刺されるほどの歪んだ愛で縛られた元婚約者。二人の愛を応援してあげた甲斐がありました。

田太 優

文字の大きさ
上 下
4 / 10

第4話

しおりを挟む
「この馬鹿者が!」

父上に呼び出されて、まずこれだ。
怒鳴られるような心当たりといえば…リブしかいない。
俺からは父上に言わなかったのに、密告するような真似をするとは人間性が透けて見える。
俺への嫌がらせだな。

「メーベル嬢と浮気したそうだな?」
「遊びでいいからと誘われて応じただけです。浮気ですらありませんが?」
「それは浮気だ、馬鹿者が!!」

メーベルから誘われたと説明したのに、どうして父上は理解しないのだろうか。
そもそも俺の言い分を理解しようとせず、俺が悪いと決めつけているのではないか?
勝手な思い込みで怒鳴りつけられる身にもなってほしい。
そういった他人の気持ちになって考えられないから父上は駄目なのだ。

「わざわざ怒鳴らないでください。用件は以上ですか?」
「まだだ。スターブ子爵から報告を受けたが、メーベル嬢と浮気したのは、どうやら事実のようだな」

俺は学習したので遊びだとか誘われただけだと訴えることはしない。
どうせ理解されないのだし、怒鳴られるだけ損だ。

こうなったのもリブが婚約破棄なんてするからだ。
遊びの関係を本気と思い込んだのはリブであり俺に責任はない。
遊びと本気の違いすら理解できないとは俺の婚約者に相応しくない。
…そう考えると婚約関係が解消されているのだからリブの行為は悪いものではないのか?

「とにかくメーベル嬢とは別れろ。それとリブ嬢に謝って、どうにか婚約破棄を撤回してもらえ」
「そもそもメーベル嬢とは遊びの関係なので、別れるも何もありません。もう終わっています。リブに謝罪しても無駄だと思いますが」
「それでもだ。真摯に謝罪すればリブ嬢も考えを変えるかもしれない」
「無理だと思いますが…」

父上が睨むので、それ以上は言わなかった。
俺の意見は聞く必要がないということなのだろう。
無駄だとわかっているのに無駄なことをしなければならないのか…。

「謝罪だけならタダだろう?慰謝料を支払わなくて済むならそうしたほうがいい」
「それは確かに」

父上は考えなしではなかった。
強欲なリブからの慰謝料請求なんて復縁できれば支払う必要もない。
復縁してから適当な理由で婚約解消すれば慰謝料も支払わずに済むだろう。
名案だ。
俺がすべきことは理解した。

「まずはメーベル嬢だ。メーベル嬢を説得しなければリブ嬢との復縁は無理だろう」
「わかりました」
「いいか、とにかくメーベル嬢とは問題を起こすなよ?ピンクルー伯爵家を敵にする訳にはいかないのだ」
「重々承知しています」
「…頼んだぞ」
「はい」

父上もしつこいな。
それだけピンクルー伯爵家を敵にしてはいけないということだろうし、俺が信用されていないということでもある。
とにかく結果だ。
父上が文句の言いようがない結果を出せば黙らせられるだろう。

まずはメーベル様か。
下手に関わると余計に執着されそうだが説得…できるのか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

真実の愛の言い分

豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」 私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

今日は私の結婚式

豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。 彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

処理中です...