お飾りの役目すら果たせない王を退位させ、愛妾と一生一緒にいられるようにしてあげます。

田太 優

文字の大きさ
上 下
4 / 9

第4話

しおりを挟む
バルメジャーに愛されている私は愛妾という立場だけど、本来ならメディーレに成り代わって正妃になるべきだわ。
あんな口うるさい女が正妃なんてバルメジャーも見る目がないのね。
でも私を選んだのは褒めてあげてもいいけど。

そんなことを考えていたら部屋の外が騒がしくなってきた。
足音や人の声から多くの人がいるようだけど、バルメジャーが来るなら一人のはずだし、大勢が来るような予定は聞かされてない。

乱暴にドアが開き、近衛兵たちが何人も入ってきた。
誰かの部屋と間違えてない?

「失礼しちゃうわね。ここは私の部屋なのよ?何の用なの?」
「ある場所にご案内します。抵抗しなければ痛い目には遭いません。どうか我々に従ってください」
「はぁ?私を誰だと思ってるの?」
「愛妾のシビリア様です」
「よくわかってるじゃない。なら出てって。私がどうして貴方たちに従わないといけないの?」
「指示に従っていただけないなら無理にでも連れて行くことになります。これは脅しではありません。最後通告です」
「はぁ?私はバルメジャーの愛妾なのよ?そんなことが許されるはずないじゃない」

まさか近衛兵がこんな頭が悪いなんて思わなかった。
私を見た人が惚れないようバルメジャーが私を人目につかないようにしていたのが悪いのかも。
私の顔を知っていればこんな無礼なことするはずがないもの。

「仕方ない。連れて行くぞ」
「はっ」
「ちょ、ちょっと。触らないでよ。そんなことするとバルメジャーが黙ってないわよ?ちょっと、やめてってば!」

私の言い分なんて聞かずに腕を掴まれた。
そんなに強く引っ張らなくてもいいのに。
私が腕を炒めたら貴方だってただでは済まされないのよ?
下手すると一族のみんなの首が飛ぶのよ?
バルメジャーが怒ると怖いんだからね!

「どこへ連れて行くのよ?」
「着けばわかります」
「ケチね。そんな態度だと女性にモテないわよ?」
「……」

だんまりを決め込むなんてモテないに決まってるわ。
近衛兵なんて家柄はいいかもしれないけど女性の扱いは全然駄目ね。
それに私の魅力に靡かないなんて絶対におかしいわ。
みんな不能なの?
それとも男色?

「わかったわ、そうやって私の気を引こうとしてるんでしょ?でも残念ね。私の気を引きたいなら最低でも王族でないと」
「………」
「もっと優しくエスコートしたほうがいいと思うけど?バルメジャーに言いつけられたいの?」
「…………」

揃いも揃ってつまんない男たちね。
あ、私と一緒だから緊張して何も言えないのね。
そう考えるとみんな可愛らしく見えてくる。

「ごめんなさいね、私にはバルメジャーがいるから……。だから私を口説きたくなったら王になってからにしてね?」
「……………」

恥ずかしがって何も言えないのね。

何も反応しないなら私も何も言わなかった。
そうして案内されたのは地下の部屋だった。

「部屋の中に入ってください」

掴まれていた腕を離され、部屋に入るように促された。
入ってあげる義理もないけど、逃げられないよう私を囲んでいるし、私を解放する気もないみたい。
こんなときにバルメジャーは何をしているの?

「もう一度言います。入ってください。従わなければ無理にでも入ってもらうことになります」
「強引さが嬉しい時もあるけど…もっと女心を知るべきね」

近衛兵が私を押すようにして部屋の中へと入れられた。

「ちょっと!変態!触らないでよ!私はバルメジャーのものなのよ!不敬だわ!」

ドアが閉められガチャリという音がした。
ドアを開けようとしたけど開かない。
外から鍵をかけられたみたい。

ドアを叩いて抗議する。

「何なのよ!どうしてこんなことするの!?私はバルメジャーの愛妾なのよ?バルメジャーが知ったらただでは済まされないわよ!」

外からは何の反応もない。
バルメジャーが知ったらすぐに助けに来てくれるだろうけど、こんなことをした近衛兵たちは絶対に許せない。

「私を誰だと思ってるのよ……。絶対に許さないから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

【完結】君を愛する事はない?でしょうね

玲羅
恋愛
「君を愛する事はない」初夜の寝室でそう言った(書類上の)だんな様。えぇ、えぇ。分かっておりますわ。わたくしもあなた様のようなお方は願い下げです。

一番でなくとも

Rj
恋愛
婚約者が恋に落ちたのは親友だった。一番大切な存在になれない私。それでも私は幸せになる。 全九話。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

こんな人とは頼まれても婚約したくありません!

Mayoi
恋愛
ダミアンからの辛辣な一言で始まった縁談は、いきなり終わりに向かって進み始めた。 最初から望んでいないような態度に無理に婚約する必要はないと考えたジュディスは狙い通りに破談となった。 しかし、どうしてか妹のユーニスがダミアンとの縁談を望んでしまった。 不幸な結末が予想できたが、それもユーニスの選んだこと。 ジュディスは妹の行く末を見守りつつ、自分の幸せを求めた。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...