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第8話
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メーベル様とは遊びで始まった関係だったが、結局ズルズルと関係を続けている。
やはり…性欲には勝てないからな!
都合のいい相手なのだから俺にとってはメリットばかりだ。
遊びの関係なのだから、飽きたり問題があれば終わる関係。
今を楽しく過ごせばいい。
そう思っていたが、どうも最近のメーベル様は俺にいっそう執着しているように思える。
浮気を疑われたり将来のことをほのめかしたり……。
遊びの関係だよな?
ただ嫉妬深いだけだよな?
そしてある日のこと、恐ろしいまでに怒ったメーベル様が俺を問い詰めたのだ。
「私に隠れて浮気するなんて酷いわ!」
「そんなことはしていません。誤解です」
「そんなの嘘よ。だって私、知ってるから。リブにやり直したいって言ったんでしょ?」
どこで知ったのかはわからないが、確かにリブにはそう言った。
だがあれは謝罪と形だけの復縁を申し出た事実を作るためであり、間違っても俺の本心からのものではない。
「あれは形だけのものです。本気ではありません」
「そうなの?でもリブと関わるなんて何考えてるの?疑われても当然のことなのよ?」
「……すみません」
メーベル様とは責められるような関係ではないのに、どうして責められないといけないのだろうか。
だが正論はますます怒らせるだけだろう。
どうにか穏便に済ませないといけない。
「謝罪だけならいくらだってできるわ。リブに会うなんて私が悲しむことになるとは思わなかったの?」
「親の指示もあったので俺ではどうにもできませんでした。メーベル様を悲しませてしまったことは大変申し訳なく思います」
「親のせいにしないで。私に申し訳ないと思うくらいなら最初から親に逆らえばいいじゃない」
「ですが…」
反論しようとしたらメーベル様の目つきが恐ろしいものになった。
迂闊なことを言ったら何をするかわからない恐ろしさがある。
メーベル様が俺に近づき抱きついてきた。
顔を俺の胸に埋める。
「私は信じているの。だから私を悲しませないで」
「メーベル様……」
しおらしい一面を見せられると愛おしく感じてしまう。
メーベル様は俺に本気だから怒るし悲しむのだろう。
俺も抱きしめることで気持ちを示す。
その時だった。
「うっ…」
脇腹に軽い衝撃と痛みのような熱さのようなものを感じた。
確認したいがメーベル様はいっそう強く俺を抱きしめるのだから振りほどくこともできない。
「どうしたの?ピート様」
「っ…!」
俺を見上げたメーベル様の目は正気だとは思えなかった。
脇腹の痛みすら忘れそうになるほどの寒気を感じた。
「いや、その…」
「私を悲しませるようなことをしたら許さないから。言葉で理解してもらえないなら体で理解してもらうから」
俺から離れたメーベル様の右手には太い針のようなものがあった。
幸いにも服や針の長さから軽く刺さっただけだと思われるが、まさか刺すようなことをするとは思わなかった。
これがメーベル様の本性。
今はまだ軽傷で済んだが、もし今後エスカレートしていったら本気で刺されてしまうかもしれない。
「もし裏切るようだったら死んであげる。ピート様のせいで私が死ぬようなことになったら大変よね。……だから信じているわ」
「………」
下手な対応をすればピンクルー伯爵家を敵にしてモーゲット子爵家ごと潰されるだろう。
このままメーベル様の言いなりになって機嫌を取って生きるしか俺の生きる道はないのか!?
メーベル様は俺を見つめ、薄い笑みを浮かべていた。
その姿は、とても恐ろしいものにしか見えなかった。
「そろそろ私たちの関係をはっきりさせたほうがいいわね。わかる?」
メーベル様が求めている答えは容易に想像できた。
だから俺は望む答えを口にする。
「メーベル様、愛しています。俺と婚約してくれませんか?」
「ええ、喜んで」
メーベル様が満面の笑みを浮かべた。
やはり…性欲には勝てないからな!
都合のいい相手なのだから俺にとってはメリットばかりだ。
遊びの関係なのだから、飽きたり問題があれば終わる関係。
今を楽しく過ごせばいい。
そう思っていたが、どうも最近のメーベル様は俺にいっそう執着しているように思える。
浮気を疑われたり将来のことをほのめかしたり……。
遊びの関係だよな?
ただ嫉妬深いだけだよな?
そしてある日のこと、恐ろしいまでに怒ったメーベル様が俺を問い詰めたのだ。
「私に隠れて浮気するなんて酷いわ!」
「そんなことはしていません。誤解です」
「そんなの嘘よ。だって私、知ってるから。リブにやり直したいって言ったんでしょ?」
どこで知ったのかはわからないが、確かにリブにはそう言った。
だがあれは謝罪と形だけの復縁を申し出た事実を作るためであり、間違っても俺の本心からのものではない。
「あれは形だけのものです。本気ではありません」
「そうなの?でもリブと関わるなんて何考えてるの?疑われても当然のことなのよ?」
「……すみません」
メーベル様とは責められるような関係ではないのに、どうして責められないといけないのだろうか。
だが正論はますます怒らせるだけだろう。
どうにか穏便に済ませないといけない。
「謝罪だけならいくらだってできるわ。リブに会うなんて私が悲しむことになるとは思わなかったの?」
「親の指示もあったので俺ではどうにもできませんでした。メーベル様を悲しませてしまったことは大変申し訳なく思います」
「親のせいにしないで。私に申し訳ないと思うくらいなら最初から親に逆らえばいいじゃない」
「ですが…」
反論しようとしたらメーベル様の目つきが恐ろしいものになった。
迂闊なことを言ったら何をするかわからない恐ろしさがある。
メーベル様が俺に近づき抱きついてきた。
顔を俺の胸に埋める。
「私は信じているの。だから私を悲しませないで」
「メーベル様……」
しおらしい一面を見せられると愛おしく感じてしまう。
メーベル様は俺に本気だから怒るし悲しむのだろう。
俺も抱きしめることで気持ちを示す。
その時だった。
「うっ…」
脇腹に軽い衝撃と痛みのような熱さのようなものを感じた。
確認したいがメーベル様はいっそう強く俺を抱きしめるのだから振りほどくこともできない。
「どうしたの?ピート様」
「っ…!」
俺を見上げたメーベル様の目は正気だとは思えなかった。
脇腹の痛みすら忘れそうになるほどの寒気を感じた。
「いや、その…」
「私を悲しませるようなことをしたら許さないから。言葉で理解してもらえないなら体で理解してもらうから」
俺から離れたメーベル様の右手には太い針のようなものがあった。
幸いにも服や針の長さから軽く刺さっただけだと思われるが、まさか刺すようなことをするとは思わなかった。
これがメーベル様の本性。
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「………」
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その姿は、とても恐ろしいものにしか見えなかった。
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メーベル様が求めている答えは容易に想像できた。
だから俺は望む答えを口にする。
「メーベル様、愛しています。俺と婚約してくれませんか?」
「ええ、喜んで」
メーベル様が満面の笑みを浮かべた。
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