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第6話
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「どうして誰も助けてくれないのよ……」
石造りの殺風景な壁に囲まれた部屋に閉じ込められたまま何日か過ぎた。
こんな部屋、国王陛下の愛妾である私の立場には相応しくないのに。
私はもっと豪華絢爛で贅を尽くした調度品が似合うのに。
一番華やかなのは私だけど。
部屋も不満だけど、あんなに愛したバルメジャーが助けに来てくれないことも不満だった。
「まさかとは思うけど……メディーレへの愛に目覚めたの?」
ないわね。
あり得ないわ。
バルメジャーとの甘い日々は嘘ではないし、バルメジャーがメディーレを愛するはずがないもの。
こんな部屋に閉じ込められているから変な考えになってしまったのね。
むしろメディーレが私への嫉妬でこんな仕打ちをしたに決まってるわ。
あの陰湿な女のしそうなことだもの。
嫉妬する暇があるなら自分を磨けばいいのに。
バルメジャーから愛されないのを私のせいにしないで。
「バルメジャー…早く助けてよ……」
放っておくと愛がなくなるわよ?
今ならまだ頭を下げれば許してあげるけど、私だって我慢の限界があるのよ?
と思ったけど、メディーレが邪魔しているに決まってる。
バルメジャーが私のことを見捨てるはずがないもの。
メディーレが嫌がらせしているに決まってる。
嫉妬して私にこんな仕打ちをするなんて正妃として恥ずかしくないの?
あんなのが正妃だと私のほうが恥ずかしいわ。
私が正妃になるべきよね。
「ねえ、誰かいるんでしょ?そろそろ出してくれない?」
扉には小さな窓があり、食事はそこから出されてくる。
とてもではないけどそこから出ることはできない。
扉の向こうにいるはずの見張りの兵士から当然のように返事はない。
何か反応してくれれば誘惑してここから出させるのに………。
誘惑しても浮気じゃないもの。
こんなところに閉じ込められたのだから仕方ないことなのよ。
バルメジャーが助けてくれないと本当に浮気するわよ?
「私を誰だと思ってるの?バルメジャー陛下の愛を一身に受けているシビリアなのよ?ねえ、聞いてるの?」
下っ端の兵士ごときなら私の立場を理解していないのかもしれない。
誘惑に乗らないのも身分の違いを弁えているからだと思う。
そういったところだけ立派でも役に立たないのに。
これもきっとメディーレの嫌がらせね。
「私はバルメジャー陛下に愛されてるの。私に気に入られればお前の出世の口利きをしてあげてもいいわよ?」
どうせ下っ端の兵士なんて餌を見せれば食いつくに決まってる。
それでだめならお金をちらつかせればいい。
私はこんな場所に閉じ込められていい人間じゃないから。
バルメジャーが頼りないならお父様でもいいわ。
もう誰でもいいから早くここから出してよ。
「出してくれたら一度抱かせてあげてもいいわ。どう?この国一番の美女を抱けるのよ?こんなチャンス、もう無いわよ?」
……外の兵士は相変わらずね。
私が誘ってあげているのに失礼しちゃう。
ここから出たら絶対に許さないから。
「バルメジャーには内緒にしてあげるから。遠慮しなくていいのよ?」
そこまで言ったのに応じないなんて意気地なしね。
そんなのだから兵士なんて立場で終わってるのよ。
今なら私が口利きして近衛兵にでもしてあげるのに。
これだから下っ端は駄目ね。
「なんでもいいから早く出してよ。ねえ、聞いているんでしょ?私は王に愛されているのよ」
相変わらず反応がない。
誰も私を助けてくれないの……?
バルメジャーは何をしてるの………?
何でこんな部屋に閉じ込められないといけないのよ!?
石造りの殺風景な壁に囲まれた部屋に閉じ込められたまま何日か過ぎた。
こんな部屋、国王陛下の愛妾である私の立場には相応しくないのに。
私はもっと豪華絢爛で贅を尽くした調度品が似合うのに。
一番華やかなのは私だけど。
部屋も不満だけど、あんなに愛したバルメジャーが助けに来てくれないことも不満だった。
「まさかとは思うけど……メディーレへの愛に目覚めたの?」
ないわね。
あり得ないわ。
バルメジャーとの甘い日々は嘘ではないし、バルメジャーがメディーレを愛するはずがないもの。
こんな部屋に閉じ込められているから変な考えになってしまったのね。
むしろメディーレが私への嫉妬でこんな仕打ちをしたに決まってるわ。
あの陰湿な女のしそうなことだもの。
嫉妬する暇があるなら自分を磨けばいいのに。
バルメジャーから愛されないのを私のせいにしないで。
「バルメジャー…早く助けてよ……」
放っておくと愛がなくなるわよ?
今ならまだ頭を下げれば許してあげるけど、私だって我慢の限界があるのよ?
と思ったけど、メディーレが邪魔しているに決まってる。
バルメジャーが私のことを見捨てるはずがないもの。
メディーレが嫌がらせしているに決まってる。
嫉妬して私にこんな仕打ちをするなんて正妃として恥ずかしくないの?
あんなのが正妃だと私のほうが恥ずかしいわ。
私が正妃になるべきよね。
「ねえ、誰かいるんでしょ?そろそろ出してくれない?」
扉には小さな窓があり、食事はそこから出されてくる。
とてもではないけどそこから出ることはできない。
扉の向こうにいるはずの見張りの兵士から当然のように返事はない。
何か反応してくれれば誘惑してここから出させるのに………。
誘惑しても浮気じゃないもの。
こんなところに閉じ込められたのだから仕方ないことなのよ。
バルメジャーが助けてくれないと本当に浮気するわよ?
「私を誰だと思ってるの?バルメジャー陛下の愛を一身に受けているシビリアなのよ?ねえ、聞いてるの?」
下っ端の兵士ごときなら私の立場を理解していないのかもしれない。
誘惑に乗らないのも身分の違いを弁えているからだと思う。
そういったところだけ立派でも役に立たないのに。
これもきっとメディーレの嫌がらせね。
「私はバルメジャー陛下に愛されてるの。私に気に入られればお前の出世の口利きをしてあげてもいいわよ?」
どうせ下っ端の兵士なんて餌を見せれば食いつくに決まってる。
それでだめならお金をちらつかせればいい。
私はこんな場所に閉じ込められていい人間じゃないから。
バルメジャーが頼りないならお父様でもいいわ。
もう誰でもいいから早くここから出してよ。
「出してくれたら一度抱かせてあげてもいいわ。どう?この国一番の美女を抱けるのよ?こんなチャンス、もう無いわよ?」
……外の兵士は相変わらずね。
私が誘ってあげているのに失礼しちゃう。
ここから出たら絶対に許さないから。
「バルメジャーには内緒にしてあげるから。遠慮しなくていいのよ?」
そこまで言ったのに応じないなんて意気地なしね。
そんなのだから兵士なんて立場で終わってるのよ。
今なら私が口利きして近衛兵にでもしてあげるのに。
これだから下っ端は駄目ね。
「なんでもいいから早く出してよ。ねえ、聞いているんでしょ?私は王に愛されているのよ」
相変わらず反応がない。
誰も私を助けてくれないの……?
バルメジャーは何をしてるの………?
何でこんな部屋に閉じ込められないといけないのよ!?
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