8 / 9
第8話
しおりを挟む
バルメジャーが連れ出され、後に残ったのは私と主な貴族たち。
「この国の今後について話し合わなくてはならないわね。見ての通りバルメジャーはもう王ではないし、バルメジャーのせいで一部の貴族たちが優遇される政策が進められているわ。それについても話し合いましょう
貴族たちから異論がないのも当然。
だって私の実家が実質的な最高権力者なのだから。
新たな王には兄にでも任せればいいし、私はもう十分に国のために働いたのだから正妃の立場も退く。
表向きは私も責任を取った形にしたほうが次の王もやりやすいだろうし。
こうして話し合いは私の望んだ形で進んでいった。
* * * * * * * * * *
残務処理の目途もつき、私はやっと人心地ついた。
方向性は示しておいたから、後は優秀な貴族たちに任せておけばいい。
今は自室に戻って休んでいるけど、扉がノックされた。
やっと待ち人が来てくれた。
「入って」
予想していたとおり、入ってきたのはマンスティルだった。
「やっと終わったな、メディーレ」
「ええ。長かったわ…」
今のマンスティルは近衛隊長ではなく、お互いに想い合う男女としての振る舞いだ。
「今なら言える。ずっとメディーレのことが好きだった。どうか俺と結婚してほしい」
「もちろんよ。喜んで」
マンスティルから抱きしめられ、これが望んでいたものなのだと自覚できた。
望まないバルメジャーとの結婚は苦痛でしかなく、義務を果たすために私の心は消耗していた。
でもマンスティルが素直に気持ちを伝えられるようになり、全てが報われたように思えた。
「一つ謝らないといけないわ。マンスティルを王にすることは難しいと思うの。ごめんなさい…」
「そんなことはどうでもいい。俺はメディーレさえいれば満足なんだ。王の立場なんて二人だけの幸せな日々にはかえって邪魔になるだろう?メディーレが謝ることなんてないんだ」
「ふふ…そうね」
マンスティルが望めば王の地位も私の愛も全てを手にできるというのに。
それよりも私のために余計なことをしたくないという気持ちが嬉しかった。
やはり私は最初からマンスティルと結ばれるべきだったと思うけど、メルヴィエール公爵家の立場と無能なバルメジャーの存在により政略結婚せざるを得なかった。
バルメジャーのせいだと思うとムカムカしてくる。
せっかくマンスティルとの幸せな時間を邪魔するなんて、バルメジャーはどこまでも私の足を引っ張ってくる。
「これ以上バルメジャーに邪魔されないようにしたいわ。何か良い案はある?」
「許せない存在だが命を奪うと罪悪感を抱くかもしれないだろう?一生幽閉するのが一番だと思う」
「そうね…。それならシビリアと一生一緒にいてもらいましょう。あれだけ愛し合っていた二人だもの。きっと喜んでくれるわ」
「ははは、それはいいな。お似合いの二人だ」
こうしてバルメジャーの処遇も決まった。
もしバルメジャーを処刑したら私やマンスティルが要らない誹りを受けるかもしれないし、幽閉だってあれだけ好き勝手して国や民を裏切ったバルメジャーの処分としては寛大だし、非難されることはないだろう。
それでも非難するような力関係を読めないような貴族はいらないから処分すればいいわ。
「面倒な話はこれでお終い。これからは二人だけの時間よ?」
「ああ」
マンスティルと結婚するにしてもすぐには無理だから最低でも1年は時間がかかるかもしれない。
でもそれは私たちの愛の障害にすらならない。
「愛してるよ、メディーレ」
「私もよ、マンスティル」
目を閉じ、唇と唇が触れ合った。
「この国の今後について話し合わなくてはならないわね。見ての通りバルメジャーはもう王ではないし、バルメジャーのせいで一部の貴族たちが優遇される政策が進められているわ。それについても話し合いましょう
貴族たちから異論がないのも当然。
だって私の実家が実質的な最高権力者なのだから。
新たな王には兄にでも任せればいいし、私はもう十分に国のために働いたのだから正妃の立場も退く。
表向きは私も責任を取った形にしたほうが次の王もやりやすいだろうし。
こうして話し合いは私の望んだ形で進んでいった。
* * * * * * * * * *
残務処理の目途もつき、私はやっと人心地ついた。
方向性は示しておいたから、後は優秀な貴族たちに任せておけばいい。
今は自室に戻って休んでいるけど、扉がノックされた。
やっと待ち人が来てくれた。
「入って」
予想していたとおり、入ってきたのはマンスティルだった。
「やっと終わったな、メディーレ」
「ええ。長かったわ…」
今のマンスティルは近衛隊長ではなく、お互いに想い合う男女としての振る舞いだ。
「今なら言える。ずっとメディーレのことが好きだった。どうか俺と結婚してほしい」
「もちろんよ。喜んで」
マンスティルから抱きしめられ、これが望んでいたものなのだと自覚できた。
望まないバルメジャーとの結婚は苦痛でしかなく、義務を果たすために私の心は消耗していた。
でもマンスティルが素直に気持ちを伝えられるようになり、全てが報われたように思えた。
「一つ謝らないといけないわ。マンスティルを王にすることは難しいと思うの。ごめんなさい…」
「そんなことはどうでもいい。俺はメディーレさえいれば満足なんだ。王の立場なんて二人だけの幸せな日々にはかえって邪魔になるだろう?メディーレが謝ることなんてないんだ」
「ふふ…そうね」
マンスティルが望めば王の地位も私の愛も全てを手にできるというのに。
それよりも私のために余計なことをしたくないという気持ちが嬉しかった。
やはり私は最初からマンスティルと結ばれるべきだったと思うけど、メルヴィエール公爵家の立場と無能なバルメジャーの存在により政略結婚せざるを得なかった。
バルメジャーのせいだと思うとムカムカしてくる。
せっかくマンスティルとの幸せな時間を邪魔するなんて、バルメジャーはどこまでも私の足を引っ張ってくる。
「これ以上バルメジャーに邪魔されないようにしたいわ。何か良い案はある?」
「許せない存在だが命を奪うと罪悪感を抱くかもしれないだろう?一生幽閉するのが一番だと思う」
「そうね…。それならシビリアと一生一緒にいてもらいましょう。あれだけ愛し合っていた二人だもの。きっと喜んでくれるわ」
「ははは、それはいいな。お似合いの二人だ」
こうしてバルメジャーの処遇も決まった。
もしバルメジャーを処刑したら私やマンスティルが要らない誹りを受けるかもしれないし、幽閉だってあれだけ好き勝手して国や民を裏切ったバルメジャーの処分としては寛大だし、非難されることはないだろう。
それでも非難するような力関係を読めないような貴族はいらないから処分すればいいわ。
「面倒な話はこれでお終い。これからは二人だけの時間よ?」
「ああ」
マンスティルと結婚するにしてもすぐには無理だから最低でも1年は時間がかかるかもしれない。
でもそれは私たちの愛の障害にすらならない。
「愛してるよ、メディーレ」
「私もよ、マンスティル」
目を閉じ、唇と唇が触れ合った。
120
お気に入りに追加
436
あなたにおすすめの小説

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。


あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

出て行けと言われても
もふっとしたクリームパン
恋愛
よくあるざまぁ話です。設定はゆるゆるで、何番煎じといった感じです。*主人公は女性。書きたいとこだけ書きましたので、軽くざまぁな話を読みたい方向け、だとおもいます。*前編と後編+登場人物紹介で完結。*カクヨム様でも公開しています。

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。

忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる