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第2話
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ピート様は簡単に見つけることができた。
友人たちと談笑しているけど、事が事なので失礼を承知で割り込む。
「ごきげんよう、皆さま。申し訳ありませんがピート様をお借りします」
「おい、どうしたんだ、リブ?」
「浮気の件で話があるの」
「おい、そんなことこんな場で言うなよ」
「だから場所を変えようと言っているのよ。いいから来て」
浮気がどうのとご友人たちが言っていたけど無視してピート様を連れ出す。
文句を言っていたピート様のことは無視して、メーベル様に見つからないよう、人目につかない場所まで移動した。
「みんなの前で浮気を暴露するなよ。後で揶揄われるだろう?」
ピート様の言葉は浮気を肯定するものだった。
冗談という可能性もあるしピート様も笑っているし…。
でもこういった重要な場面で言う冗談は許せるものではない。
「冗談なんて言っている場合ではないの。大変なのよ、メーベル様が別れろって言ってきたのよ」
「そうだったのか…。でも安心してくれ。メーベル様は遊びだから。俺が愛しているのはリブだけだから――ぶべっ」
冗談ではなく本当に浮気していたなんて。
気付いたときには平手打ちを炸裂させてしまった。
浮気しておいて私だけを愛しているなんて侮辱だ。
今度は自分の意思で平手打ちする。
「痛っ、やめてくれよ」
「浮気なんかしなければ良かったのよ!ピート様が悪いのよ!!」
「だから本気なんかじゃなくて遊びだったんだ。俺が愛しているのはリブだけ――」
まだふざけたことを言うようなので追加で平手打ちしてあげた。
もしかしたらピート様は痛めつけられたい願望でもあるの?
「何を言っても許すことはできないわ。ピート様、婚約破棄します」
ピート様の顔が驚きのものへと変わった。
まさか私を裏切ったのに婚約破棄されると考えなかったの?
私のほうが驚いたわ。
「ま、待ってくれ。メーベル様から迫られたんだ。遊びでいいと、迷惑はかけないと言ったから応じたんだ。俺は悪くない」
「……そうだったの。その言い分が認められると思うの?この件はモーゲット子爵にも報告させてもらうから」
「それはやめてくれ!父上に何をされるかわからないんだ!」
「自業自得でしょう?自分でしたことの責任を取りなさい」
ピート様の情けない姿を見ると、こんな人と無駄に過ごした時間がもったいないと思えてしまった。
こんな結末になるなら最初から婚約なんてしなければ良かったと思う。
でもこれは親同士が決めたものだから私の意思は関係ない。
それでも婚約関係が破綻した原因はピート様にあるのだから私は悪くないし、我がスターブ子爵家に非はない。
悪いのは浮気したピート様であってモーゲット子爵家。
メーベル様やピンクルー伯爵家が悪くても、子爵家でしかない当家では責任を問うことも難しい。
その分も含めてピート様やモーゲット子爵には責任を取ってもらう。
「本気ではなかったんだ。だから俺は悪くない……」
ピート様が寝言みたいなことを言っているけど、もう婚約破棄を告げたので私は婚約者ではない。
他人になったのだからもう平手打ちもしない。
平手打ち程度では目が覚めないようだし、これから厳しい現実を目の当たりにして後悔してもらうしかピート様を正気に戻すことはできないのかもしれない。
これで終わりとは思えないし、私の平穏な日々は終わってしまった。
まずはお父様に報告しないと。
たぶんお父様経由でモーゲット子爵に抗議することになるはず。
ちらりとピート様の様子を窺うと何かを訴えるような眼差しを向けていた。
まだ自分が悪くないと考えているのだろう。
私は考え直すことはないし、これから適切にピート様の責任を追及していかなくてはならない。
だからピート様のことは無視する。
「待っ………」
立ち去る私にピート様が何か言葉にしかかったようだったけど無視した。
友人たちと談笑しているけど、事が事なので失礼を承知で割り込む。
「ごきげんよう、皆さま。申し訳ありませんがピート様をお借りします」
「おい、どうしたんだ、リブ?」
「浮気の件で話があるの」
「おい、そんなことこんな場で言うなよ」
「だから場所を変えようと言っているのよ。いいから来て」
浮気がどうのとご友人たちが言っていたけど無視してピート様を連れ出す。
文句を言っていたピート様のことは無視して、メーベル様に見つからないよう、人目につかない場所まで移動した。
「みんなの前で浮気を暴露するなよ。後で揶揄われるだろう?」
ピート様の言葉は浮気を肯定するものだった。
冗談という可能性もあるしピート様も笑っているし…。
でもこういった重要な場面で言う冗談は許せるものではない。
「冗談なんて言っている場合ではないの。大変なのよ、メーベル様が別れろって言ってきたのよ」
「そうだったのか…。でも安心してくれ。メーベル様は遊びだから。俺が愛しているのはリブだけだから――ぶべっ」
冗談ではなく本当に浮気していたなんて。
気付いたときには平手打ちを炸裂させてしまった。
浮気しておいて私だけを愛しているなんて侮辱だ。
今度は自分の意思で平手打ちする。
「痛っ、やめてくれよ」
「浮気なんかしなければ良かったのよ!ピート様が悪いのよ!!」
「だから本気なんかじゃなくて遊びだったんだ。俺が愛しているのはリブだけ――」
まだふざけたことを言うようなので追加で平手打ちしてあげた。
もしかしたらピート様は痛めつけられたい願望でもあるの?
「何を言っても許すことはできないわ。ピート様、婚約破棄します」
ピート様の顔が驚きのものへと変わった。
まさか私を裏切ったのに婚約破棄されると考えなかったの?
私のほうが驚いたわ。
「ま、待ってくれ。メーベル様から迫られたんだ。遊びでいいと、迷惑はかけないと言ったから応じたんだ。俺は悪くない」
「……そうだったの。その言い分が認められると思うの?この件はモーゲット子爵にも報告させてもらうから」
「それはやめてくれ!父上に何をされるかわからないんだ!」
「自業自得でしょう?自分でしたことの責任を取りなさい」
ピート様の情けない姿を見ると、こんな人と無駄に過ごした時間がもったいないと思えてしまった。
こんな結末になるなら最初から婚約なんてしなければ良かったと思う。
でもこれは親同士が決めたものだから私の意思は関係ない。
それでも婚約関係が破綻した原因はピート様にあるのだから私は悪くないし、我がスターブ子爵家に非はない。
悪いのは浮気したピート様であってモーゲット子爵家。
メーベル様やピンクルー伯爵家が悪くても、子爵家でしかない当家では責任を問うことも難しい。
その分も含めてピート様やモーゲット子爵には責任を取ってもらう。
「本気ではなかったんだ。だから俺は悪くない……」
ピート様が寝言みたいなことを言っているけど、もう婚約破棄を告げたので私は婚約者ではない。
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たぶんお父様経由でモーゲット子爵に抗議することになるはず。
ちらりとピート様の様子を窺うと何かを訴えるような眼差しを向けていた。
まだ自分が悪くないと考えているのだろう。
私は考え直すことはないし、これから適切にピート様の責任を追及していかなくてはならない。
だからピート様のことは無視する。
「待っ………」
立ち去る私にピート様が何か言葉にしかかったようだったけど無視した。
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