
騎士のレオール様の指示でナーディーが連行されていく。
残されたのは私とレオール様だけ。
「ロザリン様、協力を感謝します」
「いえ、こちらこそご配慮ありがとうございました。お陰様で最高の婚約破棄ができました」
冗談めかして言ってしまったけど、レオール様は困ったような表情を浮かべただけだった。
きっと真面目な性格なのだろう。
他の騎士たちの前では偉そうに命令口調だけど、私には安心させるような丁寧な言葉遣いをしてくれる。
「…こんな結末になってしまい残念だったかもしれません。ですが他に良い相手との出会いだってあるでしょう。ロザリン様はきっと幸せになれると信じています」
「ありがとうございます」
レオール様なりの、精一杯の言葉だったと思う。
私のためにがんばって言葉を選んでくれたのだろう。
社交辞令とはいえ気遣いが嬉しかった。
その言葉を伝えるために他の騎士を先に行かせたのかもしれない。
そう考えると、ますますレオール様の気遣いが嬉しくなった。
ナーディーとは全然違う。
ナーディーは気を遣えないし努力もしない。
思い返せば思い返しただけナーディーと婚約したことを後悔してしまう……。
でももう婚約破棄したのだから私とナーディーは無関係。
ナーディーはきっと有罪になり罪人として破滅する未来が待っているだろう。
私は私で幸せを掴まないとね。
そしてふと思い浮かんだレオール様。
レオール様との出会いを思い出す。
ナーディーは抵抗しなかったけど、オロオロと困惑し何もできなかったのが本当のところだと思う。
抵抗したところで罪が重くなるだけだし、結果としては悪くないものだと思う。
それで罪が軽くなる訳でもないけど。
「俺はロザリンの指示に従っただけだ!俺は悪くない!!」
「言い分は取り調べで聞かせてもらおう。抵抗せずについて来い。抵抗したり指示に従わなければ引き摺ってでも連れていく。無駄に手を煩わせないでくれよ」
ナーディーの言い分は当然のように受け入れられなかった。
それにしても本当に私のせいにするなんて…。
しかも私に助けを求めるように視線を向けてくる。
自分が何をしたのか理解していないの?
どうして勝手に首謀者扱いされたのに助けると思えるの?
そんなナーディーに私から伝えたいことがある。
「待ってください!」
私の言葉に歩みを止める騎士たち。
希望に満ちた眼差しを向けるナーディー。
「ナーディー・ワドリー!婚約者に罪を擦り付けようとする行為は許せませんし幻滅しました。罪人とは婚約していられません。婚約破棄します!」
これだけナーディーに非があれば婚約破棄するのも当然。
ナーディーが絶望した表情になったので少しは溜飲が下がるというもの。
しかしナーディーの立ち直りは早かった。
「許さない、許さないぞ、ロザリン!絶対に道連れにしてやる!!!!」
「黙れ!」
「ぐあっ」
騎士によってナーディーの腕が捻じり上げられ苦痛の声を上げた。
こうなってしまえばナーディーも黙る他なく、それ以上の暴言は阻止された。
私だって暴言を吐かれれば不愉快になる。
それを食い止めてくれた騎士には感謝したい。
頼れる騎士、レオール・リール様。
ナーディーは知らないだろうけど、騎士団はナーディーの不正の事実を掴んでおり、婚約者である私に被害が及ばないよう事前に話を持ち掛けてくれたのだ。
私だってナーディーがそのようなことをするなんて驚いたけど、不正を許せば私だけでなくオースタン男爵家にまで影響が及ぶだろうし、私は騎士団に協力することで無罪を証明することにしたのだ。
そしてナーディーから大切な話があると言われワドリー男爵邸を訪れる日時が決まってから騎士団にも連絡しておいた。
踏み込むタイミングを窺ってくれたことは感謝している。
お陰でナーディーの罪も増えたし、私に非がないことは騎士も証明してくれるだろう。
そもそもナーディーが不正に手を染めたのだから婚約破棄の理由としては十分すぎると思うけど。
何も知らなかったのはナーディーだけ。
私を睨みつけてもどうにもならないのに。
「もういいだろう、連れていけ」
「はっ」
騎士のレオール様の指示でナーディーが連行されていく。
残されたのは私とレオール様だけ。
「ロザリン様、協力を感謝します」
「いえ、こちらこそご配慮ありがとうございました。お陰様で最高の婚約破棄ができました」
冗談めかして言ってしまったけど、レオール様は困ったような表情を浮かべただけだった。
きっと真面目な性格なのだろう。
他の騎士たちの前では偉そうに命令口調だけど、私には安心させるような丁寧な言葉遣いをしてくれる。
「…こんな結末になってしまい残念だったかもしれません。ですが他に良い相手との出会いだってあるでしょう。ロザリン様はきっと幸せになれると信じています」
「ありがとうございます」
レオール様なりの、精一杯の言葉だったと思う。
私のためにがんばって言葉を選んでくれたのだろう。
社交辞令とはいえ気遣いが嬉しかった。
その言葉を伝えるために他の騎士を先に行かせたのかもしれない。
そう考えると、ますますレオール様の気遣いが嬉しくなった。
ナーディーとは全然違う。
ナーディーは気を遣えないし努力もしない。
思い返せば思い返しただけナーディーと婚約したことを後悔してしまう……。
でももう婚約破棄したのだから私とナーディーは無関係。
ナーディーはきっと有罪になり罪人として破滅する未来が待っているだろう。
私は私で幸せを掴まないとね。
そしてふと思い浮かんだレオール様。
レオール様との出会いを思い出す。
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